我が国では、要介護状態になった場合には公的な介護保険が存在しますが、それとは別に民間の保険会社が提供している介護保険という保険も存在します。今回は「介護保険」という制度について公的保険、民間保険を含めて制度の基本をわかりやすく解説していきたいと思います。
また、公的な介護保険ではない、民間保険会社の介護保険の特徴や必要性、加入のメリット、デメリットについても紹介していきます。
介護保険とは?
誰もが、健康でいたいのは当然ですが、様々な理由で介護が必要になることがあります。そんなとき、自分たちだけで支えるというのは金銭的にも労力的にも、地理的にも難しいことがあるでしょう。そうしたリスクに対応するために、みんなで保険料を支払い、要介護状態(介護が必要な状況)となった時に、助け合おうという制度が介護保険制度です。
福祉医療機構の統計によると2014年10月末時点で要介護・要支援の認定者はおよそ600万人だそうです。そしてその大部分は高齢者といわれています。高齢者の人口を3300万人(2015年9月)くらいとするとおよそ5人~6人に1人くらいが要介護や要支援の認定を受けているという状況です。
この数字を多いと見るか少ないと見るかは人それぞれ蚊と思いますが、やはり介護というのは高齢者になれば現実味を帯びてくる話です。
介護は状況によっては相当長期化する可能性もあり、そのような場合の経済的負担は決して小さくありません。そうした経済的負担のリスクをカバーするための保険が「介護保険」となります。
この介護保険制度、大きく公的な医療保険制度の枠組みで行われる公的な介護保険、個人が自分の意思で加入する私的な介護保険の2種類があります。
公的な介護保険制度
公的医療保険(健康保険・国民健康保険)を通じた公的介護保険です。
加入するのは40歳になった月からです。特別な手続きをすることなく、40歳になった月から自動的に加入します。特別な手続きは不要です。
ただし、公的な介護保険は下記の区分を見ていただくとわかる通り、「老人介護」に力点が置かれている介護保険制度です。39歳未満の方が介護状態となった場合の保障はありません。
支援が必要な場合、市区町村の窓口に申請書と保険証を添えて要介護認定の申請をする形となります。
なお、具体的な支援については要介護認定の区分によって変わります。
要支援1、要支援2、要介護1、要介護2、要介護3、要介護4、要介護5といったように区分されており、後者になるほどより支援や介護が必要だと判断されるようになります。
要支援の方には「予防給付」、要介護の方には「介護給付」が行われます。
介護給付は認定されることで介護施設や訪問介護といった通所サービス、訪問サービスなどにかかる費用が1割自己負担で済むようになります。
ただし、青天井で使えるわけでなく、要介護状態に応じて支給限度額が定められているのでその範囲内で介護サービスを利用するという形になります。
第1号被保険者(65歳以上の人)
第1号被保険者は65歳以上の公的介護保険加入者です。寝たきりや認知症などによって介護が必要である。日常生活に置いて支援必要な場合に介護サービスを利用することができます。
第2号被保険者とはことなり、支援や介護が必要な状態になった理由は問われません。事故などによる怪我でも介護が必要になれば保険の対象となります。
第2号被保険者(40歳以上、65歳未満の人)
末期がん、関節リウマチなどの特定疾病によって介護が必要になった場合に限り介護サービスを利用することができます。「加齢に伴って生ずる心身の変化に起因し要介護状態の原因である心身の障害を生じさせると認められる疾病」である必要があり、第2号被保険者は公的介護保険の利用に制限があります。
民間の介護保険
民間の介護保険は、民間の保険会社が提供している保険です。
一般的には所定の「要介護状態」となった時に一時金あるいは年金が支払われるというものになっています(現金給付)。公的介護保険のように老人介護だけを前提としたものではなく、20代の方でも加入することができます。
給付条件は多くのものは公的介護保険制度に連動しています。たとえば要介護2以上の場合に給付するといった具合です。なお、一部の保険では各社が支払基準(所定の状態)を定めていることもあります。
ほとんどの介護保険では、給付にあたっては指定の介護状態が90日~180日続くことといった免責期間が設けられていることも多いのでこちらも注意が必要です。
民間の介護保険に加入する価値はあるか?
まず、高齢の両親等の介護を心配しているというのであれば、公的な介護保険制度でもかなりの部分をカバーすることができます。要支援、要介護状態によって介護サービス利用可能額に差はあるものの、2015年現在、自己負担1割で利用可能です。
一方、民間の介護保険は多くが要介護2以上でしか給付されず、厳しいものだと要介護4以上といった要件がついている者も多いです。
ちなみに、2014年10月末時点で要介護・要支援の認定者はおよそ600万人ですが、
要介護2以上:316万人(全体の52%)
要介護3以上:211万人(全体の35%)
要介護4以上:133万人(全体の22%)
となっており、より重度の要介護状態にならないと給付金を受け取ることはできません。
また、高齢化が進む中、公的な介護保険でも要介護の判定がシビアになっていくということが予想されます。民間の介護保険も多くが公的介護保険の要介護度で判定す るようになっているわけで、国の介護に対する定義がよりシビアになれば民間の介護保険についてもシビアになるというリスクがあることを理解しておく必要があります。
ここからは他の保険も同様の話になりますが、あなたがまだ若いのであれば将来必要になるかどうかわからない介護保険に加入するよりは預貯金などでカバーする方がよっぽど効率的だと言えるでしょう。
その一方で将来要介護状態になったら設備の整った高級有料老人ホームなどに入居したいといった考えがある方は介護保険で高額な入居一時金を担保しておくといった価値はあるかもしれません。
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