株式を証券取引所(東証など)に上場していない株式会社の株式のことを「未公開株」「未上場株」といいます。この未公開株の売買を個人投資家に持ちかける投資詐欺事案が増加しているということです。
今回はこうした未公開株を売買する際の注意点と未公開株を扱った投資詐欺被害に遭わない為の注意点やポイントをまとめます。
未公開株・未上場株とは?
未公開株とは、冒頭に書いたように上場していない会社の株のことです。そのため未上場株とも呼ばれることがあります。どちらも同じ意味です。
一方で証券取引所に上場している会社の株は「公開株」「上場株」と呼びます。投資家から見た未公開株と上場株の違いは以下のようになっています。
未公開株 | 上場株 | |
---|---|---|
売買価格 | 取引者同士で決める(相対価格) | 市場(取引所)によって売り手と買い手によって価格が決まっている |
売却の可否 | 自分で買いたいという人を見つける必要がある。ただし、譲渡制限が付いている場合、取締役会の許可が必要になる | 証券会社を通じて、市場が開いている日ならいつでも売却できる |
日本には数多くの企業がありその大半は未上場企業です。そのため、それらの会社の株はすべて未公開株となります。
こうした未公開株は証券取引所を通じて売買をすることはできませんが、個人間での相対売買(直接売買)は可能です。未公開株(未上場株)に投資をしませんか?という勧誘は、まだ上場していない会社の株を売買するということになります。
未公開株投資とIPO投資の違い
最近では新規公開株(IPO銘柄)の投資リターンが高いため、人気を集めています。これはすでに上場が決まっている銘柄について証券会社が募集するものです。
こちらも購入時点では未公開株ですが、すでに上場が「確定」していることから未公開株投資とは異なります。その分人気も高く購入は抽選のような形になりますが、未公開株投資よりは断然IPO投資のほうが透明性が高いです。
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未公開株投資の2つのタイプ
未公開株投資には大きく2つのタイプがあります。
- その会社が発行する新株に投資をする(出資)
- その会社の株主が持っている株を買い取る(ブローカー)
その会社が発行する新株に投資をする(出資)
たとえば、友達が会社を作るから、その会社の資金を出して株をもらうというのは出資です。
会社は新株を発行して、その株の代金を会社の資本金に組み入れます。出資をした人はその会社の株主となり、発行済み株式総数に対して自分の持ち株の割合にそった議決権などの権利を持つことができます。
こういった話についてはその会社の創業者などと人的なつながりがあることが必要になります。そのため、一般個人に対して、ベンチャー企業への情報や機会はあまりありません。
なお、最近ではクラウドファンディングの種類の一つとして、インターネット経由で出資を求めるようなサービスもあるので、個人投資家でも参加はできるようになっています。詳しくは以下の記事をご覧ください。
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その会社の株主が持っている株を買い取る(ブローカー)
未公開株投資というケースは大抵こちらです。
すでにその会社が発行した株について別の株主から買い取るというものです。大抵の場合は未公開株を売買するブローカーが勧誘をしています。
この場合、その会社自身は取引に関与することはほぼ無く、株主同士で株主としての権利をやり取りするだけです。
この記事で紹介するのはこちらの未公開株のブローカー取引のケースを紹介していきます。
未公開株投資のメリットは上場で大きな収益が得られる可能性
未公開株投資をすると場合のメリットとしては、その未上場企業が本当に上場すれば大きな収益が得られる可能性があるという事です。
最近では株式投資においてIPO株投資(新規上場株投資)が人気ですが、それよりも前に投資をできるわけです。IPO投資でも倍になるようなケースがあるわけですから、もっと儲かる可能性があるわけですね。
未公開企業への投資はエンジェル税制の対象になることも
未上場の成長途上の企業に対する投資は大きなリスクもあります。そのため、国はこうしたリスクマネーへの投資をサポートするための税制としてエンジェル税制(ベンチャー企業投資促進税制)というものを用意しています。
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ベンチャーに投資をすることで所得控除や税額控除といった税制上の優遇を受けることができます。
未上場企業の株を売買できるクラウドサービスも登場
クラウドファンディング(不特定多数から資金を集める資金調達サービス)の一種に株式投資型のクラウドファンディングがあります。
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未上場企業で儲けるという面だけでなく、応援するという面もありますが、上場まで至れば大きな収益が期待できます。
未公開株投資のリスクとデメリット
一方で未公開株への投資には大きなリスクがあります。未公開株に投資をするリスクとデメリットを説明していきます。
- 売りたくても売れない(譲渡制限)
- 情報の非対称性が大きい
- 投資詐欺のような騙すつもりの案件も
売りたくても売れない(譲渡制限)
未公開株を買った場合、その株を手放したいというときは、自分で買主を見つける必要があります。これは並大抵の労力ではありません。
また、未公開株・未上場企業の株には大抵、譲渡制限がついています。株というのは会社の経営権を分割したものです。譲渡制限はこれは会社の株を勝手に売買されて、会社にとって好ましくない投資家の手にわたるのを防ぐためのものです。
その為、未公開株は一度買ってしまうと、本当に上場するまで非常に換金しにくいわけです。これは流動性という意味で大変不利です。
情報の非対称性が大きい
もう一つのリスクは情報の非対称性が大きすぎることです。上場企業の場合、会社は決算書を提出したり、重要な事項があれば適時開示などの情報公開を行っています。
一方で未上場企業はかなりの情報をクローズにしています。そんな会社の株の価値を判断するのは極めて困難です。たとえば、業者が1株10万円で売ってあげるという勧誘をしてきたとき、その価格が本当に適正なのかを確かめるすべはありません。
本当に上場したけど、1株10万円だったのに、実際に上場したら1株の株価が3万円にしかならなかった……という事だってあり得ます。
上場すればいい方です、上場予定があるということをPRするでしょうが、それが本当かどうかもわかりません。
会社がそのつもりでも上場できるかはわかりません。上場するには証券取引所が定める様々な基準をクリアする必要がありますし、審査もあります。
投資詐欺のような騙すつもりの案件も
未公開株投資、未上場株投資を勧める案件には、あきらかに質が悪いものを売り込もうとする未公開株詐欺も少なくありません。
詳しくは以下の項目で説明していきます。
未公開株の勧誘と投資詐欺に遭わないための対策
業者が未公開株を個人投資家に勧誘する場合、金融庁において「第1種金融商品取引業者」としての登録が必要です。これは日本証券業協会のHPで確認できます。ここに名前が無い業者は詐欺の可能性が高いです。
世の中にはすごく名前が売れているのに上場していない大企業もたくさんあります。そういう会社の株をもうすぐ上場予定があるから買ってほしいという案内をするのが一般的です。
値上がり確実ならなぜ第3者に売る必要があるのか?というのが最大の疑問ですよね。もちろん、業者は納得しそうな話を挙げます。最近は複数の業者を使った詐欺も増えています。具体的な事例を見ていきましょう。
金融庁などを騙るケース
業者Aから未公開株の話を持ちかける。その後、金融庁や役所などを語ってBが電話。未公開株の注意喚起をするが、その際、業者Aから未公開株の話をしたところ、Bは「同社については上場予定があるから大丈夫ですよ」といったようにお墨付きを与えるケース。
業者AとBは同一または結託しており、被害者は公的機関からのお墨付きがあるなら大丈夫と未公開株を買ってしまう。
買い取り保証を行うケース
業者Aから未公開株の話。自分が欲しいが個人投資家(特定の人)しか買えないので代わりに買ってほしい。その代り代金+αを支払う。という話。
代金を支払って株を買うが、その後業者Aからの振込はないという詐欺。
被害者への追い打ち詐欺
上記のようなケースで被害に遭った人に、詐欺問題を解決して挙げる代わりに手数料を払ってくれといった形で提案。当然解決してくれず手付金や手数料だけを取られて音沙汰なしという詐欺。
未公開株の勧誘=詐欺という認識で問題ないかも
基本的に、未公開株投資についてはまっとうな案件はほとんどないといってもいいでしょう。未公開株投資のリスクは仮に投資が本当であっても、その会社が上場しなければ換金は非常に困難であるということです。
もし、上場予定が無ければ何年もそのお金を寝かさなければいけないという話になりかねません。最悪その会社が倒産したら紙切れになってしまうわけです。
また、本当に上場を控えているとしても未公開株の価格に妥当性があるかどうかを判断するのは難しいです。未上場企業は財務情報などもあまり公開されていないので、株価はいくら程度が妥当なのかを個人が判断するのは困難です。
未公開株を買ってしまって処分したいという場合
すでに何らかのルートで未公開株を保有しており、それを売却したいという場合はどうしたらいいのでしょうか?未公開株を売却(処分)するには下記の方法があります。
- 発行企業に買い取ってもらう
株式を発行している発行会社にその株を買い取ってもらうという方法です。ただし、会社側がそれに応じる義務はありません。また、買取価格が著しく低くなるケースもあります。 - その未公開株を買ってくれる人を探す
未公開株の相対売買(直接売買)は認められています。ただし、企業によっては「譲渡制限」というものが付いている場合があります。その場合はその会社の取締役会で譲渡を承認してもらう必要があります。 - 上場するのを待つ
その企業が本当に上場すれば売却は可能になるでしょう。それが1年後なのか10年後なのか、その前に会社が無くなってしまうかは誰にもわかりませんが…。
こうした未公開株を売却するときは、その企業が買いとってくれない限りはかなり厳しいのです。しかも、買取価格についてはその会社次第ということが多く、高値で買い取ってくれるというようなケースはかなり低いと言わざるをえません。
基本的に、未公開株やそれに類するものについて個人投資家は手を出すべきではありません。
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