近年では企業では日常的に人員削減を行っており、40代、50代に対する早期退職制度を恒常的に設けている会社も少なくはありません。早期退職制度のメリットとしては退職金の割増が挙げられます。一方のデメリットとしては安定した給料という収入が失われることや、割増分を考えても定年まで働いた場合よりトータルでは収入は少なくなるという点があげられるでしょう。
今回はそんな早期退職についての損得や、早期退職を考えている方が考えておくべきリスクなどについてまとめていきたいと思います。
早期退職とは?
早期退職制度は定年前に退職をする社員に対して退職金の加算などを行う制度です。基本的には「制度」として恒常的に設けられていることが多いです。年齢要件(○○歳以上)といったようなものがあり、組織の若返りなどを目的としたものが多いです。
なお、不況時などに行われる希望退職(定年前の社員に対して退職加算金などを支払い募集するもの)と似ていますが、希望退職は制度というよりも人員削減という目的があり、整理解雇(事業を継続することが困難な場合に行う人員整理)の前段階として行われることが多いです。希望退職は退職勧奨と合わせて実施されることが多いのが特徴といえます。
つまり、早期退職制度というのはネガティブな理由によるものではないわけです。
早期退職に応募するメリット
まず、早期退職に応募するメリットとしては何と言っても退職金の割増です。前々から会社から独立して起業したいと考えている方や、もうすでに老後に必要なお金は貯めているから会社から自由になって悠々自適な生活を送りたいと考えている人にとってはプラスの制度といえそうです。
50代くらいになってくると、すでに子どもも独立しており、住宅ローンの返済も完了しているという方もでてきますので、そうした経済的な理由で会社にしがみつかなければならない理由が減っているというのも早期退職応募に前向きになれる一つの理由かもしれませんね。
早期退職で考えておくべきデメリット、リスク
一方で考えておかなければならないのは「老後の自分自身の生活」です。たとえ、退職金が割増されるとしても、老後を過ごせるだけの十分な蓄えになるというケースは少ないでしょう。早期退職応募して、また同じくらいの収入で別の会社に就職すればいいさ!と考えている方も多いかもしれませんがそううまくいくでしょうか?
早期退職で悠々自適?老後の資金をシミュレーションしよう
まずは、早期退職に応募をして悠々自適な生活を送りたいと考えている方は特に老後に必要なお金をシミュレーションしましょう。
老後に必要なお金については「老後資金に必要なお金とそれを貯めるための方法」の記事でもまとめていますが、おおよそ公的年金を除外して2000万円~3000万円以上は貯めておきたいというのが実情です。
早期退職に応募して、これから働かないとなると老後期間が延びるのでもっとお金は必要です。
さらに、老後の受け取り年金額が大きい厚生年金から受給額の少ない国民年金に切り替わるということになります。ということはさらに余分に貯めておく必要があるということになるわけです。
参考:厚生年金と国民年金の違い
ということは早期退職で悠々自適に暮らしたいという人はざっくり考えても5000万円~7000万円以上の資産が退職時点でないと厳しいといえそうです。
となると、やっぱり早期退職に応募したとしても次の職探しが必要となります。
50代からだと転職も厳しい
早期退職の時は経験や人脈、スキルがあればなんとかなるんじゃないか。と漠然と思うかもしれません。今と同水準の給料は維持できるだろうと……。
ただし、よほどの方を除き50代から転職するというのはかなり厳しい市場状況であるということを理解しておくべきです。特に営業、事務系の人はなおさらです。
特殊技能・資格でもあれば別ですが、そうでなければ時給数百円の仕事しかない……ということににもなりかねません。
早期退職の退職金を使った起業もリスク
人脈を生かして起業を考える方も少なくないかもしれません。FC(フランチャイズ)などの専門誌やWEBサイトでは早期退職に応募してその退職金を使って外食やコンビニ、サービス業などで起業してビジネスオーナーになるという提案もなされています。
また、自分自身で第2の人生として起業して何らかのビジネスを始めたいという人もいるかもしれません。
こうした選択を100%否定はしません。もともと独立起業の準備をしていおり、そういう段階において早期退職制度が始まったので、それに応募するというのは賢いやり方かもしれません。
ところが、仕事がないなら起業すればいいとか、転職先を探したけど見つからないから、ビジネスモデルが確立したFC(フランチャイズ)でもやればいいという考えはやめておいた方が無難です。
50代なら会社にしがみついた方がいい?
老後に備えたお金の話に戻ると、子どもの教育費などを考えると子どもが大学を卒業するまでの間はどうしても家計全体は厳しくなります。高校生、大学生の子供がいる時期で家計収支をプラスに維持できる家庭は少ないでしょう。つまり、貯金を減らしているわけです。
老後のことを考えると、子どもが独立して家計負担が一気に減少したタイミングから定年退職するまでの10年程度の時期がお金(貯蓄)を積み上げていけるラストチャンスです。
前述の通りすでに億近いお金を貯めているという方を除いて、老後のことを考えるのであれば多少つらくても会社にしがみつくというのがベストの選択しとなるのかもしれません。
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