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個人向け社債のリスクと過去の破たん(デフォルト)事例

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最近、個人向け社債などと呼ばれる個人投資家をターゲットにした社債発行が増えています。定期預金などの金利が歴史的低水準となっている現在、個人向け社債はそうした行き場のないマネーの受け皿として一定の人気があるようです。

しかしながら、社債というのは安全な投資ではありません。今回は過去の社債のデフォルト事例を基に、社債投資のリスクを考えていきます。

個人向け社債とは?

社債というのは会社(企業)が発行する債券です。企業が利払いと返済を約束している債券となっており、個人向け社債というのは投資対象者を個人投資家に絞った比較的小口の債券となっています。

マイナス金利政策によって低く抑えられた預金金利に対して、それらと比較すると比較的高利回りとなっているので人気もあります。

一方で、その元金や利払いの返済を保証しているのは一企業に過ぎません。その企業の資金繰りが厳しくなると返済されないリスクもあります。

破綻するような際には、お金がほとんど戻ってこないという可能性もあります。

特に企業の業績は景気動向などによっても大きく左右されます。つぶれるはずがないという名前の知られた会社だって時と場合によっては破綻します。

個人投資家としてそういう企業に社債投資をするのであれば、リスクの見極めと分散投資が最重要です。

 

大企業だから安心は幻想

社債に投資をするとき、「大企業だから安心」と思ってはいませんか?
それは大きな間違いです。大企業であっても経営に息詰まることが多々あります。そうした場合、社債を保有している投資家は大きな負担を負うことになるケースもあるわけです。

まず、社債投資におけるリスクとしては下記のようなものがあります。

  • 中途解約できないリスク
  • 発行体のデフォルトリスク

 

社債と定期預金と違って途中で解約はできない

当然、途中で解約することはできません(個人向け国債を除く)。債券市場で売却することができますが、金利市場や動向によっては元本割れで処分しなければならないリスクがあります。

 

債券は元本保証ではない。発行体が破綻することもある

今回主題で考えるのがこのリスクです。社債の発行体がデフォルト(債務不履行)することによって利子の受取や元本の償還が受けられなくなるリスクです。

参考:債券投資のリスク

 

社債と実際のデフォルト事例

日本国内で有名なのは「マイカル」「エルピーダメモリ」「JAL」などが有名ですね。

いずれも、大手企業であり、経営が傾くちょっと前までは「まさか倒産するなんて…」と思われるほどの企業でした、こういった会社であっても経営環境の変化によってデフォルトしてしまう可能性があるわけです。過去からしっかり学びましょう。

 

マイカル債

全国に展開していた大手総合スーパーでした。
2001年に経営破綻しました。破綻前に3500億円もの普通社債(SB)等を発行していましたが、これらすべてがデフォルトしました。ちなみに、発行当時の信用格付けも決して低いものではありませんでした。
しかし、破たんしてしまったわけです。破綻後は、残った財産の分配が行われましたが最終的に投資家の手元に戻ったのは額面(元本)の10%~30%程度と大幅な損失となりました。

 

JAL(日本航空)の日航債

記憶に新しい大型倒産というとJAL(日本航空)があります。株が紙くず(電子くず)になるなどして話題になりましたが、同社は個人向けにも社債を発行しており、こちらもデフォルトしております。
日の丸航空とも呼ばれ、政府支援を受けている会社の社債がデフォルトしたのはこれが初めてです。

日本航空は2010年1月に事実上の経営破たん(会社更生法申請・受理)となり発行済みの670億円もの社債がデフォルトしました。発行されていた債券は普通社債とユーロ円建て新株予約権付転換社債(海外で発行された円建て転換社債)で総額は670億円。この規模は2001年に破綻したマイカルに次ぐ規模となりました。

ちなみに、JALの信用格付けの推移は下記のようになっております。
2002年にはムーディーズは同社格付けをBB+(Ba1)という投機的格付けへと格下げ、その後も2003年にはBB-(Ba3)へと格下げ、2009年10月にB+(B1)へ格下げ、同月CCC+(Caa1)へ格下げ、2010年1月にCC(Ca)へ格下げとなっております。

 

武富士

消費者金融大手だった武富士も2010年9月に会社更生法の適用を受け破綻しました。これにより発行していた社債およそ926億円がデフォルトすることになりました。
原因は過払い金請求等が響いたとはいえ経営悪化は急速でした。
武富士の格付けの推移は下記の通りです(ムーディーズ)。

2009年2月BBB+(Baa1)、同3月BBB(Baa2)、同5月BBB-(Baa3)、同8月BB+(Ba1)の投機的水準へと格下げ、同9月BB-(Ba3)、同10月BB(B2)、同11月CCC+(Caa1)、翌2010年3月CCC(Caa2)、同7月CC(Ca)
2009年8月に投機的水準に格下げされてから、破綻までの期間は1年と1カ月しかなかったわけです。

 

エルピーダメモリのエルピーダ転換社債

エルピーダメモリは日本唯一のDRAM専業メーカーでNEC日立メモリが前身の大手半導体メーカーでした。DRAMの価格低迷によって2012年2月27日に会社更生法を申請。負債総額は4480億円となりました。
同社では、2005年発行の社債や2010年10月に転換社債(CB)などを合計約1300億円の残高があり、すべてがデフォルト。公募された社債のデフォルト規模はJALを抜いてマイカルに次ぐ第2の規模となりました。

 

海外事例:エンロン

一つ、海外の事例を挙げてみてもエンロン事件があります。

エンロンの社債はBBB-という投資適格の信用格付(S&P)でしたが、不正会計疑惑により一気に6段階引き下げてB-へと格下げされたことを受け、価格が下落。その後は皆様もご存知のように同社は破綻しました。

日本人投資家が直接エンロンの社債に投資をするケースは少ないと思われますが、当時はMMF(マネーマーケットファンド)などの公社債投信がエンロン社債を組み入れていたため、投資信託が元本割れしたという事例もあります。

MMFは基本的に「元本割れを起こさないファンド」というように考えられていたため、当時は大騒動になりました。

 

個人向け社債に投資をするときの心構え

いかがでしょうか?大手企業だから安心ということはないことが分かっていただけると思います。

また、信用格付けを安心の材料としている方も多いかもしれませんが、経営危機が急速に進んだ場合には、発行当初は投資適格だった社債が、投機的水準にまであっさりと落ち込むといったような可能性もあるわけです。先ほどの武富士の事例なんか投資適格からデフォルトまで1年ちょっとと良い見本かと思います。
(参考:信用格付け

こうしたリスクを踏まえ、社債に投資をするというときは下記のような点に注意するようにしましょう。

  1. リスクと満期までの期間は比例する
    満期が長い債券は今は安心でも将来は分からない。よっぽど信用できる発行体以外5年以上の長期債は避ける。できれば1年満期のような短期債を中心に投資する。
  2. 低格付けの社債は高いリスクがあることを理解しておく
    BB格以下の投機的水準の社債はいつ何が起こるか分からないということを理解したうえで買う。BBB格であっても、ネガティブな見通しのものは格下げの可能性があることを理解する。

といったことをしっかりと頭に入れておく必要がありますね。

 

以上、個人向け社債のリスクと過去の破たん(デフォルト)事例を紹介しました。