貸与型の奨学金というのは事実上のローン(借金)であるというのはよく知られている話です。
その一方で、進学や勉強のためのローンに教育ローンという本物のローンもあります。それではこの教育ローンと貸与型の奨学金はどのような違いがあるのでしょうか?
今回は教育ローンと貸与型奨学金の違いについて、国の教育ローンと日本学生支援機構の貸与型奨学金(2種)とを比較しながら紹介、説明していきたいと思います。
貸与型奨学金と教育ローンの違い
まずは分かりやすいように表にしてみました。奨学金や教育ローンとして利用が多いはずの、日本学生支援機構(JASSO)の「有利子タイプ(第2種奨学金)」と、公的な教育ローンである「国の教育ローン」とを比較していきます。
貸与型奨学金 (第2種) |
教育ローン (国の教育ローン) |
|
---|---|---|
借主(返済する人) | 学生本人 | 親(保護者) |
返済期間 | 分割返済の金額によって変わる | 最長15年間 |
利用条件 | 世帯年収が1012-1502万円以下 | 世帯年収が790-1190万円以下 |
保証人 | 連帯保証人が必要(または保証料) | 連帯保証人が必要(または保証料) |
金利 | 0.01%(利率見直し方式) 0.23%(利率固定方式) |
1.76%(固定金利) |
融資上限額 | 月額3万円、5万円、8万円、10万円、12万円で選択 | 最高350万円 |
連絡先 | 日本学生支援機構 | 日本政策金融公庫 |
お金の受け取り方 | 毎月受け取る | 一括して受け取る |
利息 | 在学中は無利息、返済時期より金利が発生する | 借入時点から発生する |
返済開始 | 卒業後から | 借りた翌月からだが、元金据え置きも利用できる |
大きな違いを挙げていくと
- 奨学金は学生が返済するが、教育ローンは保護者が返済
- 奨学金は金利が安い(国の教育ローンも高くはないが)
- 奨学金は金利の発生が卒業後からと有利
といったところになります。単純に“お金を借りる”ということだけを考えると圧倒的に奨学金のほうがお買い得というか、ローンとしてのスペックが高いといえます。
“奨学金は事実上の借金である”ということはよく知られており、卒業後に返済できない人が増えているという事実はあります。直近の奨学金においては返済が滞るとブラック情報が信用情報に記載されるということもあり、社会問題としても取り上げられることが増えています。
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ただし、教育のためにお金が必要だという問題解決の手段としては、現状でもやはりNo1のお金の借り方だと思われます。
貸与型の奨学金と教育ローンは内容と性質をよく理解して活用しよう
教育のためのお金を借りるだけであれば、貸与型奨学金は実はかなり性質の良いお金となります。
国の教育ローンも他のカードローンなどと比較すると有利にお金を借りることがで決まるものですが、奨学金の条件と比べるとかなりの差があります。
奨学金と教育ローンの金利の差は大きい
- 奨学金を総額350万円借りて15年で返済した場合
- 教育ローンを借りて元金据え置き後、15年で返済した場合
1)の場合、同じ固定金利の教育ローンと比較するため 0.23%(利率固定方式)で計算します。卒業後から返済が始まります。15年だと月々の返済額は19,783円で、総額は3,560,967円となります。借金額に対する金利は60,967円です。
2)の場合、元金据え置き期間中(4年間)も年利1.76%の金利が発生。卒業時典で負債は375万円になっています。そこから15年でその残高を返済していきます。
月々の返済額は23,719円となり、総額は4,269,392円。借金額に対する金利は1,769,392円です。
歴然とした差がありますね。奨学金のローンとしてのスペックの高さを示しています。
奨学金を借りて親が返済するという手もある
たとえば、子どもが大学進学をするときに教育ローンを利用しようと考えている親御さんがいらっしゃるとしましょう。将来は自分(親)が支払うつもりでいますよね。
でも、それを奨学金として借りておき、子どもが卒業後にそのお金を親が返すというのも一つの手かもしれません。そちらのほうが金利は大幅に節約できます。
奨学金の返済は本来は学生自身が行うものですが、親が代わりに行うことは問題はありません。
名義上は子どもの債務を親が返済するときは贈与扱いになると思われますが、年間110万円までの贈与は贈与税非課税となります。
あくまでも親が返す予定としてお金を借りるなら貸与型の奨学金で借りるほうが教育ローンを利用するよりもお得といえそうです。
教育ローンのメリットは今すぐお金が手に入ること
一方の教育ローンのメリットは“今すぐまとまったお金が借りられる”ということです。
子どもが大学に進学するときには入学金や下宿先のアパート、マンションの敷金礼金、引っ越し費用といったようなお金がまとまって必要になることがあります。そうしたお金を工面するのが難しいという場合、低利でお金を確保できるのが国の教育ローンです。
すぐ100万円が必要で、すぐに返済していくというプランであれば教育ローンの方が使いやすいといえるでしょう。
貸与型の奨学金はそんなに悪者なのか?
ここからは奨学金制度の問題について少し私の考えを。
日本の奨学金制度は若者に借金を背負わせるなんて問題だ。給付型にするべき!という意見も多くあります。
ただ、日本学生支援機構が平成26年に実施した学生生活調査報告によると、大学生の51.3%が奨学金を利用しています。半数が利用していると考えると、奨学金という制度自体は特別な限られた事情がある人向けのものというわけではないといえます。
むしろ、借りなければ進学できないのが問題だというのであれば、それは日本の賃金(収入)の方に問題があるという考えの方が妥当だと考えられないでしょうか。
給付型(返済不要型)の奨学金はすでに導入済み
日本学生支援機構も貸与型奨学金の問題が指摘されたことを受けて、学力が高く収入面から進学が難しいという“一部の限られた人”を対象に給付型の奨学金を始めています。
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サラ金、カードローンと同列にするのはおかしい
ときどき、貸与型奨学金をサラ金やカードローンと同じように語る人がいますが、それは少しおかしいです。
消費者金融やカードローンの金利は10%台の二桁金利であるいことが多いです。一方の日本学生支援機構の第2種奨学金の金利は0.01%(変動金利)、固定金利でも0.23%です。
金利水準だけ見ればほぼゼロに近い金利です。ちなみに変動金利なら400万円借りて、それを20年かけて返済したとしても金利は1万円もかからないレベルです。固定金利プランであっても金利は10万円くらいです。
返済しなければならない“総額”としては大きいですが、金利負担はそれほど大きくありません。むしろ無担保でこの利率は信じられないレベルです。
さらに、返済できないとき(厳しい時)は猶予を受けることもできます。
また、借金は借金でもほぼゼロコストで借りれているわけですから、繰り上げ返済等で積極的に返済するよりも、むしろ現金(キャッシュ)として預金や運用をしておく方が有利になる可能性もあります。
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まとめ。奨学金、教育ローンの性質を理解して賢く利用しよう
奨学金については貸与型を中心に若者への負担の大きさなどが取り上げられています。
ただ、貸与型奨学金を教育ローンとしてみた場合、そのスペックは尋常でないほど恵まれた内容になっています。民間金融機関がこの内容で教育ローンを販売したら破綻間違いないレベルです。
そう考えると、確かに貸与型奨学金は借金であるけれども融資としてみれば、相当レベルで優遇されているわけで、経済的理由で進学が難しい人にとっては十分な支援になっていると思われます。
奨学金問題は以下に集約されると思います。
- 貸与型であるという事実を知らない
- 大学の学費が高い
- 卒業後の収入が不安定
結局、卒業後に400万とか、500万といったような多額の奨学金債務を抱えるのは(2)の学費が高くなっていることが問題です。
国公立大学の学費(授業料)は平成3年は375,600円、一方で今は535,800円も必要になっています1.42倍も高くなっています。一方で給与所得者(サラリーマン)の収入はどうかというと平成3年は4,026,000円でしたが平成28年は3,562,000円です。11.5%もダウンしています。
そりゃあ、学費は高くなる一方で親の給料(収入)が下がるのなら家計は厳しくなるのが当たり前です。奨学金がどうこうではなく、教育コストの上昇に給料が付いていけてないわけです。
また、直近は改善傾向が強いとは言え、卒業後に非正規の働き口しかない、収入が少ないというのも景気や雇用の問題です。
結局のところ、奨学金問題というのは貸与型の奨学金自身の問題ではなく、社会の問題であって貸与型をやめればいい(給付型だけにすればいい)という問題ではないわけです。
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