自動車保険の改正によって、自動車保険を使った場合に通常の等級ダウン以外にも「事故あり」等級が適用され割高な保険料がかかるようになりました。
この事故あり係数の導入によって、最高等級の人でも保険を使うと、翌年以降の保険料負担がかなり大きくなるようになりました。
今回はそんな自動車保険における「事故あり等級」の導入によって自動車保険をの使い方や補償内容について考えなければならいことをまとめていきたい思います。
自動車保険における等級とは
自動車保険の等級は、これまでの保険利用に対して決められる保険料の割引・割り増し制度です。通常1等級~20等級まであり、数字が大きくなるほど保険料の割引が大きくなります。
(初めて自動車保険に加入すると6等級からスタート)
1年間無事故(保険を使わない)だと、翌年は1等級上がります。
一方で交通事故などで保険を使うと、その補償金額にかかわらず、内容に応じて1等級または3等級ダウンします。回数は累積され1年に2回3等級ダウン事故を起こすと、翌年は6等級ダウンすることになります。
つまり、保険を使わない人はよりやすい保険料で自動車保険に加入でき、逆に保険を使う人(事故のリスクが高い人)は保険料がより割高になるというシステムです。
参考:自動車保険の「等級」と保険料 (新等級制度)
事故あり等級の係数と適用期間
「事故あり等級」というのは、自動車保険を使った場合、一定期間(年数)通常の同じ等級のときの保険料よりも割高な保険料が課される等級です。多くの損保会社で2012年10月ごろから適用するようになりました。
たとえば、15等級の人が自動車保険を使うと(3等級ダウン事故)、翌年の等級は12等級となります。ただし、この12等級は「事故あり」という等級で、事故を起こしていない12等級よりも割高な保険料となります。
この事故あり等級(係数)が適用されるのは、事故の等級ダウン数と同じ年数となります。3等級ダウン事故なら翌年から3年間は割高な保険料を支払う必要があります。
これによって、自動車保険を使うことで翌年以降の保険料の上昇が従来よりもより大きくなっているのです。
小額の事故なら保険を使えなくなった
このような流れを考えると、少額の保険事故なら自動車保険は使わないほうがより経済的ということになってきます。
言い換えると、小額の事故のために保険料を払うのはもっとバカらしいということになります。
この事故あり等級制度がスタートするまでは、20等級のような最高水準の等級の人は3等級ダウンしても保険料の値上がり幅が小さかったため、10万円くらいの自損事故でも車両保険を使うケースは多々ありました。
一方で、事故あり等級がスタートしている現状は3等級ダウン+事故あり係数の適用を考えると、保険料の総額にもよりますが、保険料上昇による負担増の方が大きいという状況になっています。
昔から小さな事故なら等級ダウンを考えると自動車保険を使わないという話もありましたが、事故あり等級がスタートすることで、それがさらに強化されることになりました。
必要な補償のための保険は必要だが少額保険は不要に…?
もちろん、対人賠償や対物賠償といった億を超えるような賠償責任が生じるような部分については当然補償が必要なので、基本的には両方とも「無制限」をお勧めします。
一方で、保険料の節約のために見直し対象となるのが「車両保険」です。つまり自分がのる車の傷や破損に対する補償の部分になります。事故あり係数の導入によって
・少額の自損事故
こちらについては、多くの方が保険を使わずに自腹で修理することになるはずです。そちらのほうが今後支払う保険料のことを考えるとお得になる可能性が高いからです。
車両保険はいくらからの修理費用なら使ってよいのか?
ネットでは10万円以上なら使ってOKという表記が多数のサイトで見られますが、多くがこの「事故あり係数」導入前の前提のお話で進められていることが多いです。
現状は損益分岐点はもっと高くなっていると考えるべきです。
いくつかシミュレーションをしてみましょう。特定の等級の人が車両保険(3等級ダウン事故)を起こして保険を使った場合と使わなかった場合の保険料の6年間の合計の差を比較してみます。
この差が保険を使ったとき、使わなかった時の差なので、自動車保険を使うか使わないかで迷ったときの判断材料となるはずです。
6等級 | 10等級 | 14等級 | 18等級 | |
---|---|---|---|---|
保険料10万円 | 19.9万円 | 17.1万円 | 18.8万円 | 20.0万円 |
保険料8万円 | 16.1万円 | 13.6万円 | 15.1万円 | 16.0万円 |
保険料6万円 | 11.9万円 | 10.2万円 | 11.4万円 | 11.9万円 |
保険料4万円 | 7.9万円 | 6.8万円 | 7.4万円 | 8万円 |
驚きの結果です。
また、同じ保険料10万円でも割引率の低い10等級の人の補償内容と割引率の高い18等級の人の補償内容とでは大きな差があるためです。同じ補償内容で比較すれば、等級が高い人の方が保険利用による保険料アップの金額は少なくなるはずです。
ただ、ここで注目すべきところは、保険事故で保険を使うと保険料アップがどれだけ等級が高くても10万円を超えてくるということです。
今回は6年分の保険料合計で計算していますが、それ以降も「保険を使っていなかったらもっと割引率が条う証していた部分」があるわけなので、実際の差額はもっと大きくなります。
さらに、車両保険の時に「免責金額」などが設定されている場合、その分は自己負担となります。
仮に免責が5万円だとしたら、その分がさらに上乗せされると考える必要があります。
仮に14等級で現在の保険料が8万円という方は、車両保険を使って修理するとした場合、15.1万円以上が最低、免責5万円とすると21.1万円以上の事故というのが最低ラインとなるわけです。
車両保険の種類はどうする?
あくまでも個人的な考えも含まれています。
上記の試算から考えても、相手がいない自損事故のケースではよほどのことがない限り保険は使わないほうがお得という状況になりそうです。
となってくると車両保険の高い保険料を抑えるためにも、低損害時にはそもそも保険を使わないという前提にしておくほうが保険料が割安となります。
車両保険を一般ではなく限定にする
一般 | エコノミー | 限定A | エコノミー+限定A | |
単独事故 | ○ | × | × | × |
車との事故 | ○ | ○ | × | ○ |
当て逃げ | ○ | × | × | × |
台風・洪水 | ○ | × | ○ | ○ |
火災・爆発 | ○ | × | ○ | ○ |
盗難 | ○ | × | ○ | ○ |
落書き | ○ | × | ○ | ○ |
いたずら | ○ | × | ○ | ○ |
自動車保険あは上記のように「一般」「エコノミー」「限定A」「エコノミー+限定A」という4つに分類されています。これらの分類によって車両事故において保険が効くケースと効かないケースが分かれてきます。
一つは故意以外を補償する「一般」。
補償範囲が広い分保険料は割高です。
一方で、車対車以外は補償しないエコノミーや、エコノミー+限定Aというようにどうせ使わない自損事故を補償対象から外すという手もあります。
問題としては「当て逃げ」のケース。これは一般以外では補償されません。運転中の当て逃げ以外の駐車場等での当て逃げの場合、なかなか相手が捕まらないことも多いため、泣き寝入りとなるケースも少なくありません。
この辺りのリスクをどう考えるかが一つです。
現在が高等級の人は保険を使うまでは一般、保険を使ったら限定にして保険料の上昇幅を小さくするというのも一つの手かもしれません。
免責金額を設定しておく
免責金額は車両保険を使うときの自己負担です。たとえば免責5万円なら、車両保険を使うときに5万円分は自己負担にしておくというものです。こうすることで保険料を割り引いてもらうことができます。
修理代が高額化しそうな車対車の事故の場合に備えて「車対車免ゼロ特約(自動車同士の事故の場合は免責金額ゼロ円になる特約)」などをセットしておくのも一つです。
最後に、「自動車保険は面倒くさがらず毎回見直しをしよう」でも書いたとおり、毎年しっかり自動車保険は見積もりをもって見直すことです。特に近年は保険料の値上げが続いているので、損保会社によって大きな差が出ているケースもあります。
以上、自動車保険の事故あり係数と適用期間、自動車保険・車両保険節約の賢い考え方をまとめてみました。
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