会社経営をされている方は、税務上の定期定額などの条件を満たす必要はあるものの、役員報酬をある程度自由に決めることができるでしょう。
ある程度利益が出ている会社であれば、社長(自分)に役員報酬として還元する金額をどの程度にするのかを悩む人が多いかと思います。
今回は結婚しているという前提で夫婦の役員報酬の決め方について調べたことを自分の頭の整理も含めてまとめていきます。この記事は、法人成した経営者向けの話です。
所得税は累進課税、住民税・社会保険料は定率
日本の所得税は累進課税です。なので所得額が増えるほど所得税の割合は大きくなっていきます。
一方で住民税は所得割は10%で固定です。
税金ではありませんが、社会保険料もほぼ収入に比例する定率となっています。
ただし、年金は年収726万円くらいで上限、健康保険料は年収1440万円くらいで上限です。これ以上ふえても保険料は変わりないです。
夫婦で経営している場合の報酬の分け方
本題です。
夫婦で会社を経営している(あるいは夫のみが経営)場合で、報酬はどのように決めたらよいのでしょうか?
大きく以下のように分けられます。
- 夫のみが受け取る。妻は専業主婦
- 夫が中心、妻はパートレベルの仕事をしてもらい扶養範囲にする
- 妻にも積極的に関与してもらい報酬を分ける
税負担的には(1)よりも(2)の方が税負担が小さくなるのは当たり前ですよね。なので、経営者で自分の役員報酬の節税を考える場合は(2)か(3)の選択になるかと思います。
世帯年収800万円未満なら妻を扶養に入れているほうがいい
まず、経営者夫婦の世帯年収が800万円より少ないくらいの場合なら、夫が中心で働き、妻は年収100万円くらいのパート的な仕事をさせて、扶養に入れるほうが経済的です。
夫は配偶者控除(所得控除)が利用できますし、所得税率もそこまで高くありません。
妻は妻で100万円くらいなら所得税等は非課税ですし、社会保険も夫の扶養として第3号被保険者としてのメリットを最大限享受できます。
世帯年収1000万円以上なら妻もがっつり働くほうがいい
一方で世帯年収が1000万円を超えるというのであれば、どちらかと言えば妻も夫の会社でガッツリと働くほうが経済的メリットが大きくなります。
下の表は経営者夫婦の世帯年収を1000万円としたときに、夫・妻の役員報酬(給与)と税+社会保険料をまとめたものです。
夫の税・社会保険料負担 | 妻の税・社会保険料 | 合計額 | |
---|---|---|---|
① 夫:900万円 妻:100万円 |
所得税:606,720円 住民税:508,632円 健康保険料:445,944円 年金保険料:680,760円 合計額:2,242,056円 |
所得税:0円 住民税:0円 健康保険料:0円 年金保険料:0円 |
2,242,056円 |
② 夫:600万円 妻:400万円 |
所得税:224,520円 住民税:306,564円 健康保険料:297,300円 年金保険料:549,000円 合計額:1,377,384円 |
所得税:93,840円 住民税:173,928円 健康保険料:202,164円 年金保険料:373,320円 合計額:843,252円 |
2,220,636円 |
税負担としては、夫の扶養に妻を入れるよりも妻にもガッツリ働いてもらうほうが合計の税負担は小さくなります。これは年収700万円あたりから所得税率が大きく上がることが影響しています。
また、今後は給与所得控除の縮小がさらに進む予定なので、分割による税メリットは上記よりもさらに大きくなるでしょう。
あと、子育て世帯の場合、児童手当のことも考えないとダメです。年収1000万円を超えてくると所得制限に引っかかります。子ども一人当たり年6万~12万円ほど手取りが変わる計算になります……。
それなら制限範囲内で働くほうが有効になりそうなのも、この年収1000万円付近になります。
妻も働けば老後の年金もプラス!
①と②は世帯における負担額はそう変わりありませんが、大きく違ってくる点があります。それは「妻の年金」です。
①の場合妻は第3号被保険者となります。そのため、加入している年金は国民年金です。一方で②の場合は第2号被保険者です。
将来受け取れる年金が②の方が大きくなります。これは結構大きいですね。
ちなみに、社会保険料は会社経営者の方なら会社負担分も考慮する必要がありますが、これは法定福利費なので損金に計上でき、法人税等の節税効果があるので、額面通りの負担増とはなりません。
各種節税対策を夫婦で利用できる
- 個人型確定拠出年金(iDeCo)
- 小規模企業共済
上記の節税対策が夫のみが働いているケースよりも多く使えます。
- 個人型確定拠出年金:27.6万円/年
- 小規模企業共済:84万円/年
iDeCoや小規模企業共済は一人当たりです。夫だけの場合は世帯でマックス100万円までしか拠出できませんが、夫婦なら2倍の200万円が拠出可能になります。
拠出分は全額所得控除になりますので、かける税率分の節税効果になります。もっとも、(1)と(2)は自由になるお金ではないですが、老後や将来の貯金と考えることもできます。
年収が高くなるほど、夫婦分割は有効
以下は世帯年収が2000万円にまでなった時のケースです。夫がまとめてもらうよりも夫婦それぞれが1000万円を受け取る方が税・社会保険料負担は小さくなります。
夫の税・社会保険料負担 | 妻の税・社会保険料 | 合計額 | |
---|---|---|---|
夫:1900万円 妻:100万円 |
所得税:3,341,880円 住民税:1,432,572円 健康保険料:826,488円 年金保険料:680,760円 合計額:6,281,700円 |
所得税:0円 住民税:0円 健康保険料:0円 年金保険料:0円 |
6,281,700円 |
夫:1000万円 妻:1000万円 |
所得税:778,680円 住民税:593,568円 健康保険料:493,512円 年金保険料:680,760円 合計額:2,546,520円 |
所得税:778,680円 住民税:593,568円 健康保険料:493,512円 年金保険料:680,760円 合計額:2,546,520円 |
5,093,040円 |
勤務実態にはご注意
実際には妻は働いていないのに多額の報酬を出すのは危険です。
税務署から否認される恐れがあります。報酬を出すのであれば出した報酬に見合う仕事ないしは成果を上げてもらう必要があります。
この辺りについては顧問税理士などにご相談くださいね。
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