ANAやJALの国内線でのオーバーブッキングの発生とフレックストラベラー制度の謝礼
航空会社は航空券の予約においては「ある程度のキャンセル」を見込んで予約を受け付けています。つまり、実際の定員よりも多くの予約を受け付けることがあるというわけです。これをオーバーブッキング(過剰予約)と呼びます。
計算通りであればオーバーブッキング状態でもキャンセルが発生することで問題なく予約者は全員搭乗できるのですが、計算違いで多くの乗客が搭乗する場合、搭乗できない人が発生することがあります。
そうした場合では搭乗できない人が発生するわけです。ANAやJALといった国内線航空会社では「フレックストラベラー制度」として、オーバーブッキングによって搭乗できない人に対する取扱い(補償等)が定められています。
航空会社のオーバーブッキングの仕組みと発生する理由
オーバーブッキングは冒頭でも紹介したように、航空会社が定員を超えて予約を受け付けることによって発生します。
なぜそんなことをするのか?というと、そうするほうが航空会社にとっては収益性の向上につながるからです。
航空業界に限ったことではありませんが、予約をした人全員が来るわけではありません。ノーショウと呼ばれる無断キャンセル(当日キャンセル)などは一定数発生します。
航空会社はそうしたキャンセルを見越すことで定員よりも多くの予約を受け付けるわけです。後述するようにオーバーブッキングで搭乗できない顧客に対しては一定の補償(協力金の支払い)を行う必要がありますが、それが発生したとしてもトータルでは過剰予約を受け付けるほうが航空会社的には儲かるわけです。
オーバーブッキングが発生する確率
このデータは国土交通省で取りまとめられています。
2017年頃と比べると全体的な不足座席数は減少傾向にありますが、2024年(令和5年度)1〜3月の期間のデータを見ると、依然として一定数のオーバーブッキングが発生していることがわかります。
ANA(全日空)グループでは739席、JAL(日本航空)グループでは50席の不足が発生しています。また、近年はスターフライヤーなど特定の航空会社で不足座席数が多く発生するケースも見られます。
また、自主協力(自発的に便変更に応じてくれた人)だけでなく、最終的に搭乗拒否となっているケースもあります。これらの人は、その便に搭乗したいという意思表示をしているにも関わらず搭乗できなかったということになります。
| 航空会社 | 不足座席数 | 自主協力 | 搭乗拒否 |
|---|---|---|---|
| ANA(ANAウイングス含む) | 739 | 658 | 81 |
| スターフライヤー | 296 | 296 | 0 |
| JAL(関連含む) | 50 | 45 | 5 |
| ソラシドエア | 11 | 7 | 4 |
| AIRDO | 5 | 5 | 0 |
| スカイマーク | 4 | 4 | 0 |
| 琉球エアーコミューター | 2 | 2 | 0 |
| フジドリームエアラインズ | 0 | 0 | 0 |
| 日本トランスオーシャン | 0 | 0 | 0 |
※不足座席数=搭乗手続きに来た予約客の数-提供座席数(2024年1〜3月実績)
オーバーブッキングによる搭乗拒否を防ぐには
不足座席が生じた場合、「だれか乗れない人」が出てくるわけです。後述しますが、航空会社は自主的に便を変更してくれる人を募集します。それでオーバーブッキング状態が解消されればいいですが、それでも不足する場合は航空会社の判断によって搭乗できない人が選ばれることになります(搭乗拒否)。
海外の話ですが、ユナイテッド航空で搭乗しているお客さんを引きずりおろすというショッキングな出来事がありました。あれは極端ですが、一般的には以下のような条件に該当する人が選ばれやすいです。
- 搭乗(チェックイン)する時間帯がギリギリ
- 安い航空運賃で搭乗している
- 荷物を預けていない
言い換えれば、オーバーブッキング状態になっていそうで、絶対にその時間の飛行機に搭乗したい人は条件を満たさないようにすればよいです。
オンラインチェックインと早期座席指定を活用する
搭乗拒否を避けるために最も有効な対策は、事前のオンラインチェックインと早期の座席指定です。オンラインチェックインが可能になり次第(出発24〜48時間前など)速やかに手続きを済ませておくことで、航空会社のシステム上で「確定乗客」として登録され、搭乗拒否の対象になりにくくなります。LCCなどで座席指定が有料の場合でも、絶対に遅れられない予定がある場合は指定しておく価値があります。
2026年のANA国内線新運賃による影響
ANAは2026年5月19日搭乗分より国内線の運賃体系をリニューアルし、座席指定不可の最安値運賃を新設しました。このタイプの運賃では、座席が未指定のままチェックイン時に割り当てとなるため、オーバーブッキングが発生した際に搭乗拒否の対象となるリスクが相対的に高くなると考えられます。価格を優先するか、確実な予定を優先するかを考えて運賃を選ぶことが大切です。
実は美味しい?オーバーブッキングによる協力金
オーバーブッキングによって搭乗できない場合、フレックストラベラー制度により、ANAやJALでは便変更(通常は次の便への振り替え)に協力してくれる人を募集しています。
無償のボランティアではなく、一定の協力金が支払われるようになっているので、急いでいない人にとっては実はオーバーブッキングはおいしかったりします。
次の便への振り替えをしても問題ない場合、という条件付きとはなりますが、謝礼(協力金)はかなり魅力的です。
お金(現金)ならその場で受け取ることができます。マイルの場合は2週間後を目途に加算されます。お得度でいえば、マイルの方が高い傾向にあります。
ANAのフレックストラベラー制度
ご予約をお持ちのお客様の数が座席数を上回り、座席が不足した場合、当該便を予約済みのお客様の中から、ANAが提示する協力金額および代替交通手段に同意され、自主的に便の変更等についてご了承いただける方を募り、ご協力いただいたお客様に対して、協力金のお支払いおよび代替交通手段の提供を行う制度です。
- 当日便への振り替え:1万円または10,000マイル(または10,000 ANA SKYコイン)
- 翌日便への振り替え:2万円または15,000マイル
※出発が翌日以降になり、宿泊手配が必要な場合には、「協力金」に加えて宿泊費および宿泊施設と空港間の交通費をANAが負担。
JALのフレックストラベラー制度
ご予約をお持ちでも、さまざまなご都合により空港にお越しになれないお客さまもいらっしゃることから、一部の便において座席数よりも多くの予約を承ることがございます。予約数が座席数を上回り、座席が不足した場合に、当該便をご予約済みのお客さまの中から自主的に便の変更等についてご了承いただける方を募り、ご協力いただいたお客さまに対して、協力金またはマイルのお支払いおよび代替交通手段の提供を行う制度です。
- 当日便への振り替え:1万円または7,500マイル
- 翌日便への振り替え:2万円または15,000マイル
※翌日以降となる場合は、宿泊費、宿泊施設と空港間の交通費などを負担します。当該航空券の払い戻しをご希望の場合には、所定の手数料を免除のうえ、当該航空券を払い戻しいたします。その際も協力金または協力マイルをお支払いいたします。
オーバーブッキングでフレックストラベラーに応募する方法
座席不足が発生している場合、搭乗口でアナウンスされ、協力を呼びかけられます。また、ホワイトボードで、座席不足に対する協力が呼びかけられます。
その呼びかけに対して応募すると告げれば受け付けてくれます。
ただし、この段階で確定ではありません。その時点ではオーバーブッキング状態であっても、最終的にはノーショウが発生して座席不足が解消されることも少なくないからです。
また、座席不足が生じたとしても他に応募している人がいた場合は、必ずしも自分が選ばれるとは限りません。基本的には申し出順とされていますが、手荷物を預けている場合は優先順位が下がります(出すのが大変なので)。
参考:海外(国際線)のオーバーブッキング補償との違い
EU(欧州)や米国発着の国際線では、オーバーブッキングによる搭乗拒否への補償が法律で義務化されています。たとえばEU規則(EC261/2004)では、飛行距離に応じて250〜600ユーロの補償が定められており、日本のフレックストラベラー制度のような「任意の協力金」とは性質が異なります。日本の国内線や日本発着の国際線ではこうした法的義務はなく、あくまで航空会社の自主基準での補償になる点は覚えておきましょう。
オーバーブッキングを狙って予約するのはアリ?
アリといえばアリなのでしょうが、実際に狙うのは難しいと思います。前述のように最終的に不足座席が発生するのは1万人に対して数席程度です。飛行機の定員を350と見た場合、満席計算でもかなり低い確率になります。
航空会社としてもできるだけ満席を狙つつも、座席不足は避けるように計算して予約を受け付けるわけですから、そうそう狙えるものではありません。
一般的には、お盆や年末年始、週末といったタイミングの方がオーバーブッキングが発生しやすいといわれています。
そう簡単に狙えるものではありませんが、もしも次便への振り替えを募集しているようなときは応募してみるのも一つといえるかもしれませんね。
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