所得税などの税制における項目で多く登場するのが「生計を一にする」「同一生計」という言葉です。扶養控除などでは納税者と生計を一にすることなどが条件とされており、様々な項目で判断材料となっています。
一方でこの「生計を一にする」「同一生計」という基準や定義は微妙にあいまいなところがあります。今回はそんな「生計を同一にする」という概念はどのような基準や定義、目安があるのかを検証していきたいと思います。
生計を一にするというのは税務上で重要
税制の要件の中によく出てくるのが「同一生計」「生計を一にする」という表現です。
- 親族の扶養控除
- 雑損控除
- 医療費控除
といったような控除を利用する場合“生計を一にする”場合に利用できるといったようなルールになっています。
生計を一にするとは?
生計を一にするというのは同居して生活費を負担しているような状態というのは非常にわかりやすいです。
タックスアンサーによると下記のように明示されています。[平成27年4月1日現在法令等]
「生計を一にする」とは、必ずしも同居を要件とするものではありません。例えば、勤務、修学、療養費等の都合上別居している場合であっても、余暇には起居を共にすることを常例としている場合や、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合には、「生計を一にする」ものとして取り扱われます。
なお、親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、「生計を一にする」ものとして取り扱われます。
明確な基準があるわけではないのですが、たとえ別居しているような場合であっても、「常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合には、「生計を一にする」ものとして取り扱われます」と書かれています。
つまり、仕送りをしていたり、病院の入院費用や介護費用などを負担しているというのであれば「生計を一にする」と判断できるということなのでしょう。
大学生などは別居(下宿)していてもまず生計は一と判断
たとえば大学生になって子供が下宿しているというケース。こちらはほぼ間違いなく生計を一にすると考えることができます。
ただし、仕送りや学費負担などを親は一切せずに、子供が働きながら学校に行っている勤労学生ケースなどは生計を一にするとはいえないでしょう。
所得のある同居家族と生計の関係
たとえば、親と子供が同居しており、子供は働いてはいるという場合を考えてみましょう。親元にいて同一の住居で起居を共にしているわけなので生計を一にすると判断するのが基本といえそうです。
もちろん、年収103万円を超えていれば、同居して生計を一にするとは認められても、税法上の扶養控除などは利用することはできません。一方で医療費控除などのように生計を一にすることを要件の税制等は利用可能です。
別居している親族で生計を一にするとの判断は?
「親に仕送りをしていれば別居でも扶養控除で節税できる」などでも紹介している通り、所定の条件を満たしていれば別居していたとしても自分の親を被扶養者(扶養される者)として、扶養控除を受けることが可能です。
その場合には生計を一にするというために、仕送りや療養費などを負担していることが必要になります。
なお、療養費などをあなたが負担しており、それによって生計を一にすると判断できる場合は別居親族の医療費であっても「医療費控除」などの形で申告して節税することも可能です。
お小遣いでも生計を一にするといえるか?
毎月1万円を両親に仕送りをして、その小額の仕送りをもって、自分は両親を扶養していると主張するのは無理筋でしょう。この金額では扶養というよりお小遣いレベルになってしまいます。
じゃあ、いくら仕送りを送れば「扶養している(生計を一にしている)」といえるのか?と言われると、個々の状況により異なるとしか言えません。明確な基準を税務署も提示しません。
たとえば、毎月30万円以上の仕送りをしていても両親が年金で十分に暮らせておりそのお金に手を付けていないような場合、扶養されていると判断はされないかもしれません。
逆に毎月5万円しか仕送りをしていなくても両親の収入が少なく、その仕送り(お金)で生活を成り立たせていると判断されれば生計を1にすると判断されるかもしれません。
重要なのは客観的に見て扶養されているかという証拠も重要
税務署や市区町村などから扶養の事実を確認したいと問い合わせを受けて、それに回答できるだけの明確な客観的事実が必要になります。
そうしたときに「盆と正月に帰ったときに生活費として現金を渡していた」と貴方が主張されてもそれを証明できるものがないと、否認される可能性もあります。
自分自身で作った記録などでもいいですが、できればより客観性のある記録が好ましいです。具体的には記録の残る支払方法(仕送り方法)です。
おすすめの方法は、両親が生活費の出し入れに使っている銀行口座に毎月お金を仕送りしておけば、生活費のためのお金を払っていると主張しやすいと思います。
一方で、同じ振込でも貯金用の銀行口座で、結果的に両親がそのお金に手を付けていなかったという場合、“仕送りがなくても生活できている=扶養されていない”と判断されるかもしれません。
重要なのは実態です。
別居両親への毎月の仕送りは定額振込が便利
別居する両親へ毎月、仕送りをするというのであれば、ネット銀行の「定額自動振り込みサービス」を利用すると便利です。
自動で送金をしてくれるので、送金忘れがありませんし、銀行振込として確実に毎月“記録”を残してくれますので、後日税務署等から確認があった時も、そうした事実を主張することができます。
住信SBIネット銀行の場合、毎月1回~15回は他行振込手数料も無料になるので、送金コストも小さくできます。今回のような仕送りに使いたいときに特に便利です。上手に活用してください。
以上、生計を一にする、同一生計の基準、定義、目安は何か?というお話でした。
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