退職日は月末と月末1日前どちらが得?社会保険料と年金で比較
会社を退職するとき、「退職日は月末にした方がいいのか」「月末の1日前にした方が社会保険料が安くなるのか」で迷う人は少なくありません。
結論からいうと、月末1日前退職が必ず得とは限りません。会社の健康保険・厚生年金の保険料はかからなくなる一方で、その月の国民健康保険料や国民年金保険料を自分で負担する必要が出るためです。
退職日を1日ずらすだけで数万円単位の差になることもありますが、転職先の入社日、退職後に無職になるか、家族の扶養に入るか、任意継続を使うかで正解は変わります。この記事では、退職日と社会保険料の関係を2026年度の保険料例も含めて整理します。
- 社会保険料は「資格喪失日の属する月の前月分まで」発生する
- 資格喪失日は退職日の翌日
- 月末退職なら、その月の健康保険料・厚生年金保険料がかかる
- 月末1日前退職なら、その月の会社の社会保険料は原則かからない
- ただし、無職になるなら国民健康保険・国民年金の加入が必要
- 転職先へ翌月1日入社するなら、前職は月末退職の方が空白ができにくい
- 配偶者の扶養に入れる場合は、月末1日前退職が有利になることもある
退職日と社会保険料の基本ルール
健康保険や厚生年金の保険料は、資格を取得した月から、資格を喪失した日の属する月の前月まで発生します。そして、会社員の社会保険における資格喪失日は「退職日の翌日」です。
- 3月31日に退職:資格喪失日は4月1日
- 3月30日に退職:資格喪失日は3月31日
この1日の違いで、3月分の会社の社会保険料が発生するかどうかが変わります。
月末退職の場合
たとえば3月31日に退職すると、資格喪失日は翌日の4月1日です。資格喪失日が4月にあるため、その前月である3月分まで会社の健康保険・厚生年金に加入していた扱いになります。
つまり、3月分の健康保険料と厚生年金保険料が発生します。
月末1日前退職の場合
一方、3月30日に退職すると、資格喪失日は3月31日です。資格喪失日が3月にあるため、その前月である2月分までが会社の社会保険料の対象になります。
この場合、3月分の会社の健康保険料・厚生年金保険料は原則発生しません。
会社が月末1日前退職を勧める理由
会社が「月末の1日前を退職日にした方がいい」と勧めてくることがあります。これは従業員のためだけでなく、会社側にもメリットがあるためです。
健康保険料や厚生年金保険料は、原則として会社と従業員が折半して負担しています。月末退職にすると、その月分の保険料について会社も負担します。月末1日前退職なら、その月分の会社負担がなくなります。
月末1日前退職が得とは限らない理由
月末1日前退職にすると、会社の健康保険・厚生年金からはその月に外れます。しかし、無保険・無年金でよいわけではありません。
退職後にすぐ別会社の社会保険に入らない場合は、原則として次のいずれかを選ぶことになります。
- 国民健康保険に加入する
- 退職前の健康保険を任意継続する
- 家族の健康保険の扶養に入る
- 国民年金の第1号被保険者になる
- 配偶者の扶養に入り、第3号被保険者になる
特に国民健康保険料は、自治体、前年所得、世帯人数、年齢などで大きく変わります。会社の社会保険料より安くなる人もいますが、高くなる人もいます。
2026年度の保険料例で比較
具体例として、標準報酬月額30万円、東京都の協会けんぽ加入、40歳未満の会社員が3月に退職するケースを考えます。
| 項目 | 月末退職(3月31日) | 月末1日前退職(3月30日) |
|---|---|---|
| 資格喪失日 | 4月1日 | 3月31日 |
| 3月分の会社の健康保険料 | 約14,775円(本人負担) | 原則なし |
| 3月分の厚生年金保険料 | 27,450円(本人負担) | 原則なし |
| 3月分の国民年金保険料 | なし | 17,920円(2026年度) |
| 3月分の国民健康保険料 | なし | 自治体・前年所得・世帯構成で変動 |
| 本人負担の目安 | 約42,225円 | 17,920円+国民健康保険料 |
協会けんぽ東京支部の2026年度健康保険料率は9.85%、厚生年金保険料率は18.3%です。会社員本人の負担は原則として半分です。
40歳以上65歳未満で介護保険料の対象になる人は、これに介護保険料が上乗せされます。協会けんぽの2026年度介護保険料率は全国一律1.62%なので、標準報酬月額30万円なら本人負担はさらに約2,430円増えます。
ケース別:退職日はいつにするのがよい?
1. 転職先へ翌月1日に入社する場合
転職先の入社日が翌月1日なら、前職は月末退職にするのがもっともシンプルです。
たとえば3月31日に退職し、4月1日に新しい会社へ入社する場合、社会保険の空白期間がありません。3月分は前職の社会保険、4月分は転職先の社会保険という形でつながります。
一方で3月30日退職、4月1日入社にすると、3月31日の1日だけ空白ができます。この場合、3月分について国民健康保険・国民年金の手続きが必要になる可能性があります。
2. 退職後しばらく無職になる場合
退職後しばらく無職になる場合は、月末退職と月末1日前退職の損得を必ず試算しましょう。
比較するのは次の3つです。
- 会社の健康保険・厚生年金に残る場合の本人負担
- 国民健康保険+国民年金に入る場合の負担
- 退職前の健康保険を任意継続する場合の負担
退職後の健康保険では、任意継続と国民健康保険の比較が重要になります。任意継続は退職後20日以内の手続きが必要で、保険料は原則全額自己負担になりますが、収入が高かった人や扶養家族がいる人には有利になることがあります。
3. 配偶者の扶養に入る場合
退職後すぐに配偶者の健康保険の扶養に入り、国民年金も第3号被保険者になれる場合は、月末1日前退職が有利になることがあります。
たとえば3月30日に退職し、3月31日から配偶者の扶養に認定されるなら、3月分の会社の社会保険料も国民健康保険料・国民年金保険料もかからない可能性があります。
ただし、扶養認定日は加入する健康保険組合や手続き状況で変わります。退職前に配偶者の勤務先へ、扶養に入れる日付、必要書類、収入見込みの判定方法を確認しておきましょう。
4. 月の途中で転職先に入社する場合
月の途中で転職先に入社する場合は、入社した月から新しい会社の社会保険料が発生するのが基本です。
退職日と入社日の組み合わせによって、国民健康保険・国民年金の加入手続きが必要になる場合があります。転職先の社会保険の資格取得日を確認し、空白期間ができるかどうかを見ておきましょう。
国民健康保険・任意継続・健康保険の違いも重要
月末退職か月末1日前退職かを考えるときは、健康保険の選択肢もセットで考える必要があります。
| 選択肢 | 特徴 | 注意点 |
|---|---|---|
| 国民健康保険 | 自治体が運営。前年所得や世帯人数で保険料が決まる | 扶養の概念がなく、家族分も保険料に影響する |
| 任意継続 | 退職前の健康保険を最長2年継続できる | 退職後20日以内の手続きが必要。保険料は原則全額自己負担 |
| 家族の扶養 | 条件を満たせば本人の健康保険料負担なし | 収入見込みや同居・別居、健康保険組合の条件を確認 |
国民健康保険と健康保険の違いは以下の記事でも詳しく解説しています。
年金については、国民年金と厚生年金の違いも見ておきましょう。厚生年金は保険料が高く見えることがありますが、将来の年金額や障害・遺族年金の保障にも影響します。
失業給付との関係も確認しておく
退職日は社会保険料だけでなく、雇用保険の基本手当、いわゆる失業給付にも関係することがあります。
自己都合退職の場合、2025年4月1日以降の退職では、給付制限期間が原則1カ月に短縮されています。ただし、過去5年間に複数回の自己都合退職がある場合などは3カ月になるケースがあります。また、教育訓練等を受ける場合には給付制限が解除される制度もあります。
社会保険料を数万円節約するために退職日を調整した結果、雇用保険の被保険者期間や離職票の内容で不利になるのは避けたいところです。退職理由、離職日、雇用保険の加入期間が境界線に近い人は、会社やハローワークへ確認しましょう。
結婚退職・配偶者の扶養に入るケース
月末1日前退職が有利になりやすい代表例が、退職後すぐに配偶者の社会保険上の扶養に入れるケースです。
会社員や公務員の配偶者の健康保険の扶養に入り、国民年金も第3号被保険者になれる場合、健康保険料も国民年金保険料も本人負担がなくなる可能性があります。
ただし、扶養に入れるかどうかは「今後の収入見込み」「失業給付の受給予定」「退職金や一時収入の扱い」「健康保険組合の独自基準」などで変わります。退職日だけでなく、扶養認定日を必ず確認してください。
第3号被保険者制度については、以下の記事でも整理しています。
年金の第3号被保険者制度の問題点とその廃止議論についてのまとめ
退職日を決める前のチェックリスト
- 退職日の翌日がいつになるか
- 転職先の入社日と社会保険の資格取得日
- 退職後に無職期間があるか
- 国民健康保険料の概算額
- 任意継続を使えるか、保険料はいくらか
- 配偶者の扶養に入れるか、認定日はいつか
- 国民年金保険料の負担が発生するか
- 雇用保険の被保険者期間や給付制限に影響しないか
まとめ:会社の言う「1日前がお得」を鵜呑みにしない
退職日を月末にするか、月末の1日前にするかで、会社の社会保険料の扱いは変わります。月末1日前退職にすると、その月の会社の健康保険料・厚生年金保険料は原則発生しません。
ただし、退職後に国民健康保険・国民年金へ加入するなら、別の保険料負担が発生します。2026年度の国民年金保険料だけでも月額17,920円です。国民健康保険料も加えると、月末退職の方が有利になるケースもあります。
転職先へ翌月1日に入社するなら月末退職、無職期間があるなら国保・任意継続・国民年金を含めて試算、配偶者の扶養に入れるなら月末1日前退職も検討、というようにケース別に判断しましょう。
退職日は会社都合だけで決めるものではありません。最後の給与、健康保険、年金、失業給付、扶養認定まで含めて、最も負担が少ない日を選ぶことが大切です。
参考:日本年金機構 退職した従業員の保険料の徴収、日本年金機構 国民年金保険料、協会けんぽ東京支部 2026年度保険料率、厚生労働省 令和7年4月以降の制度変更
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