返済型の奨学金(実質学資ローン)は日本学生支援機構が中心に提供しています。この奨学金の返済が難しいということで生活苦に陥っているという話が社会問題化しています。背景には非正規率の増加などもあるわけですが、この奨学金は完全に追い詰められて自己破産となっても解決できない可能性があります。
それは保証人問題です。日本学生支援機構の奨学金は原則として「父母、あるいはそれに代わるものを連帯保証人」と「原則として4親等以内の親族で別生計のものを保証人」とする必要があるからです。
奨学金の利用者と破綻者は増加している
奨学金を借りている大学生は今や2人に1人。しかし、奨学金を借りても返せない人が増加、自己破産にまで追い込まれるケースが累計1万件以上に上っています
引用:NHK WEB特集「“奨学金破産”追い詰められる若者と家族」
就学の機会を支援するための制度である奨学金が、卒業後の経済的な問題を引き起こすキッカケの一つになっているというのは笑えない話です。
その一方で、上記の引用元では自己破産が触れられていますが、奨学金と自己破産というのは実はそう単純な物ではありません。それは、奨学金を借りる時に保証人になってもらっている人がいるからです。
本人だけの問題でにはならない
奨学金(日本学生支援機構)の利用者の場合、利用する時に保証人(連帯保証人1名+保証人1名)を用意する必要があります。通常、連帯保証人は両親がなり、保証人には伯父さんや祖父などになってもらうケースが多いようです。
連帯保証人として両親、また保証人として親戚のおじさん(など)になってもらっているような場合、奨学金の返済ができないといった理由で自己破産をする場合には連帯保証人や保証人にも迷惑がかかります。
本人が自己破産をして認められた場合、自己破産をした本人の債務はなくなりますが、連帯保証人や保証人には引き続き債務が残ることになります。結果として、あなた自身には請求がいかなくなっても、両親やおじさんおばさんに請求がいくことになるのです。
万が一、両親やおじさん・おばさんも払えないなら一緒に自己破産をすることになります。
ちなみに、カードローンや消費者金融のように無保証(保証人不要)で借りているローンの場合は自己破産等によって免責を受けた場合にはその分は消えてなくなります。
そう考えると本人が自己破産をしても連帯保証人や保証人に対して請求が行くことになる奨学金というのは本人だけの問題ではなく、親族にも迷惑をかけることになってしまうわけです……。
機関保証を利用している人は別
一方で日本学生支援機構の奨学金は「機関保証」という、保証会社を利用しているケースもあります。こちらは主に保証人を用意できない人向けの制度です。
こうした機関保証を利用している場合には、たとえば返済義務者が自己破産するなど返済ができないとき、債務(返済義務)は保証会社が担うことになります。
保証会社は代位弁済したことによって、返済者から返済してもらう権利を有するわけですが、自己破産していれば関係ないといういことになります。
機関保証を利用していれば、両親や親戚などに迷惑をかけることはないわけです。その一方で機関保証を利用する場合には「保証料」が別途必要になります。詳しくは「奨学金の人的保証と機関保証の違いを比較。それぞれの注意点や問題点」でも紹介しています。
返済困難な方が自己破産せずに返済する方法
その一方で自己破産をすると、保有する資産のほぼすべてを返済に充てる必要がありますし、いわゆるブラックリストにも載ってしまい、数年間はクレジットカードを作ったりお金を借りたりすることができなくなります。
参考:クレジット・ローンの事故情報・ブラックリストはいつ消える?確認は?
また、単に返済ができないからといって延滞するだけでも事故情報(ブラック情報)が記載されるだけでなく、高い延滞利息も支払う必要があります。
1)日本学生支援機構の制度を利用する
日本学生支援機構では、災害や傷病、経済的困難、失業など通常の返済ではなく、「返済期限猶予(一定期間返済を猶予する)」「減額返済(一定期間の返済金額を減額する)」といった制度が用意されています。
2)その他の再生制度を利用する
自己破産というのは個人の債務整理手段としては最も強いものになります。
任意整理→個人再生手続き→自己破産といった順で制度があります。奨学金という債務は最初に書いたとおり、連帯保証人が設定されているので整理することは難しいですが、他にも借金があり、返済が難しいという場合は任意整理や個人再生手続きなどによって返済可能な環境を整えられる可能性もあります。
こちらの再生制度を利用する場合は、自分自身で判断するよりも司法書士や弁護士などの専門家に相談することをお勧めいたします。
以上、奨学金は自己破産しても解決しないって本当?というお話でした。
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