老後の年金を自ら備える方法としては、2017年より利用可能な人が大幅に広がった「個人型確定拠出年金(iDeCo)」と保険会社が販売する「個人年金保険」の二つが代表的です。どちらも同じ「年金」なのですが、制度は全く異なります。
今回はこの異なる二つの任意で加入できる年金についてそれぞれの特徴や違いなどを分かりやすく比較しながら、どちらがより向いているのかを分かりやすくまとめていきます。
iDeCoと個人年金の違いを比較
まずは、それぞれの違いを簡単に表にまとめてみました。
個人型確定拠出年金 | 個人年金保険 | |
---|---|---|
加入者 | 個人ならほぼ全員が対象で任意で加入できる | だれでも加入可能 |
加入するところ | 証券会社が中心 | 生命保険会社 |
運用コスト | 月額管理費として167円~617円程度に加え、運用する投資信託の信託報酬 | 保険料に込々 |
年金の特徴 | 確定拠出型となります。そのため、運用次第で将来受け取ることができる年金額(一時金額)は変動します。運用は主に投資信託や定期預金で行います。 | 様々な種類があります。確定給付型(利回りが決まっているもの)から変額年金(確定拠出年金とほぼ同様の意味)、円建て運用のものから外貨建て運用のものまで様々です。 |
掛け金の上限 | 公的年金の加入状況によって上限が定められている。たとえば、自営業者は81.6万円ですが、サラリーマンは27.6万円までとなります。 | 定めはありません |
中途解約 | 不可 | 可能ですが、受取額は少なくなります。場合によっては払い込みをした金額よりも少ない金額しか戻ってこないことがあります。 |
保険料の税制上の扱い(支払い時) | 全額が小規模企業共済等掛け金として扱われるため、全額が所得控除の対象となります。 | 年間の保険料に応じて所得税は上限40,000円、住民税は上限28,000円まで可能 |
保険金(年金)受け取り時の扱い | 一時金として受け取る場合は退職所得扱いとなります。他に退職金などがある場合は合算されることになります。 年金として受け取る場合は雑所得扱いとなりますが、公的年金控除を利用することができます。 |
一時金として受け取る場合は一時所得扱いとなります。 年金として受け取る場合は雑所得扱いとなります。ただし、支払った保険料は「原価(取得費用)」とみなされるため、その差分のみが所得となります。 |
老後に備えるという意味では同じだけど……
個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)も個人年金保険も老後に備えるための運用という意味では共通です。ただし、上記の表であげたように制度上の違いがあります。
大きな違いといえるポイントをいかにまとめていますので、自分にあった年金制度を活用しましょう。
税務上のメリットが大きいのは個人型確定拠出年金(iDeCo)
個人年金保険も生命保険料控除を利用できるため、支払った保険料の一部が所得控除として認められています。ただ、税制上のメリットでいえば、個人型確定拠出年金(iDeCo)のほうがさらに強いです。
- 掛け金上限までは全額所得控除
- 運用期間中の運用益は非課税
- 受け取り時は退職所得や年金所得として扱われる
この辺りによって税制上のメリットは大きいです。(1)+(2)で運用時は大きな節税となり、(3)で受取時も税金がかかりにくい仕組みになっています。
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そのため、極論ですが税メリットを活かすためだけに50歳前後の方はイデコに入って運用は定期預金オンリーで保険料の控除による税メリットだけを享受することだって可能です。
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小額の年金加入なら個人年金も税メリットは大きい
個人年金の場合は所得税4万円、住民税2.8万円までと所得控除の額には制限があります。
一方で所得税は年2万円まで、住民税は年12,000円までであれば全額所得控除になります。
また、年金を受け取るときには受取額が課税対象となるのではなく、運用によって増えた部分が課税対象となりますので、少額の個人年金であれば受け取り時も税金はほとんどかからないで済むはずです。
運用の結果責任が重い個人型確定拠出年金、個人年金は様々
商品性の違いは大きいです。
個人型確定拠出年金は掛け金の運用は自分で決める必要があります。証券会社にイデコの口座を作ると、それぞれの証券会社で購入可能な投資信託や定期預金などの運用商品があるため、それに資金を振り分けます。
そしてその結果、満期の時点での資産が年金原資となります。
一方で、個人年金の場合は運用性は様々です。
年金受給期間による分類 | 確定年金 | 年金の受給期間が確定しているの物。10年なら10年は受け取れます。万が一被保険者が死亡した場合も配偶者などの相続人が受け取れます。 |
---|---|---|
終身年金 | 死亡するまで年金が支払われるタイプです。公的年金である国民年金や厚生年金はこのタイプですね。 長生きリスクには有効である一方で、早く亡くなってしまうと保険料の損になります。 |
|
保証期間付き終身年金 | 終身年金ですが、一定の期間分は保険金(年金)の支払いが保証されています。 | |
年金受給額による分類 | 確定型 | 契約時に定めた一定の予定利率で運用され、それが年金原資となるタイプ。固定利回りになるので、損をするリスクは小さいものの、インフレに弱いという性質があります。 |
変額年金 | 預かった保険料は特定の運用が行われます。その運用結果によって、将来の年金の原資が変わることになります。 運用が成功すれば増えますが、失敗したら小さくなります。 個人型確定拠出年金と同様で運用責任は契約者が負います。なお、年金によっては最低保証金額が定められているものもあります。 |
確定拠出年金とにたタイプもあれば、学資保険のように安定した運用ができるものもあります。様々なタイプがありますので、自分自身のニーズに合ったものを選べるというのは個人年金のメリットともいえます。
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ただし、上記の記事でも挙げているように、個人年金の中には手数料ボッタクリのような商品も少なくないのでご注意ください。
個人型確定拠出年金と個人年金の使い分け
節税メリットや運用コストを考えた場合、老後の年金に備えるのであれば、メインを個人型確定拠出年金としたうえで、余裕や必要性があれば追加で個人年金というプランがおすすめです。
理由は以下のとおりです。
1)個人型確定拠出年金は月額コストが定額でかかる
個人型確定拠出年金の大きなデメリットは「月額手数料がかかる」ということです。この手数料は167円~617円(証券会社によって異なる)の定額です。
たとえば、当サイトでもお勧めしているSBI証券や楽天証券の個人型確定拠出年金は月額167円(定額)が必要です。
ここでのポイントは「定額」ということです。月額167円(年2004円)の手数料は年金資産残高が5万円なら約4%ですが、10万円なら約2%、50万円なら約0.4%、100万円なら約0.2%と低減していきます。
つまり、個人型確定拠出年金は運用残高を増やすことで手数料率を引き下げることができるわけです。なお、個人型確定拠出年金についてはその月額手数料の差はかなり大きいため、利用する証券会社は慎重に選ぶ必要があります。
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2)個人年金は税控除(個人年金保険料控除)は小さいほど効率的
個人年金の場合、払った保険料が所得控除されるのは以下のように年間の保険料の額によって変わってきます。以下は所得税のケースですが、年間2万円までの保険料なら全額が所得控除されます。一方で8万円を超えたら控除額は4万円となり控除率は50%未満となってしまいます。
年間(1月1日~12月31日)の保険料 | 保険料控除額(所得税) |
---|---|
2万円まで | 全額 |
20,001円~40,000円 | 保険料×50%+10,000円 |
40,001円~80,000円 | 保険料×25%+20,000円 |
8万円超 | 4万円 |
3)個人年金は保険会社のリスクがあるが個人型確定拠出年金にはない
個人年金は万が一保険会社が破たんした場合には約束された保険金額が受け取れないケースがあります。
一方で個人型確定拠出年金についてはその運用財産は個人単位で管理されており、預けている証券会社や銀行が破綻したとしても個人の財産への影響はありません。
保険会社の倒産リスクまで考える必要があるかどうかは微妙と思うかもしれませんが、個人年金の保険料控除を受けるには最低10年以上の払込期間が必要です。個人年金に加入する年齢によっては20年以上というケースもあるでしょう。
大手の金融機関といっても将来ゼッタイ安泰ではありません。
特に保険は途中解約は契約者側にとってのデメリットが大きいので、簡単に保険会社をスイッチング(変更)するのは難しいです。
そう考えると、破たんリスクゼロの個人型確定拠出年金をメインにし、生保(民間)の個人年金は小額運用というのは理にかなっていると思います。
4)イデコ運用に注意が必要なのは退職金、企業年金が多い方
こちらは、ごく一部の方への注意点です。
個人年金は、年金受給時には雑所得扱いとなりますが、必要経費としてこれまでの掛け金を差し引くことができます。なので、よほど高利回りの運用というケースでなければ所得の額自体もさほど大きくなりません。
一方で個人型確定拠出年金(iDeCo)に関しては、拠出時は全額所得控除になりますが、受給時はすべて所得扱いとなります。
詳しい税金のかかり方については下記の記事でも紹介しています。
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簡単にまとめてしまうと、個人型確定拠出年金は一時金とすれば、以下の加入期間に応じて非課税にできます。
10年:400万円
20年:800万円
30年:1500万円
たとえば、サラリーマンの場合、年間上限拠出額は276,000円(企業年金なし)となります、マックスの掛け金でも10年なら276万円、20年なら552万円、30年でも828万円となります。これに運用益が乗っかると考えても、かなり余裕があります。
そう考えると、会社から退職金が出ないのであれば完全非課税にできます。
一方でまとまった退職金が出るというケースでは非課税枠を超えてしまう可能性があります。
その場合は一時金ではなく年金として受け取ればいいという話になりますが、受給する公的年金、企業年金の額が大きいような場合には、こちらも非課税枠を超えてしまう可能性もあります。
退職金も年金も充実というような超ホワイト企業で働いているケースに限りますが、そういう方はイデコより個人年金が有利になるケースがあるかもしれません。
まとめ。イデコは上限掛け金、個人年金は最低額がおすすめ
というわけで、まとめると、ごく一部の超ホワイト企業勤務の人を除き、イデコ(個人型確定拠出年金)に対しては掛け金マックスをかけておきながら、個人年金は最低額を運用するというのがおすすめです。
ただし、民間保険会社の個人年金を調べると月々の最低掛け金は5000円くらいとしているところが多いです。となると上の控除額にすると25%+2万円といったところになるわけですね。
もう少し最低金額が小さな個人年金を作ってくれたら税メリットも大きくなるのになぁと思うのですが、ここを下回るのは難しいのでしょうか。
月額5000円が高い、それを払ったら個人型確定拠出年金に資金が回せないというのであれば、個人年金は使わないという選択肢を私は取ります。
なお、個人型確定拠出年金(iDeCo)の場合、記事中でも書いた通り、運営管理機関手数料が無料となるSBI証券か楽天証券を選択するのが賢いです。
以上、個人型確定拠出年金(iDeCo)と個人年金保険の違いを比較してみました。
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