最近、ネットバンクを中心として「仕組預金(しくみよきん)」と呼ばれるタイプの預金商品が増えています。「仕組定期預金」や「新型定期預金」などと呼ばれることもありますね。
ネットで簡単に申込ができ、預金金利が普通の定期預金などと比較して高いことなどから人気が高まっているようです。
ただ、「預金」という言葉から従来の普通預金、定期預金などと同じような感覚で投資(預金)をしてしまうと大変なことになってしまうリスクがあります。
今回はそんなリスクのある「仕組預金」という金融商品について解説していきます。
仕組預金は通常の預金とは性質が全く違う
仕組預金は「預金」という名前がついていますが、実際は預金にデリバティブ(金融派生商品)をプラスした預金となっています。何かしらの特約みたいなものを付けているわけです。
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上記の記事で定期預金という預金商品の仕組みを説明していますが、基本的にノーリスクな運用商品です。
それと比べて仕組預金(新型定期預金)というのは、預金者に対して何かしらの「制限」または「リスク」を負ってもらう内容になっており、その代り、普通の定期預金と比較して高い金利などが付くようになっているのです。
この制限やリスクの部分を理解しないで高金利ということだけで仕組預金に預金をすると思わぬ問題やリスクに遭遇する可能性もありますので預金者は注意する必要があります。
個人的には、多くの仕組預金は預金者にとってはメリットよりもデメリットの方が大きいように感じています。
以下では、実際に銀行で販売されている仕組預金(新型預金などと呼ばれる事もありますが同じです)を紹介しながら、それぞれのリスクや制限を詳しく見ていきます。
満期変動型の定期預金
SBI新生銀行のパワーステップアップ預金、楽天銀行の楽天ステップアップ預金、住信SBIネット銀行のプレーオフといった具合で様々な銀行で販売されています。マルチコーラブル預金(あるいはコーラブル預金)とも呼ばれます。
基本的な仕組みと特徴
定期預金の一種ですが、満期が数段階設定されています(たとえば3年と5年と10年)。
この満期は銀行側が自由に決めることができ、3年目で満期とする場合もあれば、5年にする場合もあれば、10年にする場合もあります。
通常は満期が延長されるほど、預金金利が高くなります。預金者の側から解約ができません(中途解約不可)。ちなみに、無理やり解約しようとすると大幅に元本が目減りすることになります。
満期変動型定期預金のメリットとリスク
最大のリスクは「途中解約ができない」ということです。普通の定期預金の場合は満期日前であっても解約はできます。もちろん途中解約をすることで元本が割れることもありません。しかしながら、このタイプの仕組み預金ではそれができません。もし、どうしても解約したいという場合には大きく元本割れすることを覚悟する必要があります。
一方のリターンとしては、普通の定期預金よりも金利が高いということです。途中解約できず、解約時期を一定の範囲で銀行側にゆだねるというリスクを負うことで、高い金利を得られるのがこのタイプの仕組み預金です。
原則として、満期まで持っていれば「元本割れ」することはありませんし、円建てであれば預金保険が適用されます(ただし、利息の上乗せ部分は保護対象外)。
本質は、単に預金者が解約することができないというリスクだけではなく、「将来の金利上昇によって得られる利益(機会利益)も同時に放棄」しています。
どういうことかというと、現在の定期預金の金利が仮に1%とします。一方この仕組み預金の金利が2%だとします。5年後金利が上昇して、普通の定期預金の金利が5%に上がったとします。
普通の定期預金なら金利が低い定期を解約して新しい金利の高い定期預金に預け替えるということが可能です。しかしながら、このタイプの預金は預金者の側から解約はできません。当然銀行側は満期を延長します(延長するほうが銀行にとって得だから)。
逆に、5年後の金利がさらに下落して、普通の定期預金の金利が0.5%にまで下がった場合、銀行はマルチコーラブル預金を早期満期にします(延長しないほうが銀行にとって得だから)。
つまり、マルチコーラブル預金の場合「将来の金利上昇によるリターンを放棄する」という見えないリスクも負っていることになります。
満期変動型の定期預金のまとめ
「金融商品を比較する3つのポイント」でも説明していますが、金融商品は「安全性」「収益性」「流動性(換金性)」という項目でリスクを評価できます。このタイプの仕組預金は安全性は他の定期預金と同様で、収益性は高い、一方で流動性(換金性)が大きく損なわれているタイプの金融商品だと認識しましょう。
このタイプの仕組み預金を提供している銀行
・SBI新生銀行
・楽天銀行
・住信SBIネット銀行 など
外貨特約型の仕組み預金(新型預金)
外貨特約型の定期預金は外貨の為替レートの変動によって元本の償還などに影響を与える預金です。前述の満期変動型は元本が減るリスク自体はなかったのですが、こちらのタイプの仕組み預金は為替レートの変動によっては元本割れを引き起こすリスクがある預金です。
住信SBIネット銀行が提供する「コイントス」などがその代表です。
基本的な仕組みと特徴
円定期預金として預け入れをしますが、あらかじめ指定してある外貨が指定された日に指定された為替レート(以下特約レート)よりも円高であった場合、満期時には特約レートで計算された指定外貨で払い戻されるという預金です。(特約レートよりも円安の場合には円貨で払い戻し)
一方、普通の円定期預金、外貨定期預金よりもかなり高い水準となっています。
外貨特約型の仕組み預金(新型預金)のメリットとリスク
メリットとしては金利の高さが挙げられます。その一方で最初にも書いたとおり「元本割れのリスク」がある預金です。
たとえば100万円をこのタイプの仕組み預金に預けたとします。指定通貨が米ドルで、特約レートが1ドル95円だったとします。
このとき、1ドルが85円にまで円高になった場合には、特約レートより円高ですので、米ドルで償還されます。このときは100万円÷特約レート(1ドル95円)なので、約10500ドル+預金金利が償還されます。
一方、現在の為替レートは1ドル85円ですから、すぐに円に戻すとすると89万2千円にしかなりません。預金したのは100万円ですから11万円も損をしてしまうことになります。
この預金の本質としてはこれは 「外貨預金の損失可能性だけを負う代わりに金利が高い預金」であるという点です。普通外貨預金をする場合、円高になれば損をしますが、円安になれば得をします。
このタイプの仕組み預金は円高になれば損をしますが、円安になっても元本は増えません。その代り高い金利を受け取ることができるという形になっているです。
詳しく説明するとこれは外貨のコールオプションを売るというオプションが設定されていることになります。コールオプションを売ったプレミアム分高金利で運用されますが、為替レートが一定を下回ると為替リスクをそのまま追うことになります。
(参考:オプション取引とは)
外貨特約型の仕組み預金(新型預金)のまとめ
このタイプの仕組預金は、為替リスクというリスクを負っている代わりに収益性(高い金利)を確保している預金となります。外貨預金との違いは短期間(通常は数カ月程度)となっているので、その都度結果がでてしまうという点でしょうか。外貨預金の場合、為替が不利な方向(円高)に動いた場合でも「そのまま保有し続ける」ということができますが、このタイプの仕組預金は結果が出てしまうという点も不利な点でしょうか。
高い金利は期待できますが、負っているリスクは大きい仕組預金です。
このタイプの仕組み預金を提供している銀行
・楽天銀行
・住信SBIネット銀行 など
仕組預金はどんなところにリスクが潜んでいるかを理解する
今のところ、ネットバンクや銀行などで売られている仕組預金は上記の2タイプです。
いずれにしても、同じ仕組預金でも商品性は全く違います。
それぞれ、どのようなリスクがあるのか、自分の運用スタイルとそのリスクは見合っているのかをしっかりと判断するようにしてください。預金した後でそんなリスクがあることは聞いていないと言っても後の祭りです。
これらの金融商品は一般的な投資の世界においてはかなり“上級者向け”の商品となっています。
個人的にはこうした仕組預金は、相当資金力に余裕がある人やここまで紹介したような仕組みを理解したうえで、他の金融商品と組み合わせて適切にリスク管理をできる人が利用するものだと思っています。
相応のリスクがある商品であるということをしっかりと理解した上で購入(預金)するようにしてください。
以上、リスクのある仕組預金(新型預金)の怖さをまとめてみました。
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