住宅ローン関連のサイトや書籍などを読むと、「積極的な繰上返済をして早期返済を」というフレーズが並びます。しかしながら、繰上返済は無計画に行うと大変なリスクを顕在化させることもあるのです。今回は繰上返済にかかわるちょっと怖い話をしていきます。

無計画な繰上返済で預金を減らすのにはちょっとしたリスクがあります。

繰上返済は基本的にはやった方がいい

ただ、繰上返済という返済方法は利息負担軽減という意味でできるだけやった方がお得です。最近のエントリーで「借金返済はノーリスクの投資と同じ」というものを書きましたが、繰上返済によって得られる利息軽減効果は投資における収入と同意義です。

特に、昨今のように日銀が利上げを継続し、金利上昇局面に入っている状況では、利息負担を減らすための繰り上げ返済はより一層メリットが大きくなります。

さて、ここからは繰上返済をするのであれば理解しておきたい「リスク」について説明していきます。

住宅ローンの繰り上げ返済のリスク要因やデメリットは何か?

基本的にはやったほうがいい繰り上げ返済ですが、実行するにあたっては以下のようなリスクも考えておく必要があります。

期間短縮型と返済額軽減型

住宅ローンの繰り上げ返済には「期間短縮型と返済額軽減型」という2種類の返済方法があります。

・期間短縮型
繰り上げ返済した金額に応じて返済期限を短くします。たとえば60歳で完済する予定だったローンを59歳にする(1年前倒しする)といった具合です。利息削減効果は高いですが、繰り上げ返済後の月々の返済額は変わりません。基本はこちらが主流となります。

・返済額軽減型
返済した金額分で翌月以降の返済額を減らす形にします。完済予定日は変わりませんが、翌月からの返済額が小さくなります。利息削減効果は期間短縮型よりは低くなります。

多くの場合は前者の「期間短縮型」が取られます。この期間短縮型は返済期限が短くなることがメリットなので、実際に繰り上げ返済をした“効果”は最後の最後に現れることになります。

なぜなら繰上返済を行ったとしても、月々の返済額に変わりはないので、毎月のキャッシュフローに変化はありません。仮に30年住宅ローンを繰上返済(期間短縮型)によって25年に短縮できたとする場合、この繰上返済による経済的なメリットを享受できるのは25年後からということになるわけです。

キャッシュ(現金)を減らす繰り上げ返済は家計のリスク対応度を弱める

繰り上げ返済を行うということは、その分、銀行の口座から預金(現金)が減ることに他なりません。

それならば、住宅ローンの繰り上げ返済にお金を回す方がお得という考えもあるかもしれません。一方で、過度の繰り上げ返済は家計のリスクに対する余力を小さくします。

何事においても「現金(キャッシュ)」というものは強いです。

  • 何らかの事情で仕事を失って収入が減った
  • 病気やケガなどで長期入院となり、医療費がかかる
  • 事故や災害などで思わぬ出費が必要になった
  • おもった以上に子どもの教育費にお金がかかってしまう

こうしたことによって、いざお金が必要になった時、現金が少ないと対応できません。キャッシングやカードローンのような高金利の融資を使う羽目になる可能性もあります。

万が一のための生活防衛資金を貯めておく必要性とそのメリット急な質問ですが、明日から1円もお金が入ってこなくなるとしたら、あなたたちはどのくらい生きていくことができますか? この質問に対して...

上記記事でも紹介していますが、ある程度は現金を残しておくというのはリスク対応を考えると重要です。

住宅ローンで繰上返済をしたからといって、後から資金繰りに困ったとしても銀行に「繰上返済した分をやっぱり返して!」というわけにはいかないのです。繰上返済は非常に高い運用効果があると表現されることもありますが、この運用効果は極めて超長期の資金拘束にもつながることを理解しておく必要があります。

ただし、SBI新生銀行の住宅ローンでは「生活貸越サービス(パワーポケットサービス)」といったサービスがあり、有利子にはなりますが、過去に繰上返済をした金額を上限に融資を受けることができるサービスが用意されています。(参考:SBI新生銀行の住宅ローン

控除期間中は繰り上げ返済をすると“損”する可能性もある(住宅ローン減税)

住宅ローンを利用する場合、「住宅ローン減税(住宅ローン控除)」という税制上の優遇を受ける方も多いと思います。これは年末時点のローン残高の一定割合を税額控除することができる制度です。

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2022年の税制改正により、現在の住宅ローン控除は“年末時点のローン残高の0.7%分”が減税される仕組みとなっています。また、控除を受けられる期間も、新築住宅や買取再販住宅の場合は13年間、中古住宅の場合は10年間と定められています。

特に0.7%未満の金利で住宅ローンを借りている人は「減税額>繰り上げ返済による経済効果」となるため、控除期間中に繰り上げ返済をするほうが損をしてしまいます。0.7%以上の金利で借りている方は経済効果はありますが、0.7%分は効果が相殺されて小さくなります。下手に繰り上げ返済をするよりも、運用等に資金を回すという考えもあるでしょう。

期間短縮型で残り期間が10年未満になると控除対象外に
繰り上げ返済(期間短縮型)によってローン期間自体が残り10年未満になってしまうと、住宅ローン控除の適用要件(返済期間10年以上)を満たさなくなり、その年以降の控除が全額使えなくなってしまいます。これは実際に損失が発生するケースであり、非常に重要な注意点です。

団体信用生命保険(団信)の保障額が減少する

住宅ローンを組む際、多くの人が加入する「団体信用生命保険(団信)」。これは、万が一の死亡や高度障害などの際にローン残高がゼロになる保険です。

繰り上げ返済をしてローン残高が減少すると、それに連動して団信の保障額も自動的に減少します。たとえば、3,000万円の残高のうち1,000万円を繰り上げ返済すると、万が一の際の保障も3,000万円から2,000万円に減ることになります。手元の現金を大きく減らして保障額も下がってしまうため、繰り上げ返済を加速する場合は、ご自身の生命保険等の見直しも併せて検討すべきです。

繰り上げ返済手数料がかかる場合がある

インターネットバンキングを利用した一部繰り上げ返済は、手数料無料としている金融機関が増えていますが、全額を繰り上げ返済(一括返済)する場合には、数万円の手数料が発生するケースがあります。

例えば、PayPay銀行では33,000円、auじぶん銀行(固定金利期間中)でも33,000円などの手数料が設定されています。繰り上げ返済を実行する前には、必ず利用している銀行の手数料規定を確認しましょう。

金利上昇局面での繰り上げ返済の考え方

日銀が2024年から2025年にかけて利上げを継続しており、長らく続いた超低金利時代から、徐々に金利が上昇する局面へと変化しています。現在の住宅ローン金利は、ネット銀行の変動金利でも年0.640%程度まで上昇しており、35年固定金利では2%台〜3%台が一般的となっています。

金利が上昇すると利息負担が増えるため、変動金利で借りている人ほど繰り上げ返済の相対的なメリットは高まっています。

※高い金利で住宅ローンを組んでいて早く返してしまいたいというのであれば、繰り上げ返済よりも住宅ローンの借り換えを検討することも一つの有効な手段です。

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仮に、株式投資などの資産運用で安定的により高いリターンを上げられるのであれば、繰り上げ返済をせずに運用に回すという選択肢もあります(リスクも相応にあるので積極的には勧めませんが)。

また、今後数年〜10年くらいの資金需要も繰り上げ返済をする前に考えておくべきです。

今後もローンを組む可能性があるなら住宅ローンのほうがお得

たとえば、車を買い替える予定があり、ローンで購入するというのであれば、多くのケースで「マイカーローンの金利>住宅ローンの金利」となるでしょう。

そうした予定があるのであれば、住宅ローンの繰り上げ返済をした後で別のローンを借りるというよりも、繰り上げ返済をせずにキャッシュを残しておき、マイカーローンを借りないという選択肢のほうが有利になる可能性が高いです。

子どもの大学進学などの費用も考える

また、住宅をローンでマイホームを購入する世帯としては30代〜40代が多いです。これらの年齢層の方の多くは『お子様』がいらっしゃるケースが多いかと思います。住宅ローンは25年くらいから35年くらいの期間とされる方が多いでしょう。

となると、30代でローン開始でも完済時期は60歳前後ということになります。つまり、住宅ローンの完済前にお子様の教育費という多額の資金が必要となる時期があるわけです。

子供の教育に必要な「学費」の目安」によると、子供が大学生のときにかかる費用として国公立自宅通学でも500万円、私立下宿なら1500万円ほどの費用がかかります。もちろん、これ以前にも学校に関する費用は必要です。

子育て関係で必要になるお金というのは、ある程度前もってわかっているはずですので、住宅ローンの繰り上げ返済を急ぐよりも、今後必要になるであろうお金のために残しておくというのも大切なことです。

まとめ、余裕のある繰り上げ返済を活用しよう

まとめると、繰り上げ返済をするのであれば以下のポイントを押さえることが重要です。

  • 当面の間利用することのない余裕資金でおこなう
  • 病気や収入減など、何かあった時のリスク対応的な現金をしっかり残しておく
  • 住宅ローン減税(控除)の優遇期間が終了した後、または控除要件から外れない範囲でおこなう

これらを踏まえたうえで実行する、というのが基本ということになります。

住宅ローンはローン総額が大きく返済期間も長いものであり、税制上の優遇もあります。団信の保障額減少や手元資金の不足といったリスクを考慮し、うまくタイミング等をはかりつつ余裕のある繰り上げ返済をして住宅ローンを有利に返済しましょう。

ABOUT ME
ふかちゃん
マネーライフハックの編集長 兼 管理人です。節約やマネー術などについての情報発信を2004年から続けています。
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