働く女性が妊娠をすると、出産の前後で産休を取ることができます。この産休中は多くの会社において働いていないので、無給という扱いになります。ただし、当該期間中の休職分については健康保険(協会けんぽや加入している健康保険組合)から出産手当金が支給されます。
さらに、これだけではなく、産前産後ならびに育児休業の期間中の社会保険料免除制度が開始されています。これによって産前産後休業中は社会保険料(健康保険料+厚生年金保険料)が免除になります。もちろん、保険料は払ったことになっているので保険や年金が切れているということにはなりません。
従業員にとっても会社にとっても魅力的な制度なので、産休で会社を休む時はかならず申請しましょう。
産前産後の休業、育児休業に関する2つの支援制度
冒頭でもお知らせしたとおり、産前産後に関しては2つの働く女性向けの公的サポート制度があります。
1)金銭的な支援(出産手当金・育児休業給付金)
出産手当金は「健康保険」から給付される手当です。出産手当金は産休中のお給料の2/3を手当してくれる制度です(無給の場合)。産前42日間、産後56日間が対象です(多胎の場合は産前98日間、産後56日間)。
育児休業給付金は「雇用保険」からの給付金となります。産後(8週間・56日)を経過したのちで、1歳にみたない子どもを養育する男女労働者(雇用保険加入者)が受け取れる給付金です。
一般的な会社では産休や育休を取ると、働けない=無給という扱いになります。その無給期間の給料を保証するという趣旨の制度となります。
詳しくは「出産と育児でもらえる出産手当金と出産育児一時金、育児休業給付金の基本」の記事でも紹介しているので、こちらも御覧ください。
2)社会保険料の免除
今回の中心的なテーマはこの社会保険料の免除です。社会保険料は「健康保険料」+「厚生年金保険料」でいずれも収入(標準報酬月額)によって変動するようになっています。この負担率はおおよそ収入の30%で従業員と会社が折半する形となっています。
会社負担もあるため、産休や育休などを取られると会社は働いていない従業員のために会社が保険料を半分負担するということになり、これが産休を取りづらい環境を生んでいました。
こうした対策として産休中、育休中の社会保険料は労使ともに免除となる制度がスタートしています。これによって、働く女性が産休をとっても会社の負担は少なくて済むため、産休が取りやすくなっています。
産休や育休による社会保険料免除の仕組み
産休に伴う社会保険料の免除については「出産手当金」とは申請などのルールが違います。原則としては、会社側が手続きを行うことになります。
社会保険料免除申請はどこにすればいいのか
従業員は会社に産休、育休の手続きを取りましょう。おそらく出産予定日などの確認がされると思います。
会社は年金事務所に対して申請を行います。
申請自体は会社が行ってくれるはずなので、労働者側はほぼ手続きする必要はないでしょう。ただ、いいかえると、会社が手続きをしないと免除にならないので、これまでに産休を取った従業員がいない中小企業などで働いている方は、社保免除の手続きを会社が忘れないように確認するようにしましょう。
いつから免除になるの?
産前42日間(多胎妊娠の場合は産前98日)、産後56日間が属する月で休業を開始した月、復職日の翌日の前月までの保険料が免除となります。
たとえば、出産予定日は2017年4月26日の場合、産休は2017年3月16日~6月21日までとなります。この場合、社会保険は3月、4月、5月月分が免除となります。
なお、産休後に育児休業に入る場合、育児休業中も社会保険料は免除となります。この場合、育児休業は通常2018年4月25日まで続きますので。2016年6月分~2018年3月までは社会保険料が免除されることになるわけです。
休業中に出社したらダメ
大きな注意点として産休中の社会保険料の免除は休業を開始した月からの申請です。
たとえば、上記のケースでは2017年3月16日以降であれば産休の対象になります。3月分から免除になるわけです。ただ、どうしても外せない仕事があり、2017年4月2日に出社して再度4月3日より産休にはいったたとしましょう。
この場合、社会保険上は休業開始が4月3日からということになり、3月分の社会保険料免除が認められなくなります。本、ルール上を考えると産休をとったらその後は出社しない方がいいということになります。
なお、言いかえれば、月のほとんどを出社したとしても月末から産休に入れば、その月から免除が受けられるということになります。たとえば3月末までならいつから休みにはいっても3月分の社会保険料から免除になります。
社会保険料の節約を考えた時の復職のタイミング
復職する時の保険料免除については「復職日の翌日の前月」というちょっとわかりにくい表現になっています。
これは「会社を辞めるのは月末?月末の1日前?社会保険料負担で考える退職日」でも紹介した保険料算定のタイミングと同じですね。
たとえば、4月30日に復職した場合、その翌日5月1日の前月(4月)までが免除となります。その一方で4月29日に復職をした場合、その翌日4月30日の前月(3月)までが免除となるわけです。このように1日違うだけで社会保険料の免除月が大きく変わります。
家計負担的には数万円単位で変わってくることになるので、タイミングはしっかり考えたいですね。
産後休業については産後56日間が認められていますが、医師の診断書があれば42日後から復職が可能となります。早く戻るという場合は月末・月初がお勧めということになりますね。
復職後は手続きをすれば社会保険料を節約できる
育休後、何も手続きを敷ければ、育休前の社会保険料を負担することになりますが、時短勤務等で給料が下がる場合は「育児休業等終了時報酬月額変更届」を提出して3か月後に保険料を少なくできます。
また、 「養育期間標準報酬月額特例申出書」も提出すれば社会保険料が下がっても、子どもが3歳になるまでは年金保険料を従前のまま納付したこととみなしてくれます。
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ちなみに、養育期間標準報酬月額特例は妻だけでなく夫も使えます。
まとめ。社会保険料免除は労働者、会社の両方にメリット
産休中や育休中の社会保険料の免除というのは労働者にとっては保険料の負担がなくなるというメリットがありますが、勤務先にとっても事業主負担なく、従業員に子育てに専念してもらい、産休後(育休後)にまた復職してもらえるというメリットがあります。
基本的には会社が手続きをやってくれるものですが、社労士がいないような中小企業の場合、手続きの漏れなどによって面倒なことになるケースもあるので、従業員もこうした制度を知っておく価値があります。
ちなみに、社会保険とは関係ありませんが、産休・育休の手当(給付金)は非課税です。そのため、当該期間中は所得が小さくなるので、場合によっては配偶者控除(配偶者特別控除)も利用でき夫の税負担を小さくできる可能性もあります。
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以上、産休中の社会保険料免除の仕組みについて紹介しました。
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