各銀行が思いっきり力を入れている入り口用金融商品の一つが退職金定期預金です。その名の通り、退職金を預け入れする場合にのみ利用ができる定期預金で、マイナス金利の時代に高い金利が付与されていることで人気を集めています。円預金なのでリスクゼロの安心な定期預金と言えますが、いくつかの注意点もあります。
上手に活用すればお得なのは間違いないですが、その落とし穴にもご注意ください。
退職金定期預金とは?
その名の通り退職金を預金することができる定期預金です。
利用するには退職金であることを証明できる書類(「退職金受取口座の通帳」「退職所得の源泉徴収票」「退職金支払明細書」)が必要で、多くの銀行は退職後1年以内といった条件を設定していることが多いです。
退職金定期預金のメリットは高い金利
退職金定期預金は通常の定期預金よりもかなり色が付けられていることが多いです。
今では見ることがほとんどない数%代の金利が設定されていることも少なくありません。退職金というまとまったお金だからこそそんな高い金利で運用できるというのは大きなメリットがあります。
退職金定期預金のリスクはあるの?
基本的な商品性自体は普通の定期預金と同じです。元本や利息は銀行が保証しています。また、万が一銀行が破綻した場合でも1000万円とその利息までは預金保険によって保護されます(ペイオフ)。
単に金利が高い定期預金と考えましょう。途中解約も可能ですが、その場合は中途解約利率が適用されてせっかくの高金利が無駄になりますので、問題の無い範囲で預金するのがベストです。
金利の高い短期型を渡り歩くのがコツ!
たいていの退職金定期預金は3カ月程度の短期のプランが最も金利が高くなっています。
3カ月後は自動継続で一般の定期預金になるのですが、継続された定期預金の金利は安いのですぐに解約します。そしてそのお金を別の銀行に移動させて同じような退職金定期預金に預け直します。
退職金受け取りから1年程度が退職金定期預金を利用できる期間となっているので、3カ月満期なら理論上は4回(ただし、解約日移動のことを考えると3回が限度?)の高利回りの定期預金を利用することができるということとになるわけです。
銀行によっては6カ月とかの長期タイプもあるので、3カ月+3カ月+6カ月といった形の運用にしても良いかもしれませんね。退職金定期預金は金利が数%あるので、1000万円の対象金を運用すれば数十万円の利息が付くということになるわけです。
銀行預金という安全な運用でこれだけのリターンが出せるなら文句はないですね。
退職金定期預金の注意点
退職金定期預金はなぜ銀行側からしたら赤字確実の高い利率で提供できるのか?ということを考える必要があります。理由は二つです。ひとつは単純に「退職金を将来自分の銀行で運用してもらうための入口商品として」、もう一つは「何らかの仕組みを入れることで別で利益を挙げている」というケースです。
注意したいのはこの「何らかの仕組みが入れられている」と言うケースですね。
投資信託や外貨預金と同時購入が条件となっているケース
これが一番多いです。
投資信託や外貨預金として預けた金額と同額だけ金利の高い退職金定期預金として運用できますよというものですね。これは銀行側にとって結構都合がいいケースが多いです。
たとえば、投資信託の場合、銀行で売られている投資信託には「販売手数料」といって購入時に手数料がかかるものが多いです。高いものだと3~4%くらいの手数料が発生するものもあります。
仮に半年満期の退職金定期預金で3%の金利(年換算だと1.5%)をプレゼントとしたとしても、投資信託で3%とかの手数料を受け取っているわけですから銀行としてはノーダメージ(むしろ利益が出ている)という状態になります。
投資信託の購入自体がNGというわけではありませんが、わざわざ高いコストを払って投資信託を買う必要はありません。最近だと投資信託も販売手数料が無料のもの(ノーロード投資信託)が増えており、それで十分です。
詳しくは「投資信託は銀行と証券会社のどちらで買うのがいい?」の記事もぜひご一読ください。
また、外貨預金も同様です。最近はネット銀行等の動きによって多少の改善がみられてはいる物の外貨預金という金融商品はかなりの手数料ボッタクリ商品です。
「外貨預金を絶対におすすめできない2つの理由」でも書いている通りですが、外貨に投資をするのであれば手数料の安いFXの方が何倍もマシです。
FXというと怖いというイメージがあるかと思いますが、レバレッジを1倍にコントロールすればリスクは外貨預金と同じです。むしろいつでも売買できる、スプレッド(手数料)が小さいということを考えるとむしろリスクは小さいと言えるはずです。
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そのままなし崩し的に運用を勧められることにご注意
上記のような組み合わせが無い場合でも、多くの銀行は退職金定期預金を退職金運用に向けた商品としてとらえています。
つまり、退職金定期で多少損をしても退職金というお金を自分の銀行の中に入れておくことで、のちのち、投資信託や年金などの運用商品に切り替えてもらってそこで手数料を抜くと考えているはずです。
もちろん、投資は悪いことではありません。平均寿命が延びるということはそれだけ「老後」という期間を過ごす時間も長くなります。そうした老後を生きるためには資産に少しでも働いてもらって増えてもらうということも重要です。
その一方で退職金をもらった老後を過ごす人に一つだけ知っておいてほしいことがあります。それは若い時は運用で失敗しても労働収入によってそれをカバーすることができます。ただし、老後はそれができないのです。
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上記の記事でも紹介している通り、若い時は「攻めの投資」を行ってもいいですが、老後は「守りの投資」が中心になってきます。
老後における生活費の虎の子である退職金はそうした守りの運用の中心になるものです。
そんなお金を良く分からない新興国の株式や債券などで運用する投資信託で運用することが本当に正しいのでしょうか?その辺りはしっかりと考えた上で退職金・老後資金を運用するべきです。
以上、退職金定期預金の活用方法と注意点。上手に退職金を運用するコツを紹介しました。
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