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日本の投資信託の99%以上は投資する価値なし?

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2017年4月7日に日本の金融庁長官である森信親さんが、日本証券アナリスト協会のセミナーという業界関係者が集まっている中での基調講演で「顧客である消費者の真の利益をかえりみない生産者の論理が横行している」として批判しました。

またその発言の中では、日本で販売されている5406本もの投資信託のうち、金融庁が投資対象としてよいと判断できるものはわずか1%以下の50本弱というものもあり、日本の投資信託については投資する価値がないものが多すぎると表現されました。

今回は金融庁が提出しているデータも含めてこの日本の投信のうち投資する価値なしという発言について探っていきたいと思います。

日米の投資信託を比較

以下は、規模の大きな投資信託(純資産上位5銘柄)のファンドのコストや収益率を比較したものです。

純資産 販売手数料 信託報酬(管理コスト) 過去10年平均収益率
日本 1.1兆円 3.2% 1.53% -0.11%
アメリカ 22.6兆円 0.59% 0.28% 5.2%

かなり歴然としたものがありますね、規模はともかくとして販売手数料(投資信託を買うときにかかる手数料)は約9.2倍、毎年かかる管理コストも5.46倍です。

結果である10年平均の収益率は大きな差がついて負けていますが、これだけのコスト差があれば結果もそうなってしまうでしょう。

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上記記事でも詳しく書いていますが投資において手数料は100%確実にマイナスリターンを発生させるものですからできる限り抑える必要があります。

 

日本の投資信託や年金は質が悪い?

金融庁長官の森氏は証券業界のセミナーで以下のように警鐘を鳴らしています。

正しい金融知識を持った顧客には売りづらい商品を作って一般顧客に売るビジネス、手数料獲得が優先され顧客の利益が軽視される結果、 顧客の資産を増やすことが出来ないビジネスは、そもそも社会的に続ける価値があるものですか?

何故、長年にわたり、このような『顧客本位』と言えない商品が作られ、売られてきたのでしょうか? 資産運用の世界に詳しい方々にうかがったところ、ほぼ同じ答えが返ってきました。日本の投信運用会社の多くは販売会社等の系列会社となっています。投信の運用資産額でみると、実に 82%が、販売会社系列の投信運用会社により組成・運用されています。 系列の投信運用会社は、販売会社のために、売れやすくかつ手数料を稼ぎやすい商品を作っているのではないかと思います

このように、投資商品の業界(特に投資信託や保険など)においては生産者の理論、販売者の儲けが重要視され、結果として投資に値する価値がない金融商品が多産されてきたわけです。

 

低コストのファンドは極めて少ない

冒頭にも書いた「5406本もの投資信託のうち、金融庁が投資対象としてよいと判断できるものはわずか1%以下の50本弱」というのは一体どのような条件なのでしょうか。

  1. 毎月分配型ではない
  2. レバレッジをかけていない
  3. 信託期間が一定以上
  4. 信託報酬が一定以下
  5. 販売手数料が無料(ノーロード)

この条件に当てはめていくと日本の投資信託では50本弱しかないということで全体の1%以下になるのだとか。

この条件だと、いわゆるアクティブファンドは5本しか該当せず、日本の売れ筋投資信託の30位以内には29位に一本あるだけ(米国の上位10位のファンドを同基準で調査すると8本が該当する)ということで、質が良くないという話になっているわけです。

 

顧客のことを考えていない

これはとくに投資商品を販売している窓口の多くの人に言えることだと思います。
資産運用や投資のアドバイザーなどと言いながらもやっていることは手数料収入の高いファンドを売りつけるセールスマンに成り下がっている人が多いです。

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今後の投資信託や業界は変わるのか?

金融庁長官によるこうした発言を受けて、金融機関や投資信託業界は変わるのでしょうか?

金融機関サイドからすれば「日本とアメリカでは投資教育も投資環境も違う」「金融庁の言う通りにすると会社として利益が出せない」といった否定的な意見も多いようです。

 

投資信託の運用コストは規模に影響を受ける

投資環境の違いは大きいです。実際にアメリカでは資産運用をすることは当たり前になっています。実際にアメリカの家計では財産所得が家計所得の25%を占めています。

一方で日本の場合は11%にすぎません。また、家計金融資産1700兆円のうち52%が現預金となっています。また、1万人に対するアンケート調査では投資経験・投資教育を受けたことがないという回答をした人が全体の71%でうち、83%の人が資産形成のために投資は不要だと回答しています。

そうした中で規模がアメリカと比べて小さな日本では投資信託の運用コストを引き下げるのには一定の限界があるともいえます。規模が大きなアメリカであればスケールメリットを活かしたコスト引き下げが可能な一方で、対象が限定された日本では米国ほどのコスト引き上げが困難であるという面があります。

 

そもそも毎月分配型をユーザー自身が求めている

日本人はキャピタルゲインよりもインカムゲインを好むという性質があるのかもしれません。

個人にもニーズがある。神奈川県に住む70代男性は「毎月の分配金は生活費。減配は困る」と話す。分配金で元本を取り崩しているのは知っているが、資産を増やし子どもに相続するより今の生活水準を維持する方が大事だという。
引用元:日経新聞 2017年5月17日朝刊「投信、根強い「分配信仰」、金融庁長官が批判で自粛でも」

このように、分配金が出るということ自身に価値があるという考え方も多いというのも事実です。

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少しずつ投資信託も低コスト化が進む

以上のような問題もあり、すぐに米国並みの投資信託の販売環境が整うということはないでしょう。その一方で、新しく作られている投資信託の中には低コストのインデックスファンドなども登場し始めています。

たとえば、TOPIX(東証株価指数)に対して投資をするインデックスファンドのコストを見てみましょう。

2016年に新しく作られた「iFree TOPIXインデックス」はTOPIXに連動するインデックスファンドで販売手数料は無料で信託報酬(管理コスト)は0.19%となっています。

一方で2001年に設定された「三菱UFJ国際-三菱UFJ TOPIX・ファンド」は販売手数料は0.54%で信託報酬(管理コスト)は0.68%となっておりその差は歴然です。

さらに昔の1988年(昭和63年)に設定された「 野村-トピックス・インデックス・オープン」は販売手数料は2.16%で信託報酬(管理コスト)は0.6696%です。信じられないくらい高いですね(SBI証券の投資信託データ参照)。

そう考えると、新しく設定されているファンドは低コスト化の波がやってきているわけです。

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一方で大きな課題といえそうなのが、現場でのセールスのやり方だと思っています。金融庁はフィデューシャリー・デューティー(Fiduciary Duty:顧客本位の業務運営)という言葉をつかって適正化を図ろうとしています。

 

投資家自身が投資の知識を身に着けるしかない

ただ、顧客に販売してそこから手数料を得るという商売である以上、根本的な所での対応は難しくなるでしょう。

となるとどうすればいいのか?
顧客である投資家が投資に対する正しい知識を手に入れて手数料がバカ高い商品や非効率な商品を買わないようにするということが一つでしょう。

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以上、日本の投資信託の99%以上は投資する価値なしという話とフィデューシャリー・デューティー(Fiduciary Duty:顧客本位の業務運営)についてまとめてみました。