パートやアルバイトとして働く中で「社会保険への加入の有無」というのは様々な影響がある要素です。社会保険というのは主に、厚生年金と健康保険の二つを指し、アルバイトやパートとして働く場合でも一定の条件を満たした場合、会社は加入させる義務があります。
保障が充実した社会保険に加入したいと考えているのに、なかなか会社が加入させてくれないというケースもあるでしょう。逆に、配偶者の扶養の関係上で入りたくない方など人それぞれかと思います。
今回はパートやアルバイトにおける社会保険加入の基本と、加入するべき人と加入するべきでない人の違い、加入しないで済む方法や、加入させてくれない会社に対する対応などをまとめます。
社会保険とは何か?
まず、基本です。
社会保険というのは「協会けんぽ(または勤務先の健康保険)」や「厚生年金」のことを指します。よく仕事情報などに「社保完備」などと書かれているかと思いますがこれが「社会保険」のことです。日本に住む人は国の医療保険制度である「国民健康保険」に加入しています。また、20歳以上の方は「国民年金」という年金制度に加入しています。
アルバイトやパートとして雇われた場合、一定の条件を満たしたら会社はその人を社会保険にかにゅうさせる必要があります。社会保険に加入するとは国民健康保険の代わりに「健康保険組合(または協会けんぽ)」、国民年金の代わりに「厚生年金」に入ります。
健康保険組合(or協会けんぽ)に加入
国民健康保険の代わりに加入します。
病気やケガをしたときの自己負担額は3割で国保(国民健康保険)と同様ですが、国保にはない保障も多いです。
代表的なものとしては、傷病手当金や産前産後休暇時の出産手当金などが挙げられます。
健康保険は保障が手厚い分、保険料も高いのですが、保険料は加入者(労働者)と企業が折半しています。一方の国民健康保険の場合は全額自己負担なので、比較すると労働者の負担は小さくなります。もっと詳しい制度の比較は下記の記事もご一読ください。
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厚生年金に加入
サラリーマンが加入できる年金制度。社会保険の一つで、国民年金の上乗せ年金となります。公的な年金制度は下記のように3階建てとなっており、厚生年金は「2階部分」にあたります。
20歳以上の自営業、学資、無職などは「第1号被保険者」となり国民年金のみの加入となります。第1号被保険者の場合、任意で「付加年金」や「国民年金基金」「個人型確定拠出年金(iDeCo)」などに加入することはできますが、基本的には国民年金のみです。
これが社会保険に加入する場合は「第2号被保険者」となります。第2号被保険者になると「厚生年金」に加入します。上記の図では別々となっていますが、厚生年金の中に国民年金が含まれるような形になります。
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厚生年金に加入すると国民年金にプラスして保険料を払っていることになるので老後に受け取れる年金の金額は大きくなります。さらに遺族厚生年金や障害厚生年金などの受取金額や条件なども国民年金より有利です。
保険料の総額は国民年金よりも高くなりますが、健康保険同様に保険料の半分を会社が負担してくれるため、実質的な負担額は小さくなります。
基本的に社会保険は入ったほうがお得
冒頭で健康保険や厚生年金の説明を読んでいただければわかると思いますが、社会保険というのは非常に労働者にとって有利にできた制度です。
社会保険は社会保険料が給料から天引きされるので、社保に入ると負担が増えると思う方もいるかもしれませんが、それは間違いです。なにせ社会保険は保険料の半分を事業主が負担してくれているからです。
社保に入らない場合は「国民健康保険+国民年金保険料」という形で別途の支払いをする必要がありますし、支払う保険料もアルバイトやパートといったレベルの収入であれば、社会保険に加入したほうが保険料の自己負担額は小さくなるはずです。
なお、国民年金保険料は定額ですが、厚生年金保険料は月収(標準報酬月額)が高くなるほど高くなります。そのため、月収の水準によっては社会保険料(厚生年金保険料)の方が高くなる可能性もあります。ただし、厚生年金保険料は払った分だけ老後にたくさん受け取れるという面もあるため、必ずしも払い損にはなりません。
企業が労働者を社会保険に加入させる基準(ルール)
企業は「正社員の3/4以上の勤務時間、勤務日数を働いている人」を社会保険に加入させなければなりません。いわゆる3/4ルールと言われるものです。たとえば週40時間の勤務時間、月20日が勤務日数の会社なら週30時間以上かつ15日以上の勤務がある場合は社会保険に加入する必要があるのです。
ただし、従業員が501人を超える会社については加入ルールがより緩和されました。
- 週の労働時間が20時間以上
- 賃金月額が月8.8万円(年106万円以上)
- 1年以上の使用されることが見込まれる
- ※学生は除外
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※また、2017年4月以降は従業員が500名以下の会社であっても従業員の過半数で組織する労働組合の同意、もしくは従業員の過半数を代表する者などの同意を得て、年金機構に申出をすることによって、上記同様のルールとすることが可能
このルールに基づいて、企業は対象者を社会保険に加入させます。アルバイトやパートも同様です。入りたくないといったからといって、入らせないわけにはいきません。
社会保険は正社員じゃないと入れないは嘘
社会保険への加入基準はアルバイト、パートでも同じです。「当社は正社員以外は社会保険に加入させない」などとのたまう会社もありますが、立派な違反行為です。
アルバイトやパートといった種類をとわず、上記条件を満たす人は社会保険へと加入させる必要があります。
なお、勤務先(雇用者)が個人事業の場合、社会保険に加入していないケースもあります。その場合は社会保険に加入はできません。ただし、勤務先が株式会社などの会社組織なら1名でも社会保険の適用事業所となります。社員数が少なくても加入は義務となっています。
社会保険に入りたいけど会社が加入させてくれない時はどうしたらいい?
社会保険の保険料は事業主と折半という仕組み上、会社側にとってその従業員を社会保険に加入させるかさせないかで大きく負担が違ってきます。
ざっくりと月収で13万円くらいのアルバイト・パートで想定した場合でも、社会保険だけで18,000円くらいの追加負担が会社に生じます。会社にとっては、加入させるだけで負担が増えるので、ボーダーラインにいる方やパートやアルバイトなどにはできるだけ社会保険に入って欲しくないというのが本音でしょう。
ただ、3/4ルールを満たしているのであれば、アルバイトやパートであっても加入させるのが義務なわけですから、遠慮はいりません。社会保険に入れてもらうように会社にお願いしましょう。
そういうブラックな会社は辞めて転職するのもよい判断
そうした会社と戦うというのも一つの手ではあると思いますが、かかる労力の割に実りはあまり大きくないというのが現状です。
労働環境は直近で大幅に改善しています。どこもかしこも人手不足です。そんな労働環境が悪いブラックな会社で働くくらいであれば、転職しましょう。
社員やアルバイト、パートを社会保険に加入させる義務があるにその責務を果たさないような会社は先が無いと早めに見切りをつけ、別のもっといい就職先を探しましょう。ちなみに、社会保険に入りたいというのであれば、より社会保険への加入ルールが厳しい大企業(従業員501名以上)を選ぶようにするとよいでしょう。
アルバイトやパートとしての働き方でなく、正社員への転職を考えるのも人手不足で労働環境が整っている今がチャンスです。
アルバイトやパートで社会保険に入りたくないけどどうしたらいい?
社会保険に加入させてくれないという話がある一方で、社会保険に加入したくない(加入しないほうがお得)という人がいるのも確かです。
サラリーマンの妻(第3号被保険者)は、社会保険の扶養内(年130万円以下、月収10万8333円未満)で働くことで、年金保険料や健康保険料が実質免除されています。こうした方がパートなどで社会保険に加入すると、保険料の支払い分だけ手取りが小さくなってしまいます。社保加入のメリットもあるのですが、社会保険には入りたくないという方のほうが多いでしょう。
以下の記事ではサラリーマンの妻がパート先(勤務先)の社会保険に加入すべきかどうかをまとめた記事です。参考にしてください。
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また、親の扶養に入っている学生さんも年金は学生納付特例制度がありますし、主婦と同じようにご両親ほ健康保険の扶養に入っていて保険料負担ナシという方も多いかと思います。こうした方も社会保険には入りたくないでしょうね。下手に働き過ぎて社会保険適用者となることで本来は必要なかった社会保険料負担をする必要が出てくるケースがあります。
中には、年金制度自体を信用していなくて、強制的に年金保険料が天引きされる厚生年金には入りたくないという方もいるかもしれません。
アルバイトやパートで社会保険に加入しなく住む方法
社会保険はそもそも、入る、入らないという任意の保険制度ではなく、条件を満たした場合は会社が加入させなければならないことになっています。
ただ、労働時間を調整できるアルバイトやパートの場合は、調整することで社会保険に入る、入らないという選択をすることが可能です。社会保険に入りたくないなら前述の条件を満たさないように働くことです。従業員500名以下の会社なら、おおよそですが月間16日以下の勤務となるような労働条件で働けば、社会保険には入らなくて済みます。
社会保険に入りたくないという方はそうするべきでしょう。
サラリーマンの妻や学生であっても年収が130万円(見込み)を超えるなら社会保険加入がお得
社会保険の扶養に入っている人は、社会保険に加入しないほうがお得となるケースが多いです。
その一方で、年収が130万円を超えるのであれば、そもそも社会保険の扶養から外れてしまいますので、社会保険に入ったほうがお得となります。社会保険の扶養基準を超えると、第3号被保険者から第1号被保険者となり免除されている年金や健康保険料の負担が発生します。これが発生するくらいなら、社会保険に加入するほうがいいです。
なお、社会保険の扶養は税金上の扶養と違って、暦年(1月~12月)をベースとするのではなく、見込み額で扶養について判断しています。そのため、月収10万8333円というのが扶養から外れる見込みとなります。協会けんぽの場合、3か月連続して10万8333円を超えると扶養認定が取り消されますのでご注意ください。
税制上の扶養と社会保険の扶養については以下の記事でもっと詳しく紹介しているので、こちらもご一読ください。
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フルタイム勤務で社会保険に入りたくないというのは難しい
アルバイトやパートであれば労働時間を調整することもできますが、フルタイム勤務の場合は、そもそも時間調整ができないので、社会保険への加入は必須となります。
どうしても、どうしても社会保険には入りたくないという方は、5人以下で仕事をしている個人事業主のところで働くしかないです。
まとめ。社会保険加入は今後ますます対象者が広がりそう
今回はパートやアルバイトで働く上での社会保険の基本と社会保険加入のルールや条件を紹介しました。
その中で、パート、アルバイトとして働きながらも社会保険に加入したくないという人がどうするべきかも紹介していきました。ただ、昨今では社会保険への加入条件がどんどん緩くなってきていて、社会保険に入りたくないという労働者側の希望はかなえられにくい社会になりそうではあります。
以上、パート・アルバイトの社会保険加入の基本ルールについて紹介しました。
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