老後のため、将来のためといったセールストークで個人年金保険や終身保険・養老保険などの営業を受けた経験がある方は多いのではないでしょうか?
確かに10年、20年と契約すればプラスになる上、預貯金などと比べ利回りもいい。保険会社が利回りを保証してくれるのだから、株や投資信託などよりも低リスク。そう考えて契約する方も多いようです。
しかしながら、長期の保険で途中解約のリスクがあります。それは生命保険の「失効率の高さ」を見るとかなりリスキーな運用であることが分かります。
個人年金保険の解約・失効率は高い
保険の解約というのは、保険を途中でやめること。また、失効とは、保険料払い込みの猶予期間を過ぎても保険料の支払(払い込み)が無い状態のため、保険契約が終了することを指します。
参考:生命保険契約の失効と復活
生命保険協会が公式に出した報告書によると2018年の個人年金保険の解約・失効率は5.6%です
この数字をどう思われますでしょうか?高い?それとも低い?
この解約・失効率、今年だけが突出して高いわけではありません。同資料によると、直近の解約・失効率は下記の通りです。
- 平成20年度:3.8%
- 平成21年度:3.3%
- 平成22年度:3.1%
- 平成23年度:3.0%
- 平成24年度:3.7%
- 平成25年度:6.2%
- 平成26年度:6.1%
- 平成27年度:5.9%
- 平成28年度:5.6%
- 平成29年度:5.6%
※生命保険の動向 2018年版より。平均すると4.63%という水準になります。
確率的に、保険を15年継続できる人は全体の約半数以下
仮に10年平均の4.63%が毎年、解約・失効すると仮定した場合、長期間年間保険を継続できる確率というものはどの程度になるでしょうか?
- 10年間:62.24%
- 15年間:49.11%
- 20年間:38.74%
※20年継続の計算式=(0.9537)20=0.3874
保険に加入した人の多くは、保険料を長期にわたって払い続けることに同意した人のはずです。
当然、途中解約をするつもりなどは無かったでしょう。しかしながら、15年継続できるのはおよそ半数に過ぎないわけです。
貯蓄型の保険でも解約率・失効率は決して低くない
先ほどの解約・失効率は生命保険全般ですが、これが貯蓄型の保険はどうでしょうか?
個人年金保険の解約・失効率は同調査では3.0%となっています。全体の平均よりは低いですが、貯蓄型の保険でも3%あるわけです。
個人年金保険というのは、保険の中でも長期運用が前提となる保険です。そうでないと大抵のケースで「元本割れが必至」となる運用商品です。
にもかかわらず解約や失効が行われるというのは、経済的な理由などにより解約や保険料を支払えずに失効したと考えるのが普通です。
個人年金に限らず終身保険、養老保険、学資保険といった貯蓄性、運用性のある保険についても同様に考えるべきです。
解約失効率が3%とした場合の継続年数ごとの残存率は以下の通りです
- 10年間:73.74%
- 15年間:63.32%
- 20年間:54.38%
こうなります。
保険で貯蓄・資産運用は失効というリスクがある
貯蓄型の保険、学資保険(こども保険)や個人年金保険というものは基本的に途中で解約すると損をするリスクというものがあります。
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このリスク統計的に見てみると、決して過小評価できるものではないということはわかってもらえると思います。15年程度の保険と考えた場合、全体の1/3は満期前に解約や失効しているということになるわけです。
そう考えた場合、長期間加入すれば損はしないという貯蓄型の生命保険のセールストークについては疑問符が付くことになるわけです。
多くの人は株式投資や投資信託投資というと「価格変動による元本割れリスク」を考えているはずです。このリスクが怖いという理由で満期までも契約し続ければ元本を保険会社が保証するという個人年金・終身保険・養老保険・学資保険といった保険での運用を考えていることでしょう。
途中解約リスク(流動性リスク)をかかえる貯蓄型保険
しかしながら保険による運用は、家計が厳しくなり保険料が払えなくなってしまった場合には「失効による元本割れリスク(途中解約リスク)」を抱えることになるわけです。
10年、20年という長期にわたって現状維持以上を保てるという安定性が担保となっています。正直なところ、数年先ならともかく、5年、10年、20年といった先のことを見渡すことができる人はそういません。
経済環境の変動、会社の倒産、病気や怪我、家庭環境の変化というように様々なリスクがあります。流動性(換金性)の極めて乏しい保険による資産運用にはこのようなリスクがあることを理解するべきです。
じゃあ、保険で運用は全部ダメなのか?
将来的に保険料を払い続けることができなくなる、ということがリスクなので、月々の支払いに余裕のある少額の保険なら問題ないでしょう。皆さまの家計の収支状況等を考えた上で、収入が3割程度ダウンしても払い続けられるという金額程度が目安でしょうか。
高額の保険料を月々、将来返ってくる安全な運用とおもって支払うというのはリスクです。万が一家計が一時的にでもピンチになった時に「泣く泣く解約せざるを得ない」ということにならないようにだけは考えておくべきということになりますね。
以上、保険は解約率が高い?失効率の高さから見る保険で貯蓄・運用の難しさというお話でした。
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