年金は本当に「繰下げ」がお得?資産がある人ほど繰上げ受給を検討してもよい理由
老齢年金は原則65歳から受給できますが、60歳から65歳前までに早めて受け取る「繰上げ受給」、66歳以後75歳まで遅らせる「繰下げ受給」があります。ここでは、それぞれの特徴と「損益分岐点」について、資産運用の視点も交えながら詳しく解説します。
年金の繰上げ受給と繰下げ受給の基礎知識
日本年金機構によると、繰上げは請求時期に応じて年金額が減額され、その減額率は一生変わりません。昭和37年4月2日以降生まれの人は、1か月あたり0.4%、60歳まで繰り上げると最大で24%の減額となります。つまり、60歳で受給を開始すると、本来受け取れる額の76%を生涯にわたって受け取ることになります。
一方、繰下げ受給は66歳以後75歳まで可能で、1か月あたり0.7%増額され、この増額率も一生変わりません。70歳まで繰り下げると42%増、75歳まで繰り下げると最大84%増となります。なお、老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に繰り下げることも可能です。
「繰下げみなし増額制度」について
2023年4月以降、75歳を超えてから年金を請求しても、請求日の5年前時点に繰り下げたとみなして増額を受けられる特例的な制度が始まりました。たとえば80歳で請求した場合でも、75歳時点の増額率(84%増)が適用されます。手続きを忘れがちな人や長期入院等で請求が遅れた場合に救済となる重要な制度です。
名目ベースの損益分岐点はどうなる?
まず、税金・社会保険料・運用利回りを無視した単純計算での損益分岐点はおおむね次の通りです。
| 比較 | 受給額の前提 | 後から受け取る方が有利になる年齢 |
|---|---|---|
| 60歳繰上げ vs 65歳通常 | 60歳受給は76% | 約80歳10か月 |
| 65歳通常 vs 70歳繰下げ | 70歳受給は142% | 約81歳11か月 |
| 65歳通常 vs 75歳繰下げ | 75歳受給は184% | 約86歳11か月 |
| 60歳繰上げ vs 70歳繰下げ | 60歳76%、70歳142% | 約81歳6か月 |
| 60歳繰上げ vs 75歳繰下げ | 60歳76%、75歳184% | 約85歳7か月 |
この計算だけを見ると、長生きするほど繰下げが有利になります。特に75歳まで繰り下げた場合、87歳前後まで生きれば65歳受給より総受取額が大きくなります。
しかし、ここに「早く受け取ったお金を運用できる」という視点を入れると、結果は大きく変わってきます。
運用利回りを考慮すると「早く受け取る」優位性が増す
年金を早く受け取れば、その分を生活費に充てて手元資産の取り崩しを遅らせることができます。また、浮いた手元資産をNISAなどで運用に回すことも可能です。これは実質的に「早く受け取ることによる時間価値」と言えます。
年率の運用利回りを設定して現在価値ベースで比較すると、損益分岐点は以下の表のように後ろにずれます。
| 運用利回り | 60歳繰上げ vs 65歳通常 | 65歳通常 vs 70歳繰下げ | 65歳通常 vs 75歳繰下げ |
|---|---|---|---|
| 0% | 約80歳10か月 | 約81歳11か月 | 約86歳11か月 |
| 1% | 約82歳8か月 | 約83歳0か月 | 約88歳5か月 |
| 2% | 約85歳3か月 | 約84歳5か月 | 約90歳4か月 |
| 3% | 約88歳9か月 | 約86歳2か月 | 約92歳10か月 |
| 4% | 約94歳7か月 | 約88歳6か月 | 約96歳8か月 |
| 5% | 約107歳8か月 | 約92歳0か月 | 約103歳4か月 |
シミュレーションの前提に関する注意点
上記の表は「早く受け取った年金の全額を一定利回りで複利運用し続ける」という前提で計算しています。実際には全額を運用に回すことは難しく、生活費に充当した分は運用に回せないため、個人のライフスタイルによって実際の損益分岐点は変動します。
「年金は繰下げると増える」という説明は名目額では正しいのですが、お金には時間価値があります。早く受け取った年金を年2〜3%程度で有効活用できる人にとっては、繰下げの損益分岐点はかなり後ろにずれます。
したがって、「ある程度資産がある人なら、早く受け取った部分を自身で運用に回せるため、繰上げ受給も合理的な選択肢になる」という考え方は非常に理にかなっています。
ただし「資産がある人ほど繰上げが有利」とは限らない
資産がある人であっても、次のようなケースでは繰下げの方が合理的な場合があります。
1. 長生きリスクを強く意識する人
公的年金は終身で受け取れるため、長生きすればするほど価値が高くなります。運用資産は取り崩せば減りますが、繰下げ後の年金は生涯続きます。
厚生労働省の「令和6年簡易生命表」によると、平均寿命は男性81.09年、女性87.13年です。さらに、出生者の半数が生存する年齢である「寿命中位数」で見ると、男性83.89年、女性90.04年となります。特に女性は約半数が90歳まで生きる計算となるため、女性や健康状態のよい人は繰下げの合理性が高まりやすいと言えます。また、同データにおける65歳時点の平均余命は男性19.47年、女性24.38年となっています。
2. 運用リスクを取りたくない人
年金の繰下げによる増額は、制度上は生涯続く確定的な増額です。一方で自分で運用する場合、期待利回りはあっても元本割れや低リターンのリスクが伴います。
3. 加給年金や在職老齢年金に該当する人
配偶者がいる場合、加給年金の受給要件を満たすことがあります。日本年金機構の規定では、加給年金額は繰下げ増額の対象外となるだけでなく、繰下げ待機期間中は加給年金そのものを受け取れません。
加給年金のもらい損ねに注意
加給年金の年額は約39万円(2026年度時点・配偶者分など)です。もし5年間繰り下げて待機すると、約195万円を受け取れなくなる計算になります。この損失額は、繰下げの損益分岐点を大きく変える要因となります。
在職老齢年金の2026年度改正について
65歳以後も働き続ける場合、在職老齢年金制度によって支給停止される額は繰下げ増額の対象になりません。しかし、2026年4月からは在職老齢年金の支給停止基準額が月額51万円から65万円に引き上げられます。これにより、働きながら繰下げ待機をする際の恩恵を受けやすくなるケースがあります。
繰上げ受給のデメリットと注意点
繰上げ受給にはメリットがある一方で、以下のようなデメリットも存在するため、慎重な判断が必要です。
- 一度請求すると取り消すことができず、生涯にわたり減額された年金を受け取ることになる。
- 65歳になるまでの間は、繰上げ老齢基礎年金と遺族厚生年金は併給できず、いずれかを選択する必要がある(※65歳以降は併給可能となります)。
- 繰上げ請求後は、事後重症などによる障害基礎年金・障害厚生年金を請求できなくなる。
持病がある人や障害年金の受給可能性がある人、寡婦年金の対象になり得る人は、繰上げの判断を慎重に行うべきです。
手取りベースで考える「税金・社会保険料」の影響
繰下げによって年金額が増えると、額面の金額は増えますが、その分だけ所得税・住民税・国民健康保険料・介護保険料などの負担も増える可能性があります。
公的年金は税制上、原則として「雑所得」として扱われます。もともと企業年金や個人年金、不動産収入、配当収入などがある人は、公的年金額を増やすことによって税金・社会保険料の負担増が大きくなる場合があります。
医療費の自己負担割合が増加するリスク
75歳以降の後期高齢者医療制度では、所得に応じて窓口での自己負担割合が「1割・2割・3割」と変わります。年金の繰下げによって所得が増えた結果、現役並み所得者と判定され、医療費の実質負担が大幅に増えるケースがあることにも注意が必要です。
まとめ:年金の受給開始時期はどう決めるべきか?
年金の繰下げ受給は「長生きした場合に備える強固な保険」として機能します。しかし、早く亡くなれば受け取れない期間が生じるリスクがあり、手取りベースでの増額効果は額面ほど大きくならないケースも少なくありません。
一方で、ある程度の資産がある人は、年金を早めに受け取って手元資産の取り崩しを防いだり、運用に回したりする選択に合理性があります。お金には時間価値があるため、「早く受け取ること」自体が立派な戦略になります。
年金の受給開始時期は、健康状態、家族構成、保有資産額、運用方針、さらには税金・社会保険料や医療費負担への影響までを含めて総合的に判断すべきテーマです。単純な損得計算に惑わされず、ご自身のライフプランに合った選択をすることが最も重要です。
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