企業が従業員などに対して支給する手当の一つとして配偶者手当(家族手当など名称は会社によって異なる)というものがあります。その名前の通り、配偶者(一般には専業主婦・主夫)がいる人に対して支給している手当なのですが、こちらの手当に対して政府・厚生労働省が見直しをするように会社に求めています。
なぜこうした手当の見直しが必要なのか?また、そもそもの配偶者手当とは一体どのような手当なのかということをまとめていきます。
配偶者手当とは?
名称については配偶者手当以外にも家族手当、扶養手当といったように色々な名称がありますが、扶養家族を持つ勤労者(労働者)に対して生活のために使用者(会社)が労働に対する対価とは別に支給する手当のことを指します。
こうした手当は強制ではなく、手当制度を設ける、設けないという判断は会社が行ってよいことになっています。会社に配偶者手当があるかないかは会社次第ということになります。
配偶者手当の支給要件
配偶者手当のような手当はルールは会社が決めてよいです。配偶者がいれば1万円をというように結婚していれば支給されるようなケースもあるようですが、多くの場合は扶養している配偶者がいればというケースが多いようです。
2015年の職種別民間給与実態調査によると配偶者手当や家族手当などの家族に対する手当があるのは全体の76.5%でそのうちの44.6%の企業が配偶者手当の支給要件を年収103万円以下としています。
いわゆる税法上の扶養と同様です。扶養している場合に限って配偶者手当が支給されて、それを超えると扶養から外れてしまい手当が支給されなくなるというケースが多いようです。
ちなみに、103万円とする理由は会社が行う年末調整の際に配偶者の収入についてのチェックが行いやすいというのも理由の一つといえそうです。
配偶者手当が女性の社会進出を妨げている?
夫が会社員をしており、妻が現在はパートをしているというケースを考えてみましょう。
企業による配偶者手当は前述のように妻のパート年収が103万円を超えたら支給されなくなります。仮に月1万円が支給されている場合、妻の収入が103万円を超えるかどうかで12万円の収入の逆転現象が発生することになります。
そのため、妻の働き方として労働をセーブしてしまう収入として「103万円の壁」と呼ばれることもあります。なお、この103万円の壁は一般的には所得税・住民税の控除である「配偶者控除」のことを指します。
ただし、所得税・住民税に関しては、配偶者特別控除という税制によって、妻の年収が103万円を超えても所得の逆転現象が起こらないように設計されているので、2016年現在で103万円の壁となるのは企業による配偶者手当の方が大きいといえそうです。
政府が企業に配偶者手当の廃止を要求
厚生労働省は2015年12月15日「女性の活躍促進に向けた配偶者手当の在り方に関する検討会」というものを行い、専業主婦やパート主婦などに対する配偶者手当の見直しを企業に呼び掛ける議論を開始しました。
方向性としては「配偶者手当の単純な廃止」や「配偶者に対する手当ではなく子どもに対する手当に変更する」といった形が挙げられています。
2016年11月16日に経団連は2017年の春季労使交渉において配偶者手当の廃止や削減を会員企業に呼び掛ける方針を発表しました。
方向性としては間違ってないかもしれないけど
働き方に税制や制度が中立であるということは重要だと思います。現行制度における配偶者手当(扶養手当)の支給要件をみるとこれは働き方をゆがめる要因にはなると思います。
一方で、今回の配偶者手当廃止の議論で問題になるのは、これが単純な廃止(賃下げ)にならないということでしょう。単純な廃止の場合は明らかに労働条件の不利益変更となります。
通常、こうした一方的な不利益変更は認められません。ただし、今回のように社会背景の問題を提起されて廃止となる場合は企業としても大義名分があるため、廃止に動きやすいです。
大企業の場合は何らかの代償措置などを取ってくれるかもしれませんが、小さい会社だと単純な賃下げになってしまうかもしれませんよね。
今後も動きを注意深く見ていきたいところです。
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