大手証券が軒並み力を入れているのファンドラップと呼ばれる口座です。ファンドラップとは、ラップ口座という投資判断を証券会社や銀行などの管理者に委任する口座の一種で、投資対象を投資信託に限定したものがファンドラップです。
従来のラップ口座は最低数千万円以上の預け入れが必要でしたが、投資対象を投資信託とすることで最低預金額を数十万円~数百万円と比較的手ごろにできるのが魅力です。
投資や資産運用は難しいと考える人に対して「100%おかませ」で運用できるということで証券会社を中心に攻勢を強めています。一方、投資を「お任せ」できる半面で注目したいのはそのコストです。ファンドラップはお任せの対価としてファンドラップフィー(投資顧問料+管理費)を受け取りますが、これが意外と高額です。
今回はそんなファンドラップそのもののメリット、デメリットと各社によるファンドラップの比較などを中心にファンドラップをまとめていきます。
ファンドラップとは?
ラップ口座とは個人が証券会社や銀行などの金融機関にお金を預けて運用を一任する口座の一種です。もともとのラップ口座は数千万円が最低預入額で運用商品も多岐にわたるのが特徴です。
ファンドラップというのはこのラップ口座の一種で運用商品を「ファンド(投資信託)」に限定しているのが特徴です。2016年現在では大手証券会社で300万円~500万円という金額から開始することができるようになっており、退職金や投資のことはわからないが、資金を持っている高齢者の資金などが流入しています。
2016年3月末で残高は5兆7000億円を超えているといわれています(ラップ口座全体)。この残高は1年で約50%増加しており、ファンドラップがけん引しているのは間違いなさそうです。
業界最大手の野村證券もいわゆる株式売買などのフローの手数料ビジネスから、ファンドラップのようなストック型の手数料ビジネスへの転換を進めるとしています。
ファンドラップのメリット、デメリット
ファンドラップは投資をお任せできる手軽な投資に見えるかもしれません。また、ラップ口座そのものは基本的には富裕層向けのサービスといわれていることから、ちょっとばかりの「特別感」を感じるかもしれません。
その一方でファンドラップはコスト高という面があります。
そもそも、投資家から集めた資金を運用する投資信託はその管理コスト(信託報酬)がかかっていますが、それに加えてファンドラップ手数料が加わるため、預けているだけで年数%分の手数料が確実に発生することになります。
結果的に運用益はマイナスなのに手数料だけがのしかかることになりかねません。
「お任せ」ができるファンドラップだからこそ、ファンドラップそのものの仕組みを理解しておく必要があります。
ファンドラップのメリットはお任せできること?
ファンドラップでは様々な診断ツールなどを使って自分の年齢や収入、保有資産、投資目的などに応じてリスクにあったポートフォリオを構築できます。
そのうえで、基本的に最初に考えた戦略通りに運用をしていきます。経済環境や相場環境が変化してもそれに合わせてポートフォリオを組みかえるのも自動で行うため、自分自身が投資の判断をする必要がないというのは大きなメリットに感じるかもしれません。
実際に、金融投資の先進国の米国では若年層にもファンドラップは普及してきています。
ファンドラップのデメリットは手数料の二重構造
ファンドラップは投資対象がファンド(投資信託)です。投資信託はその運用や管理のための手数料として「信託報酬」と呼ばれるコストがかかっています。これは年率で0.3~2%程度が一般的です。このコストは投資信託を運用している会社(運用会社)や信託銀行、ファンドを販売した証券会社などが受け取ります。
詳しくは「信託報酬とは(投資信託の手数料)」などが参考になります。
一方で、ファンドラップの場合、ファンドラップ利用の手数料もかかります。大手証券の場合は投資顧問料+管理手数料を合わせて残高の1.5%程度が主流です。
つまり、ファンドラップで資産運用をする場合は投信そのもののコストに加え1.5%程度のファンドラップ手数料が上乗せされるという手数料の二重構造になっているわけです。
「金融知識として知っておきたい複利の考え方」でも説明したように固定的な手数料は負の複利効果を生み出します。
ファンドラップなどで中長期運用を考えた時、ファンドラップフィー(投資顧問料+管理手数料)分だけその率以上に収益性を失わせることにつながります。
大手証券会社のファンドラップ比較
以下は大手証券会社並びにネット証券が提供しているファンドラップを比較しています。ちなみに下記に記載している手数料はファンドラップを利用するための管理手数料で「残高」に対してかかってきます。
これとは別に、投資するファンド(投資信託)の投資で発生する信託報酬(管理手数料)も間接的に負担することになります。信託報酬の額は投資するファンドによって異なりますので一概に比較はできません。
野村ファンドラップ
ファンドラップ最大手です。かなり力を入れているようですが、その手数料を見て納得です。
ファンドラップフィー(投資一任手数料+管理手数料)の合計は最大1.7064%です。最低利用金額は500万円以上で、アクティブファンドを組み込むコースは2000万円以上からとなります。
ダイワファンドラップ
大和証券のファンドラップ。ファンドラップフィーは最大1.512%で、最低金額は300万円から。野村證券よりは少しやさしい内容になっていますね。
日興ファンドラップ
SMBC日興証券のファンドラップ。ファンドラップフィーは最大1.298%。最低金額は300万円からとなっています。
コストの低いネット証券のファンドラップやロボアドも活用しよう
ファンドラップでの投資は投資残高に対してかかるファンドラップフィーが高額です。1%くらいと思うかもしれませんが、仮に100万円を30年運用するとして、リターンが5%と4%なのとでは100万円以上も最終的なリターンが変わってきます。
固定的に発生するファンドラップの固定手数料はそれだけ負の複利効果を生み出していると言えるわけです。
そこで重要なのはできるだけ管理費などのコストを下げることです。2016年にはロボアド(ロボットアドバイザー)という仕組みを活用したネット証券のファンドラップや関連サービスも多数登場しているので、こうしたサービスを活用する手もあります。
2016年12月現在では楽天証券(楽ラップ)、マネックス証券(MSV LIFE)、松井証券(投信工房)といったようにいくつものネット証券系のファンドラップやロボアドサービスが展開されており、上記の大手証券のファンドラップよりはるかに低コストでスタートすることもできるようになっています。
ロボアドについて詳しくは「ロボアド(ロボアドバイザー)を利用した資産運用の特徴とサービス比較」もご参照ください。
面倒ならバランス型のファンドを購入するという手もある
バランス型のインデックス投資家に人気が高いのが「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド」があります。世界30カ国以上の株式と10カ国以上の債券に分散投資している投資信託で、これ一本で分散された投資が可能です。
自分の保有する資産のうち、どの程度をリスク運用をするか?ということを考える必要がありますが、面倒なことを考えたくないという方にはこちらもおすすめです。
>>セゾン・バンガードグローバルバランスファンド公式ホームページ
大手証券のファンドラップは手数料が高すぎる……
個人的に手数料水準さえ適正であればファンドラップという運用方法も一つの手段として有用だと考えています。個々人の運用資産の特性などを踏まえたうえで最適なバランスでの運用ができるというのは魅力的です。
しかしながら、現状で1%以上も手数料を取るようなファンドラップはコスト面から考えて論外です。
「株式、投資信託、保険などの資産運用は徹底的に手数料を引き下げることを考えよう」でも書いたように手数料というのは投資のリターンを確実に引き下げる要因となります。今回のファンドラップのように「残高に対して定率のコストがかかる」タイプのサービスだと、その影響はさらに大きいです。
証券会社はノンリスクで確実に1~2%の収益を得て、投資家はリスクを取りながらも上澄みをピンハネされる構造になります。
ちなみに、日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が試算している期待リターンは以下の通りです。
- 国内債券:3%
- 短期資産:1.9%
- 国内株式:4.8%
- 外国債券:3.2%
- 外国株式:5.0%
ここから2%近くの手数料が抜かれると考えると、投資家の期待リターンは期待値の半分以下になってしまう可能性も十分に考えられますね。
逆に、安全第一の運用方針なんか取ったら、期待リターンがほぼゼロに近くなるなんて笑えない話となるかもしれません。
以上、大手証券会社が力を入れるファンドラップの比較と問題点を紹介しました。
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