11月から12月にかけて年末調整の時期となります。サラリーマンの方やアルバイト・パートなどをされている方も、会社で年末調整をするから資料や書類を出して!といわれている方も多いのではないでしょうか。
今回はこの年末調整に関してその内容と絶対に抑えておいた方がよいポイントをまとめていきます。また、年末調整以外で確定申告をしたほうがお得なケースもまとめます。
年末調整の書類様式は2018年に配偶者控除の拡大で大きく変わりましたが、2019年版は大きな変更点はありません。
年末調整って何?
年末調整(ねんまつちょうせい)というのは、給与所得者(サラリーマンや公務員、アルバイトなど)に対して事業者(会社)が支払った1年間の源泉徴収した所得税について12月(年末)に再計算して所得税の過不足を調整することを指します。
サラリーマンなどの場合は、毎月の給料から所得税が源泉徴収(天引き)されていますが、この金額はあくまでも「仮の金額」となっています。そのため、この仮の金額を最終的な正しい金額に直すための作業が「年末調整」となるわけです。
一般的にには、毎月天引きされている仮の所得税額は少し高めに設定されているので、年末調整をすることで払いすぎた所得税が戻ってきます。
また、年末調整時には各種書類を提出することで、所得控除や税額控除が適用できる場合があり、こうした場合にはさらに所得税が払い過ぎということになって税金が還付されます。
簡単に所得税の仕組みをおさらい
簡単に所得税の仕組みをおさらいしてみましょう。
所得税や住民税は収入からその収入を得るために払った必要経費を差し引いた所得に対してかかる税金です。
主に下記の4つの段階で計算されます。なお、もっと詳しく知りたい方は「収入(年収・給与)と手取り、所得の違いを理解しよう」もご覧ください。
- 収入(額面給料)-経費(給与所得控除)=所得
- 所得-各種所得控除=課税所得
- 課税所得×所得税率=所得税額
- 所得税額-税額控除額=最終納税額
となります。
年末調整は「所得控除」や「税額控除」を会社に申告するもの
給与所得控除は収入額から計算できるのですが、各種所得控除はその人が扶養する家族や加入している生命保険などによって変わってくるので、その申告をするための手続きが年末調整となります。
主に、下記のような項目に該当する方は申告書の提出並びに添付書類の提出が必要です。
- 民間の生命保険、医療保険、年金保険に加入している方
- iDeCo(確定拠出年金)に加入している方
- パートやアルバイトで国民年金保険料や国民健康保険料を個人で払った方
- 家族(こども)の国民年金保険料を肩代わりした方
- 専業主婦(夫)またはパート主婦(夫)がいて扶養している方
- 扶養している親族がいる方
- 住宅ローンを組んでいる方
上記に該当する場合は、必要書類を提出することで所得税が還付される可能性や金額が大きくなるはずです。
なお、年末調整をせずに確定申告をするという方法もありますが、年末調整をしておくほうが確定申告をする場合も楽になるので、年末調整で対応できる項目は対応しておくことをお勧めします。
年末調整の書類は2018年から3枚に追加
年末調整では会社から配られる3枚の書類に必要事項を記入の上、必要書類を添付して提出します。2017年までは「給与所得者の配偶者控除等申告書」と「給与所得者の保険料控除申告書 兼 配偶者特別控除申告書」の2枚だったのですが、2018年かrは「給与所得者の扶養控除等申告書」と「給与所得者の保険料控除申告書」、「給与所得者の配偶者控除等申告書」の3枚になりました。
①給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
これはあなたの基本的な情報に加えて、扶養する家族の有無を記入するものです。「配偶者控除」「扶養控除」「特別扶養控除」「寡夫(婦)控除」などを受けるために必要なものです。
②給与所得者の保険料控除申告書
こちらは、各種保険の申告に使う用紙です。生命保険料、医療保険料、年金保険料などを納めている方、その他社会保険料、小規模企業共済(iDeCoなど)への加入状況や支払った保険料を申告するものです。
③給与所得者の配偶者控除等申告書
2017年までは②の給与所得者の保険料控除申告書と一緒だったのですが、2018年から配偶者特別控除が拡充されたうえに複雑化したため、記入欄が多くなり分離独立しました。
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生命保険料控除
年末調整の中でも最も多いと考えられるのがこの生命保険料控除です。
民間保険会社の生命保険や介護保険、個人年金保険などに加入している方が利用することができる控除となっています。
現在、平成24年以後に契約した保険と、それ以前に契約した保険との間で取り扱いが異なっているので少々ややこしいのですが、支払った生命保険料から一定の金額を所得から控除することができます。
下記は平成24年1月1日以降に契約した生命保険について割り当てられる控除額です。
年間の支払保険料等 | 控除額 |
---|---|
20,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
20,000円超 40,000円以下 | 支払保険料等×1/2+10,000円 |
40,000円超 80,000円以下 | 支払保険料等×1/4+20,000円 |
80,000円超 | 一律40,000円 |
なお、保険の種類(生命保険、医療保険+介護保険、年金保険)でそれぞれ最高4万円の合計12万円が所得控除されます。
生命保険料控除を利用するためには、保険会社から秋口にかけて送られてくるハガキを使用します。届いたら大切に取っておいて下さい。
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生命保険料控除の必要書類(保険料控除証明書)
保険会社からだいたい10月くらいにハガキで保険料控除の書類が送られてきますので、その原本を会社に提出しましょう。もしも紛失した場合は再発行が可能なので、早めに保険会社に連絡してください。
iDeCo(イデコ)の掛け金(小規模企業共済等掛金控除)
最近利用者が増えているiDeCo(個人型確定拠出年金)。2017年1月からは加入できる対象がさらに拡大して利用者も増えています。
個人型の確定拠出年金の場合、掛け金の全額を所得控除することができます。全額所得控除ができることで、上記で紹介した生命保険料控除よりもはるかに優遇されていることがわかると思います。
仮に月2万円の掛け金(年24万円)を払い、所得税率が20%の方なら、これで48,000円分の所得税が還付されることになります。
個人型確定拠出年金については別エントリの「個人型確定拠出年金のメリット・デメリット」で詳しく説明しているのでぜひご一読ください。
また加入方法や年末調整書類への記載方法などは下の記事でも紹介しています。
[bloglink url=”https://money-lifehack.com/tax/2816″]
iDeCoの年末調整必要書類(掛金払込証明書)
生命保険料控除と同様に、10月に国民年金基金連合会というところから「掛金払込証明書」という書類がt土器ます。ただし、イデコへの掛金拠出を会社からの給料天引きで行っている場合は書類は送られてきませんが、会hさの方で手続きしてくれるので安心してください。
社会保険料控除
パート・アルバイトなどで国民年金や国民健康保険を自分自身で支払っている人はその保険料は所得控除の対象なので、年末調整時に会社に提出しましょう。
1年間に支払った社会保険料の全額を所得控除することができます。社会保険料控除を利用するためには、社会保険料を支払ったことを証明できる書類の添付が必要です。
サラリーマンの方は会社で「社会保険料(厚生年金+健康保険)」が差し引かれているのであまり関係ないかもしれません(すでに控除済みなので手続きは不要です)。
ただし、サラリーマンの方でも、入社前に国民年金や健康保険料を払ってきた方は忘れずに申告しましょう。
家族の社会保険料を払った時も控除できる
また、申告忘れが多いものの一つが「配偶者や子供の年金を代わりに払ったケース」。子供や配偶者の年金であれば代わりに払ったとしても社会保険料控除が利用できます。
詳しくは「収入がない子供の国民年金保険料は親が払うことで所得税・住民税が安くなる」でもまとめていますので、こちらも参考にしてください。
社会保険料控除の必要書類
国民健康保険料については添付書類は不要です。申告書に金額だけ(合計額)を記入してください。一方で国民年金保険料については証明書類(領収書)を添付する必要があります。
ちなみに国民年金保険料や年金保険料の控除は「その年の1月1日~12月31日までに払った額」が対象になります。です。たとえば、来年の分も前納しているような場合はその金額分も今年の年末調整で控除します。
配偶者控除・扶養控除
所得が一定以下の配偶者や自分が扶養する親族がいる場合は配偶者控除(配偶者特別控除)や扶養控除が適用されます。なお、適用を受けるには会社から年末調整時に貰う「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出する必要があります。
なお、大学生の子がいる家庭などで時々問題になるのが、子供がアルバイトをしすぎて扶養控除から外れてしまうという問題があります。詳しくは「子供や配偶者のアルバイト。103万円以上なら扶養控除(配偶者控除)、扶養手当が利用できない」でまとめていますが、記載の通り、年103万円以上のアルバイトをすると親の税負担が大きくなるということはしっかりと教えておくべきでしょう。
配偶者特別控除が2018年に拡充も、年末調整は面倒に
配偶者が一定以上の収入を得ている場合は、配偶者特別控除という控除を利用することができます。具体的には、配偶者の所得が38万円(給与収入が103万円)を超えた場合に使用できる控除です。
基本となる控除額は38万円で配偶者控除と同額ですが、配偶者の所得が増加するにしたがって控除額が小さくなっていきます。このおかげで所得の逆転現象は起こらないようになっています。
2018年にはこの配偶者特別控除が大幅に拡充されました。結果として、配偶者控除の金額は以下のようになります。
2018年以降の配偶者特別控除 | 主な稼ぎ手の年収 | ||||
---|---|---|---|---|---|
1120万円以下 | 1170万円以下 | 1220万円以下 | 1220万円超 | ||
配 偶 者 の 年 収 |
150万円以下 | 38万円 | 26万円 | 13万円 | 0万円 |
155万円以下 | 36万円 | 24万円 | 12万円 | 0万円 | |
160万円以下 | 31万円 | 21万円 | 11万円 | 0万円 | |
167万円以下 | 26万円 | 18万円 | 9万円 | 0万円 | |
175万円以下 | 21万円 | 14万円 | 7万円 | 0万円 | |
183万円以下 | 16万円 | 11万円 | 6万円 | 0万円 | |
190万円以下 | 11万円 | 8万円 | 4万円 | 0万円 | |
197万円以下 | 6万円 | 4万円 | 2万円 | 0万円 | |
201万円以下 | 3万円 | 2万円 | 1万円 | 0万円 | |
201万円超 | 0万円 | 0万円 | 0万円 | 0万円 |
これによってパート妻などはより働きやすくなったわけですが、制度的に主な稼ぎ手の年収によって配偶者特別控除額が変わるように複雑になってしまいました。
これによって、2018年以降は「給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書」だけでは収まり切れなくなり分離、「給与所得者の保険料控除申告書」と「給与所得者の配偶者控除等申告書」に分離して、合計3枚提出しなければならないようになりました。
書き方も難しくなったので、詳しい解説記事を書きました。わからない方は参考にしてみてください。
[bloglink url=”https://money-lifehack.com/tax/income/18621″]
配偶者控除・扶養控除の必要書類
必要書類はありません。申告書に自己申告するだけで構いません。
ただし、当たり前の話ですが、後から妻が収入を得ていた、大学生の子どもが扶養の範囲を超えて働いていたという事がわかった場合には、本来必要な税金に加えペナルティ(延滞税など)を支払うことになるのでご注意ください。
住宅ローン控除(住宅ローン減税)
一定の条件を満たした住宅を購入し居住した場合、借りている住宅ローンの総額から最大1%を10年間にわたって税額控除することができる制度です。
なお、最初の1年目に関しては税務署で確定申告をする必要がありますが、翌年以降は勤務先の年末調整にて税額控除を受けることができます。
なお、控除可能な上限金額は居住年度で異なります。なお、控除(減税)を年末調整で受けるには勤務先に住宅借入金等特別控除証明書、申告書、借入金の年末残高等証明書の3つを提出する必要があります。
[bloglink url=”https://money-lifehack.com/housingloan/4289″]
住宅ローン控除のために必要な書類
住宅ローン控除、初年度は確定申告が必要で面倒ですが2年目以降は年末調整だけなので楽ちんですね。住宅ローン控除の年末調整に必要なものは「申告書兼控除証明書(税務署から)」と「住宅ローン年末残高証明書(ローンを借りている金融機関から)」の2つです。
申告書兼控除証明書には記入する項目があるので、銀行から届く、住宅ローン年末残高証明書なども参考に埋めていきましょう。
以上が、年末調整で対応できる控除の項目と必要書類や手続き内容となります。上記に該当する方は期限までに必要な書類や領収証などをまとめておきましょう。
この年末調整の結果を受けて、翌年1月にはサラリーマン(パート・アルバイト含む)として1年間働いた所得と所得税の確定書類である「源泉徴収票」とそれに基づいて計算された還付額が渡されます(なお、還付ではなく追加の納付が求められることもあります。)
源泉徴収票については「知っておきたい源泉徴収票の見方、読み方、使い道」で詳しく説明しています。
年末調整だけでは対応できない人(要申告)
税金(所得税)の計算は年末調整だけでは対応できないケースもあります。
具体的には下記のようなケースです。こうした場合は翌年に確定申告をする必要があります。この場合、税金の還付が受けられる還付申告(翌年1月1日以降可能)と、追加の税金の支払いも必要になる確定申告(翌年2月15日以降可能)とがあります。
税金が還付されるので確定申告(還付申告)が必要
こちらの場合は申告をすることで税金が戻ってきます。
- 年間に家庭全体で10万円以上の医療費がかかった場合(医療費控除)
- 災害等で自宅が損害を受けた(雑損控除)
- 仕事に必要な資格取得や単身赴任の帰省等でたくさんお金がかかった(特定支出控除)
- 住宅ローンを組んで1年目(住宅ローン控除・減税)
- ふるさと納税でワンストップ特例制度を利用してない場合(寄付金控除)
還付申告については「サラリーマンでも知っておきたい還付申告」でも詳しくまとめているのでこちらも参考してください。
追加で納税する必要があるので確定申告が必要
- サラリーマンの年収が2000万円以上の人
- サラリーマンとしての収入以外の副業収入が20万円以上ある
- 株の売買益などがある(証券会社で特定口座・源泉徴収なしを選択している場合)
副業や不動産収入などのように申告が必要な所得がある場合は、確定申告が必要になります。
この場合は収入に応じて追加の所得税がかかることになります。なお、会社に内緒で副業をしている場合は、この確定申告+住民税で会社にバレるケースが多いです。対応としては「副業禁止の会社で副業をこっそりするときに心がけたいバレない為の注意点」もご覧ください。
いずれのケースでも会社から発行される「源泉徴収票」も必要になりますので大事に保管しておいてください。
以上、年末調整の控除の種類と必要書類のまとめでした。
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