被災ローン減免制度、正式名称「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」というものがあります。これは、自然災害による影響で、住宅ローンや事業ローンなどの返済が困難な状況になっている人に対して、その免除や減額を申し出ることができる制度です。
要するに債務整理の一つなのですが、自然災害という人の手ではどうにもならない被害からの回復を図るための制度であるため、通以上の債務整理と比べると優遇されています。
今回はそんな被災ローン減免制度の仕組みと手続き利用の流れを紹介します。
被災ローン減免制度を知ろう
被災ローン減免制度(自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン)は東日本大震災の際に特別に作られた制度(ガイドライン)を、その後の自然災害にも適用できるように作られたものです。
災害救助法が適用された自然災害が対象で、自然災害によって住宅が流される、全壊するなどによって自宅を再建することができず、ローンだけが残ってしまったり、再建することができたとしても二重にローンを抱えることになり、大きな負担となり破綻することがないように作られました。
テレビで大々的に報道されるような平成30年7月豪雨、2016年の熊本地震などはもちろん対象ですが、それ以外にも台風や大雪、大雨などでも適用されています。
- 平成30年7月豪雨による災害
- 平成30年大阪府北部を震源とする地震
- 平成29年度豪雪
- 平成30年2月4日からの大雪による災害
- 平成29年台風第21号
- 平成29年台風第18号
- 平成29年7月22日からの大雨による災害
- 平成29年7月5日からの大雨による災害
- 平成28年新潟県糸魚川市における大規模火災
- 平成28年鳥取県中部地震
- 平成28年台風第10号
- 平成28年熊本県熊本地方の地震
- 平成27年台風第21号
- 平成27年台風第18号等による大雨
※2018年7月24日時点です。最新の情報や対象となる地域は「災害救助法の適用情報(内閣府)」で確認してください。
被災ローン減免制度で一定の資産を残しローンを減免してもらえる
ローンを抱えた被災者は、ご自身のメインバンク(一番借り入れが多い銀行)に申し出をすると利用することができます。その後は返済を停止することができ、後は弁護士、銀行と連携や協議をしながら、ローンを返済する計画を作ります。
- 被災者がメインバンクに申し込みをする
- メインバンクが手続きに着手(通常10営業日以内)
- 被災者が弁護士会などを通じて支援弁護士に依頼をする
- 弁護士の支援を受けて、債務整理の手続きをする
- 特定調停を裁判所で行い、確定する
すごく、難しそうに思えるかもしれませんが、ガイドライン利用時は専門家(弁護士)の支援を無償で受けることができますので、ご安心ください。
被災ローン減免制度の対象になるのはどんな人?
ガイドラインでは「既往債務を弁済することができないこと又は近い将来において既往債 務を弁済することができないことが確実と見込まれること」という条件があります。
難しい表現ですがこれは、現在は返済ができていたとしても、近い将来に債務が返済できなくなることが確実に見込まれる状況です。この状態かどうかは債務者の財産、収入、債務総額、返済期間、家計状況などを総合的に考慮するとされています。
貯金が少なく、被災によって収入が途絶えている、あるいは収入が大きく減少するなどして債務(ローン)全般が返済できないのであれば該当します。
被災ローン減免制度を利用するメリット
被災されている方にメリットと表現するのは少しおかしいと思いますが、被災ローン減免制度は通常の債務整理と比べると格段に利用しやすく、有利な制度となっています。
- 一定の財産を手元に残すことができる
- 専門家(弁護士)に無料で相談できるため銀行とも協議しやすい
- ブラックリストに載らないので、その後の事業や生活に影響も出ない
無理すれば何とかなるかも……と思われるかもしれませんが、早めに債務整理をして生活を再建することが重要です。自然災害はあなたの責任で起こったものではないわけです。
一定の財産を手元に残すことができる
銀行の同意を得ることができれば、「最大500万円とその他再建のために必要な公的支援金などを手元に残した上で、できるだけ返済をし、できない分は免除してもらえる」という仕組みになっています。
通常の債務整理(自己破産など)と比べると格段に残せる資産の額が大きくなります。すべての財産を失うというような制度ではなく、生活再建のためのお金を残すことができます。
専門家(弁護士)に無料で相談できるため銀行とも協議しやすい
被災ローン減免制度を利用する場合、弁護士費用も無料となっています(国が補助)。
お住まいの地域の弁護士会が相談に乗ってくれますし、実際の手続きについても支援してくれます。銀行との交渉や手続きをするのは大変そう、と思われるかもしれませんが、弁護士が支援してくれるのでかなりの部分をお任せすることができます。
いわゆる、ブラックリストに載らない
通常、こうしたローンの債務整理を行う場合、個人信用情報機関に異動情報が載る(いわゆる「ブラックリスト」)ことになりますが、被災ローン減免制度ではこの記録も残らないことになっています。
そのため、今後ローンを借りる場合、クレジットカードを作る場合なども債務整理をしたことによる悪影響を受けなくて済みます。
対象となる方は、制度を理解し早めの行動を
被災ローン減免制度は自らが申し出をする必要があります。実のところ、大きな自然災害の後でも、被災ローン減免制度を利用する人の数はそう多くないということです。
銀行側が積極的に提案していないのか、制度が周知されていないのか、
よく聞く話の一つとして被災して住宅ローン、マイカーローンが残っているのに生活に困窮している方が、その支払いのために被災者に対する義援金や支援金を返済に充ててしまい、その後の生活再建が困難になってしまった……ということがあります。
もちろん、高収入で生活再建の見通しがある、十分な貯金があるといったように十分な返済能力がある場合は利用できませんが、そうでない場合は有用に利用できます。
以上、被災ローン減免制度について紹介しました。
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