大手ネット証券の松井証券が投資信託の販売を再開します。取り扱う投資信託はすべてコストの低いインデックス投資信託で、ロボアドを利用した投資信託ポートフォリオの提案やリバランスサービスである「投信工房」も一緒にスタートしています。
投資信託へ投資を考えるのであればかなり魅力的なサービス内容となっています。今回は松井証券の投信工房の特徴やサービス利用のメリット、デメリット、活用方法などを紹介していきたいと思います。
ロボアドを利用した投資信託サービス
投信工房は「ロボアド(ロボットアドバイザー)」というものを採用しています。
ロボアドはすでに多くの証券会社が採用している仕組みで、多数の投資商品の組み合わせを自動的に提案してくれるサービスです。
投資において「分散投資」が重要だという話を聞いたことがあるかと思います。
その分散投資のメリットは、異なる相関関係を持つ投資商品を組み合わせた場合、期待リターンはその平均となりますが、標準偏差(価格変動の大きさ・リスク)については引き下げることができる(平均分散アプローチ)という点が挙げられます。
ただ、こうした分析を行うのは並大抵の難しさではありません。それをシステムによって分析することができるツールが「ロボアド」です。
もともとは機関投資家などのプロユースのサービスでしたが、2016年に多くのネット証券が個人投資家向けにサービスを提供し始めました。各社のサービス内容については「ロボアド(ロボアドバイザー)を利用した資産運用の特徴とサービス比較」でも紹介しています。
松井証券は2016年11月28日にロボアドによる投信工房のサービスを開始しました。
松井証券の投信工房とは?
松井証券の投信工房は投資信託の組み合わせによるポートフォリオ提案サービスとなっています。
松井証券が2016年11月に再開した投資信託は冒頭にも書いた通りいずれも低コストで知られているインデックス投資信託ばかりです。こうした低コストなインデックスファンドを投信工房というロボアドを通じて、ポートフォリオ提案してくれるわけです。
投信工房ではあなたがとっても良いと考えるリスクの大きさに応じて投資信託をバランスよく配分したポートフォリオを提案してくれます。
たとえば、Aファンドを30%、Bファンドを15%、Cファンドを8%、Dファンドを5%、Eファンドを3%といった具合ですね。こうしてファンドを購入することでリターンを維持して、リスクを抑えた投資信託投資ができるようになるわけです。
運用は、月々500円という超少額の積立から可能となっています。
いわゆるファンドラップとは異なり管理料無料
ロボアドを利用したサービスは楽天証券の「楽ラップ」、マネックス証券の「MSV LIFE(マネラップ)」といったように、ラップ口座(ファンドラップ)としてのサービス展開をしているところもあります。
こうしたファンドラップは投資をほぼ全自動化できるというメリットがある一方で、残高に対しての手数料(管理料・投資顧問料)などのコストが発生します。大手証券だと1%後半代、ネット証券でも0.5~0.7%程度が必要になります。
「株式、投資信託、保険などの資産運用は徹底的に手数料を引き下げることを考えよう」でも書いたようにコストは確実に発生するマイナスリターンであるということを考えるとこのコストを抑えるのは非常に重要です。
投信工房はあくまでもポートフォリオ提案サービスであり、ラップ口座ではないのでこうしたコストはかかりません。
リバランスにも対応
ポートフォリオは一度組んだら終わりではありません。
たとえば、A、B、C、Dのファンドをそれぞれ25%ずつの割合で投資するのが最適なアセットアロケーション(資産配分)だとしましょう。
ところが、時間がたつとA、B、C、Dのファンドの価格は当然変動します。そうすると当初の割合(25%ずつ)とは大きくずれてくることになりますよね。それをもとの最適な配分に戻すのがリバランスです。
リバランスは適切な頻度で行えばリターンを高めるといわれています。
実はリバランスにより一定の資産配分を保った場合、ポートフォリオの幾何平均リターンは、 そのポートフォリオを構成する各資産の幾何平均リターンに、それぞれのウェイトを乗じた数 値の合計を常に上回る。この差をリバランスボーナスあるいはダイバーシフィケーションリタ ーンと呼ぶ。
引用元:水からワイン。リバランスボーナスを理解する(ニッセイ基礎研究所)
松井証券の投信工房では、管理画面上でリバランスを簡単に行うことができるようになっています。
投信工房のメリット、デメリット
投信工房のメリット、デメリットについて、同じロボアドを利用したファンドラップ(楽ラップやMSV LIFE(マネラップ))との間で比較したいと思います。
最大のメリットは運用コストが安くつくこと
まず、メリットは運用コストの低さです。松井証券のインデックスファンドの運用コストは投資信託の信託報酬です。実際の手数料率にすると0.1~0.4%程度です(全ファンドがノーロード(販売手数料無料))。
組み合わせるファンドによって多少の差は出るでしょうがちょうど平均として0.25%程度のコストで運用が可能です。
一方でのファンドラップの場合、「大手証券会社が力を入れるファンドラップの比較と問題点」でも指摘したように管理コスト・投資顧問料が高いです。たとえば野村證券の野村ファンドラップの場合管理コスト+投資顧問料が1.7%です。これに投資信託の信託報酬が載ってきますのでトータルだと2~2.7%ほどのコスです。
ネット証券系のファンドラップでも管理コスト・投資顧問料・信託報酬を加えると1%弱(0.99%程度)になるとされているのでそれでも倍以上のコストがかかる計算になります。
ほったらかしではダメ
一方のデメリットとしては、完全放置できるわけではないということです。あくまでもポートフォリオ提案サービスなので、リバランスなどは自分で行う必要があります。ファンドラップの場合はリバランスなども自動で行ってくれるので、こうした手間は不要です。
完全放置できるわけではないというのがデメリットといえそうですね。
ただ、これは一概にもデメリットとは言えません。投信工房はNISA口座にも対応しています。自動リバランスだとNISAの非課税枠を余計に消費してしまいますが、任意のタイミングでリバランスができるというのは非課税枠を上手に活用できます。
NISAについては「10分でわかるNISAの仕組みと活用方法。NISAとは何か?」もご覧ください。
投信工房の個人的評価
自分で自分の資産運用を考えている人にとってはかなり魅力的なサービスだと思います。低コストで評判のよいインデックスファンドを数多くそろえており、それを組み合わせた最適なポートフォリオを提案してくれるというのはそれだけでも魅力的です。
ちなみに、松井証券では投信工房と投資信託販売再開のプレスリリースで下記のような内容を書いています。
当社は、90年代末に投信ビジネスから撤退して以降、長らく投資信託を取扱ってきませんでした。撤退の理由は、当時、販売額の2~3%もしていた投資信託の販売手数料を、個人が低コストで資産運用を行えるようにすることを目的として一律1%に引き下げる方針を発表したところ、全ての投信運用会社から商品供給が停止してしまったことにあります。
引用元:松井証券プレスリリース
松井証券の本気度を感じた投資信託サービスとなっています。
以上、松井証券の投信工房と投資信託販売再開についてまとめてみました。
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