公的年金制度(国民年金や厚生年金)等に関する不安をお持ちの方も多く、個人で加入する個人年金保険への加入を検討している方もいらっしゃるかと思います。
老後の年金問題を考えると国民年金・厚生年金といった公的年金だけでは不足することは明らかで自助努力も必要となる時代になっています。
個人年金保険は、生命保険会社などを通じて加入する年金(私的年金)で、一定期間保険料を支払うことで、契約時に決めた年齢から一定期間(または一生涯)にわたり年金が受け取れる貯蓄型の保険です。
回はこんな個人年金という仕組みの説明や、実際に保険会社で販売されている個人年金のそれぞれのタイプ別の特徴を徹底比較していきます。
個人年金は老後の生存リスクに対応する保険
通常、保険というのは死亡や事故といった、万が一に備えるものですよね?
一方の年金保険というのは、これとは逆に生存リスク(長生きするリスク)にそなえるための保険となっています。長生きするというのは喜ばしいことなのですが、長生きをすればするほど、お金も必要になります。
その長生きリスクに備えるための保険が「年金保険」なのです。
我が国においては公的年金制度があり、現役時代の働き方によって国民年金や厚生年金といった年金に加入していたはずで、加入していた公的年金に応じて終身で年金を受け取ることができます。
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一方で、こうした公的年金制度があったとしても、一般に老後は貯蓄を取り崩して生活するというのが一般的です。こうした点を考えると、長生きに対しては公的年金以外にも金銭的な備えが必要となります。
そうした備えの一つが個人年金保険(私的年金)となるわけです。
個人年金保険のメリット、デメリット
個人年金保険で老後の備えをするメリット、デメリットを紹介していきます。
まずは、メリット部分です。
- 預貯金と比較すると利回りは高くなる
- 個人年金保険料の所得控除の特典がある
預貯金との比較は「貯蓄型保険と定期預金を比較!お金を貯めるならどっちが有利?」の記事でも商品性がそもそも違うのだから単純比較はできないと紹介しましたが、利回りを基準に考えるのであれば預金より有利です。
また、個人年金の場合、所得控除(個人年金保険料控除)が利用でき、年末調整や確定申告で支払った保険料の一部が税還付されます。税制上のメリットがある点は見逃せませんね。
一方で、個人年金保険には注意しておくべきデメリットもあります。
- 保険会社の破綻リスク(破綻時は最悪90%まで保証)
- 途中解約時には元本割れリスクがある
- 確定型の場合はインフレリスク、変動型の場合は価格変動リスクを負う
このような点があります。保険会社が破綻した場合、生命保険契約者保護機構によって最低でも90%までの部分は保護されていますが、全額ではありません。
また、貯蓄型保険全般に言えることですが、途中解約時には元本割れとなる可能性が高く、解約できないリスクがあります。
最後の定額年金の場合はインフレリスク、変額年金の場合は価格変動リスクを負うことになります。この点に関しては後述します。
個人年金保険の種類と特徴
個人年金保険は各保険会社から様々な商品が販売されていますが、大きく「年金を受け取れる期間」と「年金として受け取れる年金額」で商品性が異なります。
年金として受け取れる期間で個人年金を選ぶ
まずは、期間ですが、大きく「有期年金」「確定年金」「終身年金」に分類することができますが、派生する形で色々なタイプの個人年金があります。
これは年金を受け取ることができる期間の違いとなります。
有期年金
個人年金を受け取る期間があらかじめ決まっているタイプのもの。10年、15年が一般的。ただし、被保険者が生存している場合に限ります。万が一途中でなくなった場合は期間中であっても残りの年金は受け取ることができません。被保険者が死亡した場合は年金が打ち切られますが、確定年金と比較するとひと月当たりの受け取り年金額は大きくなります。
- 配偶者がいない方
- 生きている間だけ年金をもらえればいいと考えている方
- 別に十分な死亡保障がある方
確定年金
有期年金タイプと同様に10年、15年といった期間年金を受け取れるというものです。ただし、年金額は被保険者の生死を問わず支払われます。
被保険者が死亡した場合は継続して遺族が年金を受け取る方法や、年金現価(残りの年金を現在価値に直した額で減額された額)を一時金として受け取る方法が選択できます。
- 生存保障だけではなく遺族の保障(死亡保障)としても年金を考えている方
- 払った保険料を絶対に無駄にしたくないという方
終身年金
終身年金は被保険者が生存している限り一生涯にわたって年金を受け取ることができます。ただし、被保険者が死亡した場合はその時点で個人年金の給付は打ち切りとなります。公的年金制度はこちらの終身年金制度となります。
長生きリスクを保険会社が負うことになるので、ひと月当たりの受け取れる年金額は年齢等によっても異なりますが、低くなります。保険会社にとってリスクも大きいため、このタイプの個人年金保険はあまり販売されていません。
- 個人年金を一生涯の保障として考えている方
保証期間付有期年金
保証期間は被保険者の生死にかかわらず個人年金を支払う期間があり、その後も生存していた場合は有期の年金受取期間があるという年金保険です。
期間が同様なら確定年金よりは毎月受け取れる金額が大きい。
- 家族への死亡保障がほしいという方
保証期間付終身年金
保証期間付きで、当該期間なら死亡した場合でも遺族は一定の保障(年金や一時金受け取り)ができるという年金保険です。
それを超えた場合は被保険者が生存している限りで年金を受け取ることができます。個人年金として受け取ることができる金額はかなり小さくなる。
- 自分の生存保障としては一生涯でさらに家族への死亡保障もほしいという方
夫婦年金タイプ
夫婦のいずれかが生存している場合に年金を支払うという個人年金。たとえば夫が被保険者となっている年金保険だが、夫が死亡した場合、妻への年金が無くなってしまうのは困るというケースに活用できる、いずれかが生存している場合に、終身年金が支払われるというものです。
ただし、被保険者と配偶者との年齢差が大きい場合にはかなり保険料が高額となる場合もあるので注意が必要です。
- 夫婦それぞれの生存保障がほしいという方
どれタイプが一番お得というものはないです。年金保険というものは原則として生存保障(生存している場合に給付が受けられる)というもので、これだけを目的とするなら「有期年金」「終身年金」が基本です。
これに加えて、自分が死亡した時に配偶者や家族にも保障がほしいという場合には死亡保障として遺族への個人年金の引き継ぎや一時金としての給付が可能となります。
ただし、保障を付ければ付けるほど、月々で受け取れることができる年金額は減少してしまいます。他に終身保険などで死亡保障を設定している(十分な死亡保障がある)というのであれば生存保証部分を重視、遺族にも保障を残したいなら死亡保障も付いたものを選択するようにすると良いでしょう。
年金として受け取れる金額は「定額年金(確定年金)」「変額年金」に分類
個人年金は「定額年金」と「変額年金」に分類されます。この定額とか変額という区分は個人年金の保険を運用する際に生じるリスクを誰が負担するのか?という点に違いがあります。
定額年金の場合、当初定めている予定利率(予定利回り)が保証されており将来受け取ることができる年金額は保険会社が保証します。
一方の変額年金の場合このリスクは「契約者」が負うことになります。運用がうまくいけば受け取れる年金額が増える可能性がある一方で、払込をした額よりも低くなる可能性もあるわけです。
安定した年金額を望むのであれば定額年金を、逆にリスクを取ってでも増やしたいと考えているのであれば変額年金が魅力となるかもしれません。
ただし、変額年金は相場の急変等によって大きなマイナスを負うケースもあったということを忘れてはいけません。過去には虎の子の退職金を変額個人年金にあてて、多くの退職金を失ってしまったというようなケースもありました。
ただ単に運用するというのであれば、個別に投資信託を買ったり株式を買ったりすることだってできるわけです。年金という形で運用するから安心ではんなく、個人(契約者)が運用リスクを負う変額個人年金の場合は積極的に株や債券などを買うとの何ら変わりがないという点を理解することが大切です。
定額年金(確定年金)はインフレリスクを負っている
運用利回りを保険会社が保証する確定年金タイプですが、価格変動リスクはありませんが、インフレリスクを負うことになります。運用期間中にインフレ(通貨価値の下落)が進むと、固定利率で運用される確定年金タイプは実質的な目減りとなるリスクがあるわけです。
特に低金利時代に結んだ年金保険契約の場合、こうしたインフレリスクは将来の大きくなる可能性があります。
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通貨による違いを比較(外貨建て年金)
また、個人年金は円で運用されるものが一般的ですが、中には「外貨」で運用されるものもあります。払込年金保険料をドルやユーロといった外貨にかえて運用するタイプ個人年金保険です。
この場合の注意点は外貨の為替リスクを負うことになるという点です。
これは定額個人年金タイプ(外貨建て定額個人年金)、変額個人年金タイプのどちらにもあります。
定額年金タイプなら、外貨ベースでの元本+予定利率は保証されますが、為替レートが円高に進行した場合、実際に受け取る年金額が少なくなるリスクがあるという点を理解しておく必要があります。
また、一般にこうした外貨建ての保険はコストが高くリスク回避もやりにくいという関係があり、個人的にはあまりお勧めしません。
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ゆとりある老後に必要なお金は自分で用意する必要がある
総務省が実施した家計調査によると高齢者の無職夫婦世帯では、実収入を消費支出が上回る状態となっているそうです。つまり、老後には貯蓄を切り崩さなければ生活ができない状態となっているということです。
2019年に金融庁が「人生100年時代を見据えた資産運用を促す報告書」の中で老後には公的年金以外に2000万円の備えが必要とう報告書をまとめて騒ぎになりました。
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ただ、これはある意味で正しいでしょう。
公的年金制度だけで豊かな老後を送れるという時代は終わっています。今回紹介した個人年金保険はその老後を豊かにするために保険という仕組みを活用したものです。
たとえば、公的年金(国民年金+厚生年金)では月に5万円不足するというのであれば、終身年金で月5万円の年金を確保してあげることが出れば貯蓄の取り崩しを心配する必要はなくなります。
年金(保険)のよさというのは、極端な事態に対応しやすいという点です。
このようなリスクには預貯金ではいつか対応できなくなる場合があります。
そのような極端な場合でも終身年金のような形で備えておけば、100歳、110歳といった長生きができた場合でもお金の心配をする必要が無くなります(年金額にもよりますが)。
これらの特徴を踏まえた上で、年金や保険でカバーする老後資金と、預貯金や投資などでカバーする老後資金というのを使い分けて老後のプランを考えてはいかがでしょうか?
なお、最近は個人年金保険の一つとしてiDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)という運用手段も登場しています。iDeCoと個人年金保険の違いについては以下の記事で比較していますので、合わせてご一読ください。
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