支払督促とは?貸したお金・未払い代金を裁判所経由で請求する費用と手順

支払督促は、貸したお金、立替金、家賃、売掛金、給料などが支払われないとき、簡易裁判所の書記官から相手へ支払いを命じてもらう手続きです。
書類審査だけで始められ、申立手数料は通常訴訟の半分です。請求額100万円なら、裁判所へ納める手数料は通常訴訟1万円に対し支払督促5,000円が目安です。
ただし、相手が受領後2週間以内に異議を出せば通常訴訟へ移ります。異議がなくても、自動的にお金が振り込まれるわけではありません。使う前に、相手の住所、争う可能性、差し押さえられる資産を確認することが重要です。
この記事の結論
- 支払督促は金銭などの請求に使え、請求額の上限はありません。
- 申立先は原則として相手の住所地を管轄する簡易裁判所で、住所が分からないと利用できません。
- 相手は支払督促を受け取ってから2週間以内に異議を申し立てられます。
- 異議がなければ、2週間経過後から30日以内に仮執行宣言を申し立てます。期限を過ぎると支払督促は失効します。
- 相手が支払わない場合、預金・給与などの強制執行は別に申し立てる必要があります。
支払督促とは
支払督促は、申立人の主張に基づいて簡易裁判所の書記官が審査し、相手へ支払いを命じる略式手続きです。最初の段階では法廷へ出向かず、詳細な証拠調べも行われません。
対象は金銭、有価証券、その他の代替物の給付請求です。建物の明渡し、登記名義の変更、物品そのものの返還などには使えません。
| 使える主な請求 | 使えない主な請求 |
|---|---|
| 貸金・立替金の返還 | 建物や部屋の明渡し |
| 売買代金・売掛金 | 不動産の所有権移転登記 |
| 給料・報酬・請負代金 | 特定の物品そのものの返還 |
| 家賃・地代・敷金・保証金 | 相手住所が分からない請求 |
| 修理代金などの未払い | 国外居住者への送達を要する請求 |
請求額の上限はありません。60万円以下に限られる少額訴訟と違い、100万円や500万円の請求でも制度上は利用できます。
ただし、相手が異議を出した後の通常訴訟は、請求額140万円以下なら簡易裁判所、140万円を超えるなら地方裁判所で進みます。
支払督促が向いている3条件
申立てが簡単でも、すべての未払いに向くわけではありません。次の3条件がそろうほど使いやすくなります。
- 住所:相手の現在住所が分かり、裁判所の書類を送達できる。
- 争い:契約、金額、支払期限に大きな争いがなく、相手が単に払っていない。
- 資産:勤務先、預金口座、売掛金、不動産など、支払いや差押えの可能性がある。
| 向いている | 別手続きを検討 |
|---|---|
| 借用書があり、返済期限を過ぎている | 貸した事実や金額から争われそう |
| 請求書を認めているが資金繰りで未払い | 相手の住所が不明 |
| 内容証明などの催告を無視している | 分割払いなど話し合いで解決したい |
| 相手に給与や預金がある見込み | 相手が無資力で回収先が見当たらない |
相手が全面的に争うと分かっているなら、最初から民事訴訟や民事調停を選ぶ方が早い場合があります。支払督促を経由しても、異議だけで通常訴訟へ移り、手数料の差額や証拠提出が必要になるためです。
「裁判所から送れば必ず払う」は期待しすぎです。
法的に勝てることと、実際に回収できることは別です。相手に差し押さえられる財産がなければ、仮執行宣言を得ても入金されないことがあります。
費用は通常訴訟の半分
裁判所へ納める申立手数料は、通常訴訟の半分です。手数料は収入印紙などで納め、別に送達費用や書類取得費がかかります。
| 請求額 | 支払督促の手数料目安 | 通常訴訟の手数料目安 |
|---|---|---|
| 10万円 | 500円 | 1,000円 |
| 50万円 | 2,500円 | 5,000円 |
| 100万円 | 5,000円 | 1万円 |
実際の費用は、申立時点の裁判所手数料表、送達費用、当事者数、申立方法で確認してください。相手が異議を出して訴訟へ移行すると、通常訴訟との差額手数料を追加で納めます。
弁護士や司法書士へ依頼すれば報酬も必要です。少額請求では、専門家費用を含めると回収額を上回る可能性があるため、自分で申立てるか法テラスなどで相談するかを比較します。
申立て前に証拠をそろえる
最初の審査で詳細な証拠提出が不要でも、相手が異議を出したら通常訴訟へ移ります。申立て前から、裁判で説明できる資料をそろえておくべきです。
- 借用書、契約書、注文書、請求書、納品書
- 銀行振込の記録、領収書
- メール、LINE、チャットで金額や返済を認めた記録
- 支払期限を示す合意
- 催告書、内容証明郵便、配達証明
- 一部返済があった場合の入金履歴
- 遅延損害金を請求する根拠と計算表
口頭で貸した場合も請求できないとは限りませんが、貸与だったのか贈与だったのか、返済期限はいつかを争われやすくなります。振込記録だけでなく、返す約束が分かるメッセージを保存します。
友人へお金を貸す前の借用書と利息のルールはこちらで解説しています。
法的トラブルの相談費用と法テラスの利用条件はこちらです。
支払督促の申立てから強制執行まで
申立先は原則として、相手方の住所地を管轄する簡易裁判所です。2026年5月21日以降は、書面や従来の督促手続オンラインシステムに加え、mintsによる電子申立ても案内されています。
- 相手の住所、請求根拠、金額、支払期限、回収可能性を確認します。
- 相手住所地を管轄する簡易裁判所へ支払督促を申し立てます。
- 裁判所書記官が審査し、相手へ支払督促を特別送達します。
- 相手は受領後2週間以内に督促異議を申し立てられます。
- 異議がなければ、2週間経過後から30日以内に仮執行宣言を申し立てます。
- 仮執行宣言付支払督促が送達されます。
- 支払いがなければ、預金・給与などの強制執行を別に申し立てます。
仮執行宣言の30日期限は重要です。支払督促の送達後2週間を過ぎた時点から申立てでき、その後30日以内に行わないと支払督促が失効します。
相手は仮執行宣言付支払督促を受け取った後も2週間以内に異議を出せます。異議が出たからといって自動的に強制執行が止まるとは限らず、相手側では強制執行停止の申立てが必要になる場合があります。
異議が出ると通常訴訟へ移る
支払督促の段階では、相手は詳しい反論理由を書かずに異議を出せます。適法な異議が出ると、支払督促はその効力を失い、請求額に応じて簡易裁判所または地方裁判所の通常訴訟へ移ります。
訴訟では、契約の成立、支払い義務、金額、期限を証拠で説明します。裁判所が申立人の近くではなく相手の住所地にある場合、遠方での対応が必要になることもあります。
| 相手の対応 | 次に起きること |
|---|---|
| 支払う | 回収を確認して手続き終了 |
| 何もしない | 期限内に仮執行宣言を申立て |
| 2週間以内に異議 | 通常訴訟へ移行 |
| 仮執行宣言後も払わない | 差押えなどの強制執行を検討 |
支払督促・少額訴訟・民事調停を比較
| 手続き | 向いている状況 | 主な注意点 |
|---|---|---|
| 支払督促 | 金額・契約に争いが少なく、相手住所が分かる | 異議だけで通常訴訟へ移る |
| 少額訴訟 | 60万円以下の金銭請求で早く判決を得たい | 原則1回審理、相手が通常訴訟を求める場合もある |
| 民事調停 | 分割払いなど話し合いで合意したい | 相手が応じなければ成立しない |
| 通常訴訟 | 事実関係や法的責任に争いがある | 証拠、時間、費用が必要 |
「相手は債務を認めているが払わない」なら支払督促、「60万円以下で証拠を一度に出したい」なら少額訴訟、「分割なら払える」なら民事調停という使い分けが目安です。
支払督促を受け取った側は放置しない
身に覚えのない請求でも、本物の裁判所から届いた支払督促を放置すると、仮執行宣言と強制執行へ進むおそれがあります。内容に納得できなければ、受領後2週間以内に同封の異議申立書を提出します。
一方、裁判所を装う架空請求もあります。封筒に書かれた連絡先へ直接電話せず、裁判所公式サイトで所在地と電話番号を調べ、本物か確認します。
本物なら無視せず期限内に異議、偽物なら相手へ連絡・送金しない。
判断できない場合は、公式サイトで裁判所の代表番号を調べて確認してください。
よくある質問
借用書がなくても申し立てられますか
申立て自体は可能な場合がありますが、相手が異議を出すと通常訴訟で貸した事実と返済合意を証明する必要があります。振込記録やメッセージをそろえてください。
相手の住所が分からなくても使えますか
使えません。裁判所が相手へ書類を送達するため、現在住所が必要です。公示送達で進める通常訴訟など、別の手続きを相談します。
支払督促を出せば自動で差し押さえられますか
自動ではありません。異議がなければ仮執行宣言を得て、なお支払いがない場合に預金や給与などの強制執行を別に申し立てます。
異議を出されたら負けですか
負けではなく、通常訴訟へ移ります。契約書、借用書、振込記録、メッセージなどで請求を立証します。
申立てより先に回収可能性を確認する
支払督促は低コストで始めやすい制度ですが、相手の住所が分からない、全面的に争われる、差し押さえられる資産がない場合は効率が落ちます。
住所・争い・資産の3点を確認し、証拠をそろえ、2週間と30日の期限をカレンダーへ入れてから申立てましょう。
記載内容は2026年7月15日時点の一般的な制度説明です。個別の時効、管轄、遅延損害金、証拠の評価は裁判所の手続案内や法律専門家へ確認してください。
参照:裁判所「支払督促」
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