iDeCo(個人型確定拠出年金)について、すでに行っているけど、銀行でラインナップによい投資信託がない。運用管理機関の手数料が高いといった理由で別の運用管理機関に変更したいという方もいらっしゃるかもしれません。
今回はそんなiDeCo(個人型確定拠出年金)の管理運用機関(証券会社や銀行)を変更するときの移管手続きとその際の注意点などをまとめていきます。
個人型確定拠出年金の口座を移管する流れ
前置きが少し長くなりましたが、実際に口座を移管する流れを紹介していきます。
ちなみに手続きをするには「基礎年金番号」が必要になります。年金手帳に書かれていますが、会社に預けているという方は会社担当者に聞くのも一つですし、「基礎年金番号がわからないときの調べ方」で調べ方を紹介しています。
ちなみに、申し込み時はわからなくても構いませんが、後からは必要になるので今わからない方はとりあえず申し込みをしておいてあとから確認して連絡(入力)すればOKです。
ちなみに個人型確定拠出年金の移管手続きにおいて移管元となる金融機関への連絡は一切必要ありません。移管先のみの連絡だけになります。
1)移管先の運用期間に申し込みを行う
まずは、個人型確定拠出年金の資産を移したい先の金融機関に「個人型確定拠出年金を移管したい」と伝えて書類を送ってもらいます。
オンラインで申し込みができる場合は、専用のフォームや移管専用の選択肢が用意されていることが多いです。楽天証券の場合は下の画像のような画面が表示されるので、移管(個人型確定拠出年金の金融機関変更)であれば右下を選択しましょう。
一方で企業型確定拠出年金を利用されていた方が会社を退職するなどして、口座の残高を個人型確定拠出年金(iDeCo)に移すという場合は左側です。
ちなみに、下記の記事でも取り上げましたが、企業型確定拠出年金は退職後に放置している人が少なからずいらっしゃるようです。そのままにしていると年々残高が減っていくだけなので早めに手続きしましょう。
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2)届いた必要書類に記入して返送する
変更先の証券会社から運営管理機関変更届が届きますので必要事項を記入して返送します。このとき、運用管理機関変更によって運用している商品はすべていったん現金化されます。
また、「配分指定書」といって運用している個人型確定拠出年金の財産をどのように配分するかを指定する書類についても記載して返送します。ちなみに配分指示を行わなかった場合は最も基本的な元本保証型商品(預金)に振り分けられるのが一般的です。
3)移管手続きが進められる
以上で手続き自体は終わりです。完了までは2か月~3か月程度の期間を要することになります。
運営管理機関を変更する際の注意点、デメリット
個人型確定拠出年金の運営管理機関を変更するときには以下の点に注意が必要です。
- 移管元金融機関の運用商品はすべて現金化される
- 移管手続きの完了まで2~3か月の期間が必要になる
運営管理機関によって取り扱っている運用商品は異なるため、移管時はいったんすべてが現金化されてから移管となります。
その売却の際に売却益があるような場合でも個人型確定拠出年金(iDeCo)なのでもちろん課税はされません。
そのため、大きな影響はないのですが、2~3か月の期間中に相場が変動してしまうことがリスクですね。その間に相場が上がってしまえば、再投資するときに高値で買うことになります。
もちろん、その逆で相場が安くなって得をすることもあるわけですが……。
手数料の高い運用管理機関から移管するメリット
じゃあ、そんなデメリットもあるのにわざわざ移管する必要があるの?というお話にもなりますよね。移管するメリットがあるかどうかは、現在ご利用中の運営管理機関と移管先の手数料を比較してみるとわかりやすいです。
個人型確定拠出年金の運用においては「国民年金基金連合会手数料」「事務委託金融機関手数料」「運営管理機関手数料」の三つの手数料が月額でかかってきます。そのうち運営管理機関手数料以外は固定です。
iDeCoの手数料 | 手数料額(月額・税込) |
---|---|
国民年金基金連合会手数料 | 103円 |
事務委託金融機関手数料 | 64円 |
運営管理機関手数料 | 金融機関により異なる。 SBI証券:0円 楽天証券:0円 ゆうちょ銀行:370円 三菱UFJ銀行:378円 十八銀行:450円 ※2017年7月12日調査時点 |
合計手数料 | 167円~617円 |
運用管理機関の手数料は月額で最大で450円ものの差になり、この差だけで30年運用だと162,000円も手数料に差がつくという結果になります。決して看過できるコスト差ではありません。
ちなみに、この手数料の差はあくまでも総額です。実際には毎月の積立額から差し引かれることになるので運用期間中、複利効果で悪影響を与えることになります。するとどうなるか?運用期間が長くなれば長くなるほどマイナスの悪影響を与えます。
運用管理手数料が与える個人型確定拠出年金へのマイナス影響
運営管理機関手数料の複利的マイナス効果シミュレーションしてみましょう。毎月2万円の積立をするとします。年間の平均運用益をやや低めに3%と仮定します。
運用管理手数料+諸手数料が最安の167円と最高の617円とで運用年数ごとにどれだけの差が出るかを示したのが下記の表です。
10年運用 | 20年運用 | 30年運用 | |
---|---|---|---|
手数料167円 | ¥2,771,492 | ¥6,511,214 | ¥11,557,421 |
手数料617円 | ¥2,708,608 | ¥6,363,478 | ¥11,295,189 |
差額 | ¥-62,884 | ¥-147,736 | ¥-262,232 |
月額にしたらちょっとの差であっても運用期間が長くなるとその差は大きくなるという例です。これが複利の力です(逆方向に動いてますけど)。
参考:金融知識として知っておきたい複利の考え方
このコストの差が運用管理機関を変更する一番大きなメリットです。
また、運用商品においても、銀行は証券会社よりも圧倒的にレベルが低い(商品数が少ないうえ、扱っている投資信託の手数料も高い)といった形になっているので、おすすめしません。
ちなみに、商品別でみたら、楽天証券で扱っている「たわらノーロード日経225(信託報酬:0.2106%)」と十八銀行で扱っている「日経225ノーロードオープン(信託報酬:0.864%)」ともせっかくだから比べてみましょう。
10年運用 | 20年運用 | 30年運用 | |
---|---|---|---|
手数料167円+信託報酬0.2106% | ¥2,741,384 | ¥6,363,577 | ¥11,149,580 |
手数料617円+信託報酬0.864% | ¥2,590,486 | ¥5,797,229 | ¥9,766,830 |
差額 | ¥-150,898 | ¥-566,348 | ¥-1,382,750 |
差はさらに広がりましたね……。
こうした手数料や取り扱っている投資商品についてのデータは現在ご利用中の証券会社・銀行のホームページで確認できるはずです。
もしも、高コストの証券会社・銀行でiDeCoを運用しているなら移管することをお勧めいたします。
もっと詳しい比較データを見たいというかたは「個人型確定拠出年金(iDeCO)のおすすめ証券会社を徹底比較」でも実際のデータをもとに、個人型確定拠出年金(iDeCo)のサービスを提供している会社を詳しく比較しています。
結論から言うと、運営管理機関手数料が無料のSBI証券か楽天証券にしとけって話になるんですけどね……。
以上、iDeCo(個人型確定拠出年金)の移管手続きで失敗や損をしないために知っておきたいこと
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