ROE(株主資本利益率)は企業分析でよく利用される指標の一つです。経営者の成績表といわれることもあるもので、会社のオーナー(所有者)である株主から預かった資金(資本金)をどの程度、有効に活用できているのか?リターンを生んでいるのか?ということをはかる指標となります。
PERやPBRといった株価指標とは違い、直接の株価を見るための指標ではありません。ただし、その会社を評価するときにはよく用いられます。スマートベータ指数の一つであるJPX400はこのROEに注目して作られた新型の株価指数です。
今回はそんなROEの計算方法や分析方法、投資への活用についてまとめていきたいと思います。
ROE(株主資本利益率)の計算方法
ROE(Return On Equity)は株主から預かっているお金(資本金)に対してどのくらいの利益をあげているのかを計算する指標です。まず基本の計算方法は下記のとおりです。
ROE=当期純利益÷純資産 (%)
ROE=EPS÷BPS (%)
当期純利益とは?
当期純利益というのは1年間の事業年度において収入から諸経費等、税金等を差し引いて残った最終的な利益となります。一般的に利益は以下の三種類がありますが、当期純利益は完全な最終利益を指します。
営業利益 | 売上から原価や人件費・家賃などを差し引いた利益。本業の稼ぐ力を示す利益になります。 |
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経常利益 | 営業利益に金利収入などをプラスし、借入などで払った金利を差し引いたものになります。本業が良くても、借金負担が大きい会社などは利益が小さくなります。 |
当期純利益 | 経常利益に、特別利益を加算し、特別損失などの臨時の収支を差し引いたもの。一般的に当期純利益という場合は法人税などのもうけに対する税金も差し引く。税金をこう慮しない場合は「税引き前当期純利益」と表記することが多い |
なお、当期純利益(税引き後)を利用する理由としては、ROEは投資家から見た会社の収益性を見る指標なので投資家への配当金の原資となる当期純利益を利用するわけです。
純資産とは?
純資産というのは単純に言えば、持っているお金(資産)から返済しなければならないお金(負債・借金)を差し引いたものになります。
<資産>
・現金
・預金
・不動産
・工場
・商品(販売前)
<負債>
・銀行からの借り入れ
・取引先への未払い金
・従業員に対する退職金の未払い部分
資産-負債=純資産
こんな感じになります。
ROEで何がわかる?
世界的にはROEが10%を超えていれば良い企業、15%をこえてくると優良企業だといわれています。投資家から見れば自分が会社に投資した資金が10%以上の利回りで運用できているということになります。
ただし、米国やヨーロッパの企業と違って日本企業はROEが低いとされています。ただし、スマートベータとしてJPX400が新しく採用されるように、日本企業の中でもROEを経営目標の一つとしてあげる会社が増えてきています。
ROEの計算式から考えるROEを高める方法
ROEの計算式は「当期利益÷純資産」としていますが、これを分解することができます。
=当期売上高利益率(当期利益÷売上高)×総資本回転率(売上高÷総資産)×財務レバレッジ(総資産÷自己資本)
ここからわかることとしてROEを高めるには
- 利益率を高める
- 効率性を高める
- 負債(借金)を活用する
という三つの要素が関連することになります。
財務レバレッジの注意点。ハイレバ企業はリスクも内包
ROEの項目分解において、(3)の負債の活用については少し注意が必要です。ROEを高めるにはできるだけ多くの借金をして会社の規模を大きくすることによって改善されます。
「利益率>借入金利」という状況であれば、レバレッジ効果によってROEにとってプラスの働きをします。その一方で「利益率<借入金利」となればこのレバレッジは逆方向に働きます。好業績の時はいいけど、環境が悪化して利益率が下がる(あるいは金利が利益率を超えて上がる)といったことになると、とたんにROEは悪化することになります。
ROEが株式市場(株価)に与える影響と投資戦略
まず、ROE自体は株価の割高や割安を示す指標ではありません。
ROEが高い会社は優良な会社であることは間違いありませんが、そうした会社はそもそも株式市場において高く評価されていることが多いです。そのため、投資戦略的に考えるのであれば、投資対象としてROEを基準にスクリーニング(絞り込み)をしたうえで、PERやPBRなどの株価の割安・割高を判断する指標も一緒に使うことが重要といえそうです。
以上、ROE(株主資本利益率)についてまとめてみました。
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