2017年4月より都市ガスの小売りが自由化されます。これまでの都市ガスはその地域のガス会社と契約をして料金を支払っていました。たとえば、東京23区なら東京ガス、京都は大阪ガス、福岡は西部ガスといった具合です。
このように都市ガス会社は地域を独占したわけです。電力についても1年前の2016年4月から自由化されましたので、これによって電気とガスという主要なエネルギーがすべて自由化されることになります。
都市ガス自由化とは?
都市ガス自由化は既存のガス管(インフラ)はそのままに、新規参入業者は地域のガス会社(ガス管を保有するガス会社)に対して託送料金を支払うことでガス管を使わせてもらいます。
そのため、東京なら東京ガスのガス管をそのまま使います。都市ガスは規格が決まっているため、東京ガス、A社、B社、C社という複数の会社のガスが混じった場合でも問題がありません。
この仕組みは送電網を共有する電力自由化と同様ですね。
都市ガス自由化のメリット。料金は下がるのか?
自由化の目的の一つは料金の値下げです。また、競争を促すことによって地域独占が崩れ、サービスの向上を図るというのも目的となります。
日本のガス料金は消費者庁が平成26年に行った調査では、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツといった主要国と比べて高いといわれています。
日本:100
アメリカ:57
イギリス:73
フランス:87
ドイツ:57
上記は都市ガス55万kcal(キロカロリー)使用時の料金を日本を100としたときの諸外国との比較となっています。
ちなみに、電力、上下水道、電話、鉄道、バス、タクシーを同じように比較していますが、上記の各国との比較の中で、最も内外価格差が大きいのが都市ガス料金です。
サービスも向上する?
自由化で競争が進めば料金の引き下げに動くかもしれませんね。電力自由化の際も大手電力会社もポイントサービスの導入、WEBサービスで手軽に電力料金の見直しやプラン変更ができるサービスを開始したという経緯もあります。
独占的なサービスに適正な市場原理が働くことはプラスになると思われます。
ガス管の整備も進む?
都市ガスを供給するには自宅のそばまでガス管が届いている必要があります。自由化によって参入する企業が増えることで、ガス管の整備も進むと考えられています。これまでは近くに都市ガスが通っていないため仕方なく、割高なプロパンガスを利用していたというご家庭も都市ガスを利用しやすくなるかもしれません。
なお、プロパンガスについては「LPガス(プロパンガス)のメリット、デメリットと切り替えをするときの注意点のまとめ」でもまとめています。
都市ガス自由化にデメリットはないの?
地域独占ということで独占が許された代償として大手のガス会社は安定供給の義務を課せられていました。都市ガスの原料となるLNG(液化天然ガス)の価格が上昇しても、それをすぐに価格に転嫁することはできませんでした。
自由化されれば、業者間での価格競争は起こるでしょうが、原材料価格が上昇すればこうした価格に強く連動するようになるでしょう。
ガス会社の切り替え・変更はどうするの?
調査会社のクロスマーケティング社による、全国の2800人を対象にした都市ガスの小売自由化に対するアンケート調査が行われていたようです。
この調査によると調査対象の都市ガス利用者の約21%が購入先の変更を検討する意向を示していたということで、みなさんの感度も高そうです。
電力会社のセットプラン次第では大きく動くことも
これは私の個人的な考えですが、2016年4月に電力が自由化され、2017年4月には都市ガスが自由化されたことで、家庭におけるエネルギーが総合的に選択できるようになるわけです。
ガスの自由化には地域大手電力会社も参入を表明しています。実は電力会社は火力発電などにおいてガスも利用しているため、ガス会社以上にガスを取り扱っている会社もあります。
こうした電力会社は電気+ガスのセット売りなどを行ってくるでしょう。総合的に見ればお得なプランというのが登場しそうです。
都市ガスの契約変更・切り替えに係る諸費用はいくら?
基本的にガス会社の切り替えには特別な工事は必要ありません。電力自由化の際は電力メーターをスマートメーターに交換したことを覚えている方も多いかもしれません。
ただし、ガス自由化の際にはメーターの交換も予定されていません。
都市ガスの切り替えはあくまでも契約上の手続きだけでOKです。おそらく費用としては数千円程度の事務手数料がかかるくらいでしょう。
賃貸でも変更できるの?
都市ガス業者の切り替えはインターネットのプロバイダーを変更するようなものです。マンションやアパート内の回線自体をいじるわけではありません。
そのため、賃貸住宅で現在の契約が都市ガスであれば切り替えは自由にできます。
プロパンガスからの切り替えはできるの?
賃貸の場合は大家さんの許可が必要になるうえ、工事費などを考えるとまず無理でしょう。もちろん、持ち家の場合はプロパンガスからの切り替えもできます。
ただし、プロパンガスから都市ガスへの切り替えについては既存のプロパンガスの撤去、ガス機器の取り換え(プロパンガスと都市ガスは使用する機器が違う)、都市ガスの引き込み工事などが必要になります。100万円単位のコストがかかる可能性があります。
都市ガス自由化はあまり盛り上がらない?
都市ガスの自由化があまり盛り上がっていない理由については
1)そもそもプロパンガス世帯には関係ない
2)電力と比べてガス代は半分程度
こうした状況もあることでしょう。電力自由化ほどの盛り上がりは見られないと思われます。自由化後にガス管の連結が進み、参入業者が増えるといった好循環が起こるといいですね。
以上、2017年4月より都市ガスも小売り自由化のメリット、デメリットをまとめてみました。
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