SBI証券の米国貸株サービス、カストック(Kastock)のメリット、デメリット

SBI証券はもともと、投資家が保有する国内の現物株式を借りる代わりに貸株料を支払うという貸株サービスを提供していましたが、2016年より、米国株と米国ETFなどを対象とする米国貸株サービス(愛称:Kastock)を開始しました。

今回はそんなSBI証券の米国貸株についてのサービス内容とそれを利用するメリット・デメリットや注意点、リスクなどをわかりやすくまとめていきたいと思います。

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米国貸株サービス(Kastock・カストック)とは何か?

米国貸株サービス(Kastock:カストック)は投資家が保有する米国株式をSBI証券に貸し出すことで、貸し出した株式に応じた貸株金利(貸株料)を受け取ることができるというサービスになります。

対象となる株式は米国株式でおよそ1000銘柄超となります。
もちろん、米国ETFも対象になります。

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こうした貸株サービスについては、国内株式や国内ETFについてはすでにSBI証券をはじめ、楽天証券、マネックス証券、auカブコム証券などが実施していますが、米国株式の貸株サービスについては2017年5月現在においてSBI証券のみの提供となっています。

国内株式についての貸株サービスを知りたい方は下記記事をご覧ください。

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米国貸株のメリット

メリットは本来なら得られないはずの貸株料という収入を得ることができるという事です。金利は銘柄・タイミングで異なり、0.1%~1.0%程度となっているようです。

仮に500万円の米国株に投資をしている場合、配当金とは別に5000円~5万円ほどの貸株金利(貸株料)を受け取ることができるというわけです。なお、こちらわかりやすいように円建てで書いておりますが、実際にはドル建てで計算され、入金もSBI証券の外国株式口座に米ドル建てで入金されます。

貸株中も配当金はもちろん支払われます。

米国貸株サービスでは、貸株金利を受け取りながら、同時に配当金(または配当金相当額)も受け取ることができます。配当金は、現地での支払いの都度受け取ることができます。

このように書かれています。配当金については()に書かれている配当金相当額のところが気になる部分ではあるのですが、配当金がもらえないという事はありません。

 

米国貸株のデメリットとリスク

続いては米国貸株のデメリットやリスクといった、気を付けておきたいところを中心に紹介していきます。

 

カストック利用中は分別管理の対象外になる

証券会社を通じて株式投資をする場合、投資している株式は証券会社の資産とは切り分けられて管理されています。そのため、投資中に万が一、株を預けているSBI証券が倒産・破綻したとしても投資家の財産は守られます。

万が一、SBI証券が不正な手段を行っていても「日本投資者保護基金」による保険もあります。
参考:日本投資者保護基金とは?

ところが、米国貸株を利用している場合、保有株をSBI証券に貸していることになります。
このとき、当該株式の名義はSBI証券名義となります。この状態でSBI証券が倒産した場合には、保護対象外となります。

もちろん、貸しているわけなのでSBI証券に対して返済するように求めることは可能です。ただし、破綻時の財政状況によっては一部(または全部)が戻ってこないリスクがあります。

 

配当金調整額となることがある

この点は特に注意をしたい部分です。
カストックのメリットのところでも、引用していますが、同サービスでは配当金については「貸株金利を受け取りながら、同時に配当金(または配当金相当額)も受け取ることができます。」と書かれています。

カストックでは、基本的には配当金の権利確定日に名義を投資家名義に戻しているようです。
配当金は名義人に対して支払われますので、こうすることで米国株や米国ETFからの配当金はSBI証券にではなく、投資家に直接支払われます。

ただ、「または配当金相当額」と書かれており、この作業が間に合わないケースがあるのか、SBI証券側に配当金が支払われることがあるようです。この場合は、SBI証券が投資家に対して「配当金相当額」として支払います。

※「配当金相当額」は、雑所得または事業所得となり、総合課税の対象となります。
※「配当金相当額」は、株式等の譲渡損とは損益通算ができず、また外国税額控除の適用となりません。

さらっと書いてますが、結構厳しいこと書いてあります。
配当金等総額が雑所得になるということについては国内株に対する貸株サービスと同様ですが、2番目の外国税額控除が使えないというのは痛いです。

 

外国税額控除について

たとえば、100ドルの配当が出る場合、米国株(米国ETF)の場合、米国で10%の源泉徴収がされ、日本では残りの90ドルに対して20.315%(復興特別所得税を含む)が課税されます。このままだと二重に課税されます。

それを防ぐのが外国税額控除です。日本と米国は租税条約を締結しており、米国で源泉徴収された分の税額を国内での納税額から確定申告によって差し引くことが可能になっています。

これで二重課税に対する対応ができるのですが、配当金相当額として入金された場合には、この外国税額控除が適用されないので二重に課税されます。

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配当金相当額+貸株金利は雑所得扱いになる

さらに、この配当金相当額や貸株金利は「雑所得(あるいは事業所得)」としての課税上の扱いとなります。
雑所得の場合、その所得は損益通算ができず、総合課税の対象となります。

税率は所得税+住民税で15%~55%という税率になります。配当金相当額についてはすでに「源泉徴収されているのと同じ金額で支払われる」ため、一度課税された上に再度課税されるという二重課税に問題があります。

 

1)サラリーマン・公務員の方と申告不要制度

給与所得を得ている方は雑所得であれば20万円以下なら申告不要制度を利用できます。この場合、確定申告をしない人なら、配当金相当額+貸株金利は非課税となります。
ただし、米国株投資をしている人は前述の外国税額控除のために申告される方も多いかと思います。このように申告する場合には20万円以下であっても申告不要ではありません。

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2)一方で主婦の方、学生の方は扶養に注意

主婦の方や学生の方などのように収入がない方は他の所得と合わせて年38万円までなら所得税は非課税となります(住民税は33万円)。
なので、これ以下であれば気にする必要はあまりないかもしれません。

ただし、逆にこの金額を超えてしまうと、扶養から外れてしまう場合があります。扶養から外れると扶養してくれている方が扶養控除が使えなくなり税金が高くなる場合があります。

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上記記事は103万円としていますが、給与所得は給与所得控除が利用できるために103万円としています。配当金相当額の雑所得についてはこうした控除がないので38万円となります。

 

まとまった金額で米国株投資をしている人にはあまりお勧めしない

以上、SBI証券のカストック(米国貸株)についてのメリット、デメリットを見てみました。

国内株のケースと違って株主優待関連の問題がない一方で、外国税額控除とのからみが出てくることになるので、正直言って、配当金相当額として支払われた場合のデメリットが大きいようです。

もちろん、SBI証券側もこうなったときにデメリットが大きいことは承知しているはずで、ほとんどの銘柄はちゃんと配当金として支払われているようです。

ただ、必ずそうなるわけではなく、配当金相当額になってしまった場合には、貸株料の0.1%~1.0%程度で得られたお小遣いが一瞬で吹き飛ぶレベルの税負担になるかもしれないという事は理解しておきたいです。

 

SBI証券公式ホームページ

以上、SBI証券の米国貸株(カストック)についてまとめてみました。

執筆者・監修者:ふかちゃん
元証券マン。2004年より個人の金融リテラシー底上げのために投資、節約、キャッシュレス、ポイントなどの活用に関する情報を15年以上にわたり発信するマネー専門家です。
SNS苦手でしたけど最近はtwitterやっています。ぜひ絡んでくださいませ。

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