社会保険の106万円の壁はどう変わる?週20時間、扶養、パートの働き方

106万円の壁は、パートやアルバイトが社会保険に加入するかどうかを考えるときに使われてきた目安です。
これまでは、従業員数、週20時間以上、月額賃金8.8万円以上、2か月超の雇用見込み、学生ではないことなどが短時間労働者の加入条件でした。
2025年6月13日に成立した年金制度改正により、今後は企業規模要件が段階的に縮小、撤廃され、月額8.8万円以上という賃金要件も撤廃されます。
ただし、月額8.8万円以上の要件が直ちに全員へ消えるわけではありません。
厚生労働省は、賃金要件の撤廃時期を法律の公布から3年以内、全国の最低賃金が1,016円以上となることを見極めて判断すると説明しています。
この記事の要点
- 106万円の壁は、社会保険の月額賃金8.8万円以上という要件から意識されてきた壁です。
- 改正後は、週20時間以上働けば企業規模にかかわらず社会保険の対象になる方向です。
- 企業規模要件は、2027年10月から2035年10月まで段階的に縮小、撤廃されます。
- 賃金要件の撤廃は、公布から3年以内に最低賃金の状況を踏まえて判断されます。
- 扶養内にこだわるなら週20時間未満が大きな判断軸になります。
社会保険の加入条件はどう変わるか
短時間労働者の社会保険加入条件で大きく変わるのは、企業規模要件と賃金要件です。
企業規模要件は、現在の51人以上から段階的に下がり、最終的には撤廃されます。
| 時期 | 企業規模要件 |
|---|---|
| 現在 | 従業員51人以上の企業 |
| 2027年10月 | 従業員36人以上の企業 |
| 2029年10月 | 従業員21人以上の企業 |
| 2032年10月 | 従業員11人以上の企業 |
| 2035年10月 | 従業員10人以下の企業にも適用 |
この改正により、将来的には週20時間以上働く短時間労働者が、勤務先の規模にかかわらず社会保険に加入する方向になります。
一方で、すべての人が一斉に対象になるわけではなく、勤務先の規模によって時期が変わります。
106万円の壁はなくなるのか
106万円の壁は、社会保険の加入条件のうち「月額賃金8.8万円以上」が年収換算で約106万円になることから広がった言葉です。
改正では、この月額8.8万円以上という賃金要件が撤廃されます。
そのため、制度の方向としては「年収106万円を少し下回れば社会保険に入らない」という考え方は弱くなります。
ただし、撤廃時期は法律の公布から3年以内で、全国の最低賃金が1,016円以上となることを見極めて判断されます。
記事やSNSで「2026年10月に106万円の壁が完全撤廃」とだけ書かれている場合は、時期の扱いが粗い可能性があります。
週20時間がより大きな壁になる
賃金要件と企業規模要件が縮小されるほど、実務上の判断軸は週20時間になります。
厚生労働省のFAQでも、配偶者に扶養されている人がパートやアルバイトで働く場合、雇用契約などの週の所定労働時間が20時間以上なら社会保険に加入すると説明されています。
逆に、週の所定労働時間が20時間未満なら、原則として社会保険の加入対象にはなりません。
ただし、一時的な残業ではなく、週20時間以上で働く状態が2か月を超えて続くようなら加入対象になることがあります。
扶養内で働きたい人の考え方
配偶者の扶養に入っている人が社会保険に加入すると、第3号被保険者ではなくなり、自分で厚生年金と健康保険に加入します。
その結果、給与から社会保険料が引かれるため、短期的には手取りが減ることがあります。
しかし、厚生年金に加入すれば将来の年金が増え、健康保険から傷病手当金や出産手当金を受けられる可能性もあります。
「手取りが減るから損」とだけ見るのではなく、働く時間を増やした場合の収入、将来年金、健康保険給付を合わせて考えます。
| 働き方 | 社会保険の考え方 |
|---|---|
| 週20時間未満に抑える | 扶養内を維持しやすいが、収入は伸びにくい |
| 週20時間以上で働く | 加入対象になりやすいが、厚生年金と健康保険の給付が増える |
| 大きく働く時間を増やす | 保険料負担を超える収入増を狙いやすい |
| Wワークにする | 勤務先ごとの労働時間や雇用契約で判断が分かれるため注意が必要 |
130万円の壁との違い
106万円の壁と130万円の壁は、どちらも社会保険に関係しますが、仕組みが違います。
106万円の壁は、勤務先の社会保険に自分が加入するかどうかの話です。
130万円の壁は、配偶者や親の健康保険の被扶養者でいられるかどうかの話です。
今後は106万円という金額そのものより、週20時間と勤務先の適用状況が重要になります。
新たに加入する人への保険料軽減措置
企業規模要件の見直しなどで新たに社会保険へ加入する短時間労働者には、保険料負担を軽減する時限的な措置が用意されます。
対象は、従業員数50人以下の企業などで働き、新たに社会保険の加入対象となる短時間労働者のうち、標準報酬月額が12.6万円以下の人です。
期間は3年間で、事業主が負担割合を増やして被保険者の負担を軽くする仕組みです。
ただし、この措置は事業主が利用する制度なので、働く人が単独で選べるものではありません。
働き方を決める順番
扶養内に収めるか、社会保険に加入して働くかは、金額だけで決めると失敗しやすいです。
- 週20時間未満にしたいのか、週20時間以上働けるのかを決める。
- 勤務先の従業員規模と適用時期を確認する。
- 月収から社会保険料を引いた手取りを見積もる。
- 配偶者手当や家族手当の支給条件を確認する。
- 将来の厚生年金や傷病手当金などの給付も含めて判断する。
収入を増やしたいなら、壁の手前で止まるより、保険料負担を超えるところまで働くほうが合理的なケースがあります。
一方で、育児、介護、通院、学業などで時間を増やせない人は、週20時間未満を軸に勤務契約を調整するほうが現実的です。
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