家庭で使うすべてのエネルギーを電気+ガスから電気だけにするという住宅がオール電化住宅です。ガスコンロの代わりにIHクッキングヒーター、ガス給湯器の代わりにエコキュートや電気温水器を導入するのが一般的です。
割安な深夜料金を活用することで給湯費用を節約し、結果的に光熱費を減らすことができるとされています。そうしたオール電化住宅で気になるのが、新電力への乗り換え。電気代だけの住宅なのですから、電気料金の節約効果はガス併用住宅よりも高いはずです。
今回はそんなオール電化住宅の新電力への乗り換えのメリット、デメリットをまとめます。
オール電化住宅の電気代のしくみ
日本ガス協会の調べによると、家庭のエネルギー消費の約1/3(28.3%)はお湯を沸かすことだといわれています。オール電化住宅では深夜の割安な電気料金単価でお湯を沸かしておくことで相対的に、家庭の電気代を節約できるという形になっています。
(引用:東京電力 電化上手)
各電力会社はオール電化住宅専用の電気料金プランを用意しています。いずれも電気をつかう時間帯ごとに電気料金の単価が変わってきます。
一般的なプランでの電気料金単価は1kWhあたり26円程度ということを考えると、昼間はやや割高だけど夜間については半額以下という設定になっています。この半額以下の単価の時に電気エネルギーをお湯に変えて貯蔵しておくというのがオール電化のキモになるわけです。
ちなみに、非オール電化住宅においても「昼間は自宅にいない。それなら電気料金プラン見直しで電気代の節約」で紹介したように夜間の電気代単価が安いプランもあって利用できます。
新電力にオール電化向けのプランはあるのか?
2016年4月から電力会社の自由化が始まり、個人の方でも地域の電力会社以外の電力会社(以下、新電力)と契約ができるようになりました。詳しくは「電力自由化における新電力の選び方と比較のポイント」でも紹介しました。
この新電力にはオール電化住宅向けの料金プランはあるのでしょうか?
実は少ないというのが現状です……。オール電化向けの電力プラン(深夜電力が割安)を用意している新電力はほとんどありません。少なくとも東京にお住まいの方には東京電力のプランしかありません。
そもそもなぜ電力会社はオール電化を推進したのか?
そもそも、なぜオール電化プランのような深夜の電力単価を安くできるのか?という話は基本的には原発が大きくからんでいます。原発(原子力発電所)はその仕様上、発電量を下げるといったコントロールが難しいとされています。
そのため、昼間の需要期向けに発電していると夜間には電気が余ってしまうわけです。電気は貯めておくのが難しいので、「揚力発電(余った電気で水を山の上に貯めて、必要な時に水を落として発電する)」のような形で効率は悪いけど貯蔵しておくというのが主流でした。
そこで考えられたのがオール電化。電気温水器やエコキュートなどで夜間の電気を使ってもらうプランを推進したわけです。
原発の停止の影響
みなさんもご存知と思いますが、多くの原子力発電所は稼働してういませんので、上記のような電力会社としてのニーズは小さくなりました。
結果として電力会社もオール電化をあまり推進しなくなりましたね……。
オール電化住宅が新電力に乗り換えたらどうなる?
無理やり乗り換えることはできるでしょう。ただ、夜間に発電をするエコキュートや電気温水器は、お湯を沸かす単価はあくまでも超割安な電気代単価だから採算があっているわけです。
電気温水器やエコキュートを深夜料金単価ではなく、通常の単価で使うと電気代は跳ね上がります。
たとえば、370リットルの一般的なエコキュートの消費電力は1kWh~1.5kWh程度です(冬場は高い)。
1日に4時間運転するとしましょう。
深夜電力(1kWh:12.25円)プラン
(1.5×4×12.25円)×30日=2,205円
一般(1kWh:23.26円)
(1.5×4×23.26円)×30日=4,187円
エコキュートを標準的な電気代単価で沸かす場合には、かなり高い電気代がかかってしまいます。
なお、日本ガス協会発表の年間都市ガス消費量はひと月当たり27㎥。1㎥の単価を128円とすると月間の料金(基本料のぞく)だと3,456円になります。
これはガスコンロの消費量も含めての数字になるわけですから、通常の電気代でお湯を沸かすならそもそもオール電化のメリットもないということになります。「オール電化リフォームのメリット、デメリット、導入費用の目安のまとめ」でも紹介していますが、オール電化のリフォームはそれなりにコストもかかることを考えると、オール電化住宅は「安い深夜電力をつかってナンボ」という話になりますね。
今後、オール電化向けの料金プランを提供する新電力が登場するかもしれませんが、現状だとオール電化住宅の方は電力自由化での新電力への切り替えはしないほうがいい(というかできない)といえそうです。
なお、最新の電力会社や新電力の電気代プランの調査や比較については「エネチェンジ」という電力比較サイトが最大手となっています。実際のプラン比較にご活用ください。
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