ネット証券の中でも業界1位と2位のSBI証券と楽天証券がそれぞれ投資信託の「定期売却サービス」を開始しています。その名の通り、保有している投資信託を定期的に定額で売却してくれるサービスとなっています。
積立投資の逆ですね。たとえば、500万円保有している投資信託を毎月5万円ずつ定期的に売却していく感じです。
若い人向けではなく、高齢者の方向けのサービスです。これまで資産運用で育ててきた果実を回収するためのサービスといそうです。今回はこの定期売却サービスの特徴や活用法を紹介します。
投資・資産運用で育てた資産を取り崩すサービス
資産運用には当然様々な目的があるはずです。
その中でも注目されているものの一つが「老後資金」かもしれません。老後には2000万円の資産が必要などと話題になったこともありますが、そんな風に運用で貯めた資金は最終的には取り崩し日々の生活費に充当する日がやってきます。
投資信託の定期売却サービスというのはこうした資産の取り崩しを手間なく確実に進めていくことができるサービスです。
- 保有する投資信託の中から売りたい投信を選ぶ
- 定期売却を設定する
- 毎月売却が始まる
- 指定日に売却代金を受け取ることができる
投資信託としての運用は続けたいけれども、一定額の現金(キャッシュ)が欲しいという方に向いていますね。現役時代に投資信託の積立投資をしてきた人がセカンドライフを楽しむために運用してきた資産を徐々に取り崩す感じです。
資産運用で貯めるお金というのは最終的には使うものです。ただ、貯めたお金を老後の生活に使うという場合、いくらくらい取り崩したらいいのかを判断するのは難しいです。
それを自動的にシステム化できるというのが、この定期売却サービスの良いところです。
上のイメージは楽天証券の提供するイメージですが、資産形成時期ではなく、サラリーが無くなって自分の資産で生活していく時期の資産取り崩しの為の手段ですね。
取り崩しを始めても運用を続けられるというのが強みでありリスク
この資産活用期(蓄えた資産を取り崩して行く時期)において、こうした定期売却サービスはシステム的には便利です。
取り崩しを始めても残っている部分は継続して運用されるので運用リターンによって資産の目減りも抑えられます。
たとえば1000万円を毎月5万円ずつ取り崩すとしましょう。これを一旦現金化(売却)したうえでそのお金を引き出すという方法だと、単純に200か月(16年と8か月)で資金は底をつきます。一方で年利3%で運用を続けてながら定期売却サービスで取り崩しをした場合、資産がゼロになるのは277か月(23年と1か月)もちます。この差は運用益に相当する部分です。
これが取り崩しの時期でも運用を続けるメリットです。
一方でその運用するという部分のリスクもあります。リーマンショックのような大規模な経済変動などで運用資産が大きくダメージを受ける可能性があります。相場が暴落した状態で取り崩したお金は元に戻すのに非常に大きなリターンが必要になります。
取り崩し期でも運用を続ける意味はありますが、こうしたリスクがある点も理解した上で、積極的なリスクを取るファンドよりもできるだけ値動きが小さい投信にしておくというのも、守るべき老後資産という観点からは重要ですね。
証券会社各社の定期売却サービス
証券会社では大手ネット証券のSBI証券が昔からサービスを提供してきましたが、2019年末に楽天証券も導入しました。後から導入しただけあって、楽天証券のサービスの方が洗練されています。
SBI証券の投資信託定期売却サービス
SBI証券に預けている投資信託を毎月定額で売却して現金化することができるサービスとなっています。「毎月」「奇数月」「偶数月」の3つから選択でき、希望があれば年2回の「ボーナス月」の設定も可能となっています。売却方法は定額のみとなっています。
楽天証券の投信定期売却サービス
2019年12月29日より開始しています。すべての積立投資が可能な投資信託が対象です。特定口座はもちろん、NISA、つみたてNISAの口座でも利用することができます。
- 金額指定(1000円以上1円単位)
- 定率指定(0.1%以上0.1%単位)
- 期間指定(最終受取年月日を指定)
売却方法に定額以外の方法があるのはいいですね。
特に定率指定は相場の変動による資産目減りを最小限にできます。
定額で売却していくと相場が不調な時も大きな割合で引出をすることになり、想定よりも資産を早く食いつぶしてしまう可能性があります。資産形成器には定額で積み立てるドルコスト平均法は有効ですが、取り崩し期には逆に作用するわけです。
特に、取り崩し時期の初期に相場のマイナスを食らうと、そのマイナスの時期に取り崩した資産をその後の上昇でも回復できません。これを収益率配列のリスクといいます。
そうした時は定率での取り崩しの方が、下がった時は少ししか売らないということになるので、有利です。
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