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年金(国民年金)を滞納するとどうなる?延滞金、差し押さえ、払えない時の対策

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国民年金(年金)の納付率は厚生労働省発表(2015年6月)で63%です。言いかえれば3割強の人が年金を未納・滞納しているということになります。年金を滞納するとどうなるのか?延滞金や差し押さえなどの仕組みや、どうしても払えない時の対応・対策についてもまとめていきます。

もしも、経済的な理由で年金を滞納せざるを得ないというのであれば手続きをすれば免除・猶予が可能です。何もしないのは大きな損をすることになるかもしれません。

ちなみに、この記事は国民年金の加入者(第1号被保険者)は自営業の方や学生、アルバイトなどで厚生年金に加入していない人で、約1700万人が該当します。厚生年金が給料から天引きされているサラリーマンの方やその扶養に入っている配偶者の方は関係ありません。

 

どうせ年金なんてもらえないから払うのは無駄?

国民年金の保険料を滞納している人から聞く言葉に「どうせもらえない」「将来破綻する」「自分には関係ない」こうした言葉があります。でもそれって本当でしょうか?

たしかに、払った保険料以上の年金が受け取れるかどうかは分かりません。破綻するという可能性は限りなく低いですが、老後に受け取れる年金の金額などが厳しくなる可能性はあります。

ただし、国民年金と言う制度は、簡単に破たんする制度ではありません。未納率3割、4割という言葉が独り歩きをしていますが、厚生年金を含めた公的年金制度全体で見たら、加入者6729万人に対して未納者は206万人にすぎません。

全体の割合では3%程度にすぎないわけです。この程度の未納では年金がもらえなくなるということはありません。

さらに、公的年金制度は老後だけでなく現役時代においても極めて重要な社会保障としての役割を担っています。

 

国民年金は「老後」だけじゃない

国民年金は老後にもらえる「老齢年金」が注目されますが、それ以外にも「障害年金」「遺族年金」という二つの年金があります。
後遺障害を負った場合には後遺症の程度に応じて「障害基礎年金」が給付されます。また、万が一死亡した場合には遺族に対して「遺族基礎年金」が給付されます。

これらの年金は「年金への加入期間が一定割合以上」あることが必要です。つまり、年金を長期滞納(未納)している状態だとこうした後遺症を負った場合や死亡した場合の遺族補償は出ません。

特に、障害を負った時などはかなりの金額の支出が生涯にわたって必要となります。この時に障害年金があるかどうかは大きな違いになります。「保険料払ってなかったえけど、障害年金ください」は通用しません。

 

3割強も滞納しているなら自分だって滞納しても大丈夫?

それでも、私は払うつもりはない。他にも3割強も滞納しているなら自分だって滞納したって大丈夫でしょ。
という方もいるかもしれません。

たしかに、現実として過去に国民年金の滞納については厳しい対応は取られてきませんでした。未納状態でも通知がくるくらいで、そのまま放置して2年の時効を迎えて終わりというケースが多かったのも事実です。

しかしながら、納付率の低さが問題化し、これが続けば年金制度自体への影響も大きいことから現在は徴収強化の方向に大きく舵がとられています。2010年代からは次々の年金滞納者に対する徴収強化策が実施されており、強制徴収に対する人員が増加され、延滞金や滞納保険料の強制徴収(差し押さえ)も実施されています。

 

年金の滞納者に対する徴収強化が進む

こうした状況を踏まえ、悪質な滞納者(払える能力があるのに年金保険料を滞納している人)に対する徴収が段階的に強化されています。国税との連携はその一環となりますが、今後はさらに大きな制度改正があります。それは「マイナンバー」です。

国民一人一人に共通番号を振るマイナンバー制度(いわゆる納税者番号制度)は2015年より番号が通知され、徐々に運用がスタートしています。

最終的には収入だけでなく銀行口座(預金)などの資産までひもづけられることになる予定です。そうなると未納者・滞納者に対する強制的な執行(差し押さえ)などに動く可能性はより高くなるでしょう。

 

強制徴収される人の基準も拡大している

国民年金の未納者に対する強制徴収の基準も拡大しています。2016年9月20日の日経新聞報道によると、厚生労働省と日本円金機構は従来の年間所得350万円以上の対象者に対して実施していた強制徴収を、2017年度以降は300万円以上に引き下げる方針ということです。

 

年金を滞納するとどうなるか?

まず、年金(国民年金)を実際に滞納するとどうなるのでしょうか?大まかには下記の流れとなります。平成26年度の厚生労働省発表の実績数も併記します。

 

(1)決められた納付月の翌月末を過ぎると滞納(催告状送付)
これによって未納状態となります。2015年10月の保険料を2015年11月末を過ぎても払わなかったら「未納」となります。未納状態が続くと「催告状(さいこくじょう)」という書類が届きます。場合によっては委託された業者から電話などで催告の電話がかかることもあります。
なお、「特別催告状」というものが送付されることがあります。これは次の最終催告状の一歩手前の状況となります。もしも、この時点で年金を滞納しており、免除や猶予に該当するような経済状況なのでしたら市役所の年金窓口に相談に行きましょう。

 

(2)最終催告状の送付
催告状、特別催告状を無視すると「最終催告状」というものが送られてくるかもしれません。これは支払い能力があるのにも関わらず年金保険料を滞納している人に送付される通知となります。次のステップである督促状(法的手続き)に進む最後のチャンスです。
これ以上無視するなら法的手段に出るかもしれないよ。という通知です。この段階までであれば延滞金はかかりません。保険料の納付のみで済みます。平成26年度は65,654の最終催告状の送付がされています。

 

(3)督促状の送付
最終催告状も無視すると「督促状」が届きます。催告状と督促状、似ているようですが内容は全く違います。
この督促状の支払期限を無視すると「延滞金の加算」されるようになります。利率は14.6%と非常に恐ろしい水準となっています。また、財産の差し押さえを行うことについても示唆されています。支払能力があると判断された場合は次の強制徴収・差し押さえと進みます。平成26年度の督促件数の送付件数は46,274件となっています。

 

(4)強制徴収、財産の差し押さえ
督促状が送られると、所得や財産などが精査されます。支払能力ありとみなされると、強制執行によって財産の差し押さえがされる可能性があります。実際の差し押さえについては平成24年度で14,999件となっています。
この件数は年々増加しています。最後の差し押さえ件数は平成22年当時だと3379件なので、4年前の4.4倍もの強制徴収(差し押さえ)に踏み切っているわけです。年金滞納者に対する強制徴収の流れはますます強化されていると言えるでしょう。

 

年金って2年で時効でしょ?

確かに、年金保険料を徴収する権利は2年で時効です。そのため、2年を経過すればそれを徴収されることはありません。
ただし、「督促状」が出された場合は別です。督促状が出されるとその時点で時効が中断されます。

昔は放置されて時効を迎えたケースも多いのですが、近年の徴収強化の流れから能力がある人には督促を行い、時効にさせない方向に動いているようです。また、この支払い能力についての基準も年々引き下げているようです。

 

払えないなら「免除」や「猶予」という制度がある

経済的な理由で支払えないというのであれば国民年金の「免除」や「猶予」といった制度があります。

免除や猶予をしていればその期間、実際に保険料を納付していなくても、先に紹介した「障害年金」や「遺族年金」を受け取ることができますし、年金の受給資格期間にも算入されます。

国民年金の免除、猶予について窓口での相談も可能です。窓口は各市役所の年金窓口で受け付けています。

払えないというのであれば、免除や猶予を申請して損はありません。詳しいやり方などについては「国民年金が払えないときは免除や猶予の申請をしよう」でもまとめています。

なお、免除の基準としては世帯単位の所得が単身者なら57万円、扶養親族が1名いる場合で92万円です。

こちらは収入ではなく所得になります。詳しくは「収入(年収・給与)と手取り、所得の違いを理解しよう」もご参考ください。

ちなみに、20歳以上の学生であれば「学生納付特例制度」を利用することができます。

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家族に代わりに払ってもらうことで世帯単位での節税効果も

また、これはお金のことを世帯単位で考えることができるケースに限られますが、家族に払ってもらうというのも手です。

収入がない子供の国民年金保険料は親が払うことで所得税・住民税が安くなる」でも紹介しましたが、国民年金の保険料は家族が負担した場合、その家族の所得控除(社会保険料等控除)として利用できます。

 

以上、年金(国民年金)を滞納するとどうなる?延滞金、差し押さえ、払えない時の対策をまとめてみました。