前回は、家計診断のポイントとして「収支編」を解説しましたが、家計診断の第2弾は診断です。
いくら預金がある、いくら株や不動産を保有している。一方でどれくらいのローンや負債を抱えているといった状況から、あなたやあなたの家庭が保有している財産を「資産」「負債」「資本(純資産)」とに分けて分析していきましょう。
こうした資産や負債などを分析していくとあなたの家計の状況を正しく理解することができます。
家計の収支管理と同様に資産状況も診断していきましょう。
財産を「資産」「負債」「資本」に分けて考える
「資産」「負債」「資本(純資産)」という考え方は「バランスシート(貸借対照表)」と呼ばれる会計ツールによってでてくる名称です。家計診断第2段「資産診断」ではこのツールを応用する形で、実際の家計診断を行っていきます。
資産とは?
あなたが保有している有形・無形の財産です。たとえば現金、預金、株などの有価証券、自動車、住宅、土地などです。現金で購入したもの、ローンを組んで購入したものもぜんぶこの「資産」に含めていきます。形あるものだけではなく、たとえば解約することでお金が戻ってくる「生命保険(解約返戻金)」なども資産にあたります。
ただし、金銭的価値が無いもの(売却できないもの)は資産に含みません。また、それぞれの資産の価値は現在の売却可能価格(時価)で算出します。
負債とは?
あなたが抱えている借金・借入の合計です。カードローンやキャッシングといった比較的短期の債務から、住宅ローンやマイカーローンのような中長期的な債務がこれにあたります。
資本(純資産)とは?
資産の合計額から負債の合計額を差し引いたものが「資本(純資産)」です。この資本(純資産)というものは、「あなたの家計の正味財産」ということになります。
通常はプラスであるはずですが、マイナスである場合もあります。マイナスの場合はいわゆる資産よりも負債が多いという「債務超過」の状態であることを示しています。
資産の計算方法
まずは、資産から順番に計算・評価をしていきます。資産を評価する際は大きく「金融資産」と「実物資産(非金融資産)」に資産を分類します。下記は一例です。
金融資産
- 現金・預金:100万円
- 株式・投資信託・債券:400万円
- 生命保険:100万円
- 金融資産合計:600万円
実物資産
- 土地:1000万円
- 建物:2000万円
- 自動車:40万円
- 宝飾品:20万円
- 実物資産合計:3060万円
資産合計:3660万円
このように計算できますね。ちなみに、資産計算の場合の注意点をいくつか挙げておきます。
- 保険は「現在の解約返戻金」の相当額で計算します。
- 建物や自動車は購入後、価値が減少していきます。適正か保守的な計算を心がけましょう。
- 株式や債券、投資信託についても現在の「時価」で価値評価をするようにします。
負債の計算方法
負債は、抱えているカードローン、キャッシング、住宅ローン、自動車保険、奨学金などの負債を指します。これらの現在の残高をリストアップして計算していきます。
- カードローン残高:10万円
- 奨学金残高:10万円
- 自動車ローン:80万円
- 住宅ローン:3200万円
負債合計:3300万円
このように計算することができます。
資産と負債から資本(純資産)を計算する
資産と負債がでそろったら、最後に「資本」を計算します。
計算は単純で資産から負債を差し引きます。
例では、3660万円の資産と3300万円の負債がありますので、
3660-3300=360万円
となります。この360万円という金額があなたの家計における「資本(純資産)」となります。この純資産というのは、現在の家計にある財産(時価)から抱えている借金を引いたものです。
すべての資産を売却し、すべての借金を返済した場合に残る現金相当額という事になります。
計算した財産状況の家計診断と改善のポイント
では、ここまでで計算してきた家計の状況について家計診断していきたいと思います。
いつくかの例を挙げながら、それぞれの現状や今後とるべき対策について考えていきましょう。
資産-負債がマイナス=債務超過のケース
まず、「資産」-「負債」の金額がマイナスになるケース。これは債務超過の状態であり、あなたの家計は大ピンチにあることを理解しなければなりません。この場合、二つのケースが想定されます。
1.住宅ローンによって負債が多い場合
住宅購入は多くの場合、買った時点で建物価値が減少します。そのため、厳密に計算すると、頭金を多く積んでいない住宅ローンの場合、「土地・建物時価」<「住宅ローン残高」となります。
「住宅ローンの頭金の割合と金額ランキング」によると住宅ローン利用者の23%が頭金なしでの利用ということですので、多くの方がこのケースに当たるかと思われます。
ある意味、しょうがないという側面もあります。「家計診断(収支編)」において収入状況が健全であれば、現時点で悲観的になる必要はありません。
繰上返済などを活用しながら、住宅ローン残高を減らしできるだけ早期に債務超過の状況から脱出できるように対応していきましょう。
(ただし、住宅ローンと同時にカードローン等の短期負債がある場合はそちらを優先して返済します)
2.短期ローンによって負債が多い場合
カードローンやキャッシングなどの残高が多いケースです。
まずは、「家計診断(収支編)」などを参考にしていただき、節約を心がけ、収支をプラスに持っていき、なるべく早く早期に返済をするようにしましょう。
「クレジットカードでカード破産しないための鉄則」「借金返済は低リスクで魅力的な投資と考えよう」なども参考にしてください。
資産は少ないが、負債も少なく、純資産がプラス
20代~30代前半に多くみられる財産状況です。これか資産運用や住宅購入などを検討しようとしている家計に多いパターンです。
預貯金などの金融資産に多くが配分されおり、ローンなどもほとんどないような家計です。これから、資産運用を本格化したり、住宅購入を検討することもできる家計状況です。
このタイプの家計においては、収支状況がどれだけ安定的であるかが一つのポイントになります。純資産があるといことは、一般的には収支はプラスであろうかと思われます。しかしながら、その収支のプラスが共働きによるプラスであり、今後出産を控えているようなケースでは、今後の収支悪化が予想されます。
これらを踏まえた上で、資産運用に取れるリスクを考えてきます。「家計診断(収支編)」における、最低6カ月分の支出額相当は「現金や預金としてリスク対策資金として残しておき(生活防衛資金)」それを超える部分を運用に回すなどのリスク対策も行っておきましょう。
なお、生活防衛資金に関しては「万が一のための生活防衛資金を貯めておく必要性」の記事で詳しく説明しています。
資産・負債ともに大きく、純資産はプラス
一般的には、住宅ローン返済中の家計に多いパターンです。当初の計算例で出したような家計ですね。資産の大部分を不動産資産が占めており、負債部分も住宅ローンが大半を占めているような状態です。
一見安定しているように見えますが、ローン債務がまだまだ残っている状況ですので家計としては油断ならない状態です。
ポイントは住宅ローン(ローン債務)に対するリスク管理ができているか、ということです。たとえば「住宅ローンとリスク管理」で説明されているように、大型ローンの利用時には「金利上昇リスク」や「収入下落リスク」が顕在化することによって家計に対して大きなダメージを与えるリスクがあります。
たとえば、固定金利の住宅ローンなら金利リスクを考慮する必要が無いので、今の収入が今後どう変動するかだけを考えればいいわけですが、変動金利ローンのような場合は金利リスクも考慮する必要があるわけです。
「家計診断(収支編)」で「固定費の多い家計はリスクが高い」と説明したとおり、住宅ローンの返済についてかなりの目途がつくまでは積極的なリスクをとることはできない家計であると認識しておきましょう。
資産運用などにチャレンジすることも可能ですが、リスク許容度は低いので、どちらかというと安定的な投資商品への投資にとどめるべきだと思います。
資産は大きく、負債は少ない、純資産は大きくプラス
いわゆるお金持ちに準ずる家計状況です。資産は大きいのに負債は少ない。そのため純資産も大きくプラスという状況になっています。
このタイプの家計も二つのタイプに分類できます。
・高所得者。家計資産は金融資産が中心
いわゆる高収入家計に多いタイプです。収入が多く、その収入を金融資産として運用しているような家計タイプです。
特にいうことはない家計で、リスクをとって、資産運用してもいいし、不動産に投資をしてもいいかと思われます。金融資産が多い家計なので、万が一の場合にも現金等のキャッシュで対応できるかと思います。
注意点としては、収入のリスクです。高収入の家計で支出もそれなりに多い場合、なんらかの事情で収入が途絶えた場合にはとたんに生活費に困窮するような場合があります。
退職等によって収入が途絶えた場合でも、できれば1~2年程度の余裕資金があれば焦って、望まない転職をするようなリスクを減らすことができます。生活資金として一定の金額をすぐに換金できる生活リスク資金として確保しておきましょう。
・家計資産が住宅等の不動産中心
住宅ローンの返済が完了したような家計に多いパターンです。退職金を使って住宅ローンを繰上返済したような場合も当てはまります。
こうした家計の場合は、「家計診断(収支編)」で計算した家計収支がプラスかマイナスかによって評価が異なります。
家計収支がプラスという場合は、リスク許容度が高いので、資産運用等でリスクを取っても大丈夫です。
一方、家計収支がマイナスという場合は注意が必要です。資産の取り崩しを行っているからです。といっても、多くの高齢者家計では、この資産の取り崩しは当然のように行われていますし、それ自体は問題ではありません。
要は、取り崩すべき資産のために、家計資産を適切な形で「安全な金融資産」としておく必要があるわけです。
たとえば、毎月50万円の資産を取り崩している家計で、現預金500万円、不動産3500万円という資産状況だと、10年後には取り崩せる資金が底をつくことになるわけです。
それまでに、現預金を確保するか住宅という資産を売却したりリバースモーゲージを利用するなどの対策をとる必要があるわけです。
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上記は極端な例にしても、家計資産が住宅等の不動産中心の家計はリスク許容度は決して高くなく、現金等の流動性を持たせた資産の運用比率を増やしてく必要があるものと思われます。
以上、いくつかのパターンを元に財産状況の家計診断を行っていきました。ぜひ、あなたの家計も自分で診断してみてくださいね。
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