将来のインフレリスクに備えようという動きをみせる投資家の方も多いようです。
日本は長年にわたってデフレと利下げを繰り返してきました。預金金利はずっとゼロ水準を続けてきました。もちろん、デフレ下においては現金や預金はほとんど利息がゼロでも実質的には増えていた計算になります。
ただ、一方で政府・日銀は金融政策の2%程度のインフレを目標にしています。そのための金融緩和を続けており、どこかの時点でインフレとなり始める可能性があります。
そうなると、私たち個人も保有している資産をインフレ率以上の利回りで殖やしていないと実質的に資産が目減りすることになります。今回は、個人でも可能なインフレ対策となる金融商品や資産を紹介していきます。
そもそもインフレとは?
インフレ(インフレーション)というのは貨幣価値の下落であるから、現金を保有したままだと実質的に価値が目減りしていまします。今年100円で買えたものは来年は100円より高いお金を出さないと買えなくなるからです(物価高)。
たとえば、インフレ率2%というのは1年間で物価が2%上昇すること、今年100円で買えたものが102円ださないと買えなくなるわけですね。となると、この物価上昇に対して資産を減らさないためには「インフレ率以上の運用利回りを出さなくてはならない」ということになるわけですね。
インフレに強い金融商品、弱い金融商品の種類と特徴
まずは、一般論としてインフレに強い金融商品と弱い金融商品の紹介とそれぞれの特徴を紹介していきたいと思います。
インフレに強い金融商品
- 変動金利型の運用商品・貯蓄商品全般
- 金や土地といった実物資産
- 外貨
- 株や投資信託
- 個人向け国債(10年・変動型)
- 固定金利で借りているローン
まとめると上記のようになります。よく言われている内容ですが、市場金利に応じて金利が変動するタイプの運用商品や、金(ゴールド)や不動産といったような貴金属や実物資産などはインフレに強いです。
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外貨(外貨預金やFXなど)もインフレには強いです。為替レートは通貨間の相対的な金利によっても変動するので、インフレの進行=円安となり、外貨預金などの外貨資産を保有していれば円安によって円ベースの資産が増加することになります。
株式投資(企業)は、その企業の価値の源泉は稼ぎ出す収益(利益)に依存するわけでインフレになればインフレになったで利益額も増えることで株価上昇となります。ただ、企業価値の大部分が現金みたいな会社はインフレに弱いかもしれませんね。
個人向け国債については10年タイプは半年ごとの変動金利型となっているので市場金利に合わせて利率も高くなるので抗インフレ力が強い商品となっています。3年、5年タイプは固定金利なのでそうは言えません。
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最後の「固定金利のローン」はインフレ率が上回れば実質的にマイナス金利の商品となり、負債ですが収益資産と同じように働きます。インフレ率>ローン金利となったような場合は返済しないほうがお得になりますね。
インフレに弱い金融資産
- 固定金利型の運用商品・貯蓄商品全般
- 現金
- 学資保険、養老保険
- 長期固定金利の預金
- 長期期間の債券
- 変動金利で借りているローン
逆に、インフレに弱い資産は現金と固定金利(固定の利率)で運用されることが決まっている金融商品です。
現金がダメなのはわかりますよね?タンス預金としてキャッシュで保管していても1円も増えません。デフレ時代ならいいですが、インフレ時代だと全く価値がありません。ま、デフレのタイミングでもタンス預金はそもそも論でお勧めしませんけど……。
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他に不利な商品としての代表格は貯蓄性の保険ですね。特に学資保険や養老保険といった貯蓄性が高い保険は弱いです。中途解約の場合は元本割れの恐れがあるだけでなく、一般に10年、15年と長期の運用になりますので、インフレになると解約もできず、インフレで実質目減りと良いことなしです。
金利下落局面では強いのですが、上昇局面を考えると厳しい商品性ですね。
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また、長期債(一般的な債券・社債などは固定利率)も同じ理由でダメです。
最後に、固定金利のケースとは逆に、変動金利で借りているローンはインフレになる(≒金利が上昇する)と利息負担が大きくなります。変動金利の住宅ローンなどを借りている方はインフレの進行によっては多大な負担増を抱えることになります。
個人がやるべきインフレ対策にはどんなものがある?
株や貴金属、不動産などは確かにインフレに強い金融商品です。しかしながら定期預金がインフレに負けるというのは100%正解ではありません。
金融や投資に強い人であれば、株や投資信託をやればいいと思います。ただ、そうでない方も多いでしょう。
株や不動産、貴金属といった抗インフレ商品の場合、インフレリスクは少ないかもしれませんが、別のリスクを抱えることになります。
株なら株価が変動するリスクがありますし、投資した企業が倒産したりするリスクもあります。不動産も価格変動や流動性の問題を抱えています。
他の投資商品への投資は「インフレリスク」をカバーすることはできても同時に他のリスクを抱え込むことになるため、「安全運用」をしたいという方にはあまり向いているものではありません。もちろん、そのようなリスクを把握した上で、さらにインフレ対策として考えているというのであれば、株や不動産、貴金属などは優良な投資先といえます。
以下では、個人が安全にインフレ対策として取り入れておける方法を紹介していきます。
普通のインフレなら定期預金はインフレ率には負けない
ハイパーインフレなどの極端なインフレを除き、政府日銀が言うような2%程度のインフレであれば、基本的に恐れることはありません。
現金はさすがに無理ですが、1年満期の定期預金などを利用すれば、金利上昇と預金金利の間に多少のタイムラグはあるでしょうが、大抵はインフレ率に大きく勝ちはしないものの、負けもしないでしょう。
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将来的にインフレ傾向が強くなると当然金利も上昇します。すると定期預金の金利だって上昇していくわけです。
先ほど説明したとおりインフレ率が上昇すると適用される金利も上昇するので、インフレ対策として利用するのであれば1年以下の定期預金を元利継続で自動継続して運用していくというのがよろしいかと思います。
大きく儲かるようなものではありませんが、ハイパーインフレのような極端なインフレにならない限りは対応できる方法です。時代は違いますが、私が子どもの頃にお年玉を貯金した郵便局の定額貯金で満期時(10年後)には2倍になっていました(ちなみに今の金利だと10年で0.1%くらい増えます……)。そんな時代もあったわけで、普通のインフレなら定期預金でも十分にカバーできるわけです。
その際は預金金利が高めのネットバンクを利用するようにしましょう。現段階でも都市銀行とネット銀行の間では金利に数倍~100倍ほどの差が開いており、インフレ対策としても有用です。
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あるいはインフレ対策商品のところでも書いた「個人向け国債」も悪くありません。個人向け国債はずっと購入キャンペーンを証券会社が売っているので、1年毎に解約できるメリットを生かしてキャンペーンだけ取り続けていくというのも面白いと思います。
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固定金利のローンを組んでおく(変動金利から借り換えをする)
もう一つは、ローンを活用するというものです。
特に住宅ローンを組んでいる方はインフレに備えるなら利率を固定金利のタイプに切り替え(借り換え)しておきましょう。こうすることで、インフレが進行した場合には、実質的な負担が小さくなります。逆に変動金利タイプのままだとインフレになった時には急激な負担増のリスクがあります。
インフレを懸念しながらも現在の住宅ローンは超低金利が続いています。今だからこそ、借り換えを検討するのも一つの手だと思います。
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不動産自体はインフレに強く、インフレが進めば住宅価格(不動産価格)も高くなるでしょうから。二重にお得です。
ハイパーインフレへの備えは実物資産
普通のインフレであれば定期預金などの預貯金でもカバーできますが、政府の経済政策が失敗した場合はその限りではありません。数十%といったような極端なインフレが起こった場合には、預金などではとてもカバーできません。
そうした対策として有効なのは「外貨資産」と「現物資産」の二つですね。
インフレ対策として“投資”まで考える必要はあるのか?と書きましたが、ハイパーインフレが起こるようなリスクまで考えるのであれば、これらの資産保有はマストです。
- NYダウやS&P500、あるいは世界株連動のインデックスファンド
- 金地金や金貨、金EFTなどの実物資産
特に、海外株への投資についてはインデックスファンド(投資信託)を通じて、今の時代は100円~投資を始めることができます。毎月少しずつでもいいので積立投資をしていけば、立派なインフレ対策になるでしょう。
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以上、個人でできるインフレ対策について紹介しました。
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