最近、個人投資家をターゲットにした「個人向け社債」の発行が注目を集めています。日銀による利上げ局面を迎え、預金金利も少しずつ上昇していますが、それでも個人向け社債の比較的高い利回りは投資家の行き場のないマネーの受け皿として一定の人気があるようです。

しかしながら、社債というのは決して安全・確実な投資ではありません。今回は、過去の社債のデフォルト(債務不履行)事例を振り返るとともに、金利上昇局面ならではのリスクや新NISAでの取り扱いなど、社債投資で失敗しないためのポイントを詳しく解説していきます。

個人向け社債とは?

社債というのは、会社(企業)が資金調達のために発行する債券です。企業が満期までの利払いと元本の返済を約束している借用書のようなもので、そのうち投資対象者を個人投資家に絞った小口の債券が「個人向け社債」と呼ばれます。

2026年現在は日銀の政策金利が0.75%まで引き上げられるなど金利上昇局面にありますが、依然として銀行の定期預金金利などと比較すると高利回りに設定されていることが多く、根強い人気があります。

一方で、その元金や利払いの返済を保証しているのは、あくまで一企業に過ぎません。その企業の資金繰りが厳しくなれば、返済されないリスクがあります。最悪の場合、企業が破綻して投資したお金がほとんど戻ってこない可能性もゼロではありません。

特に企業の業績は景気動向などによっても大きく左右されます。つぶれるはずがないという名前の知られた会社だって時と場合によっては破綻します。個人投資家としてそういう企業に社債投資をするのであれば、リスクの見極めと分散投資が最重要です。

新NISAの対象外である点に注意
2026年現在、個人向け社債は「新NISA(少額投資非課税制度)」の対象外となっています。そのため、得られた利息や売却益には通常通り約20%の税金がかかる点には留意しておきましょう。

大企業だから安心は幻想? 個人向け社債のデフォルト率

社債に投資をするとき、「名前を知っている大企業だから安心だろう」と思ってはいませんか?それは大きな間違いです。大企業であっても経営に行き詰まることは多々あり、その場合、社債を保有している投資家は大きな負担を負うことになるケースもあるわけです。

ただし、実際のデータを見ると、2000年以降に発行された公募円建て個人向け社債において、デフォルトを起こした企業は「マイカル」の1社のみです。発行企業数147社、累計発行額約35兆円に対して、デフォルト割合は件数ベースで0.7%、金額ベースで0.3%にとどまっています。

とはいえ、ゼロではない以上、リスクを正しく把握しておく必要があります。社債投資には主に以下のようなリスクが存在します。

個人向け社債の主な4つのリスク
  • 中途解約・流動性リスク
  • 価格変動リスク(金利上昇による下落)
  • 発行体のデフォルトリスク
  • 劣後債特有のリスク

1. 途中で解約できず、流動性リスクがある

個人向け国債とは異なり、社債は原則として発行体に中途解約を求めることはできません。換金したい場合は証券会社などを通じて債券市場で売却することになりますが、個人向け社債は買い手がつきにくく、売りたいときに売却自体が困難になる「流動性リスク」があります。

2. 金利上昇による価格変動リスク

2025年末から2026年にかけての利上げにより、長期金利は2.38%を超える水準に達しています。一般的に、世の中の金利が上昇すると、すでに発行されている債券の市場価格は下落します。満期まで保有すれば元本は返ってきますが、金利市場や動向によっては途中で処分する際に元本割れとなるリスクがあります。

3. 発行体が破綻するデフォルトリスク(元本保証ではない)

今回主題で考えるのがこのリスクです。社債は元本保証ではありません。発行体がデフォルト(債務不履行)を起こすことによって、約束されていた利子の受取や元本の償還が受けられなくなるリスクです。

4. 近年増加する「劣後債」特有のリスク

近年、ソフトバンクグループや楽天グループなどが個人向けに「劣後債(れつごさい)」を発行するケースが増えています。利回りは通常の社債よりもさらに高く設定されますが、万が一企業が破綻した場合、他の通常の債権者よりも返済の優先順位が低くなる(劣後する)という特徴があります。そのため、デフォルト時の資金回収率が極めて低くなるリスクがある点を十分に理解しておく必要があります。

過去の社債のデフォルト事例から学ぶ

日本国内で有名な社債デフォルト事例としては、「マイカル」「エルピーダメモリ」「JAL(日本航空)」「武富士」などが挙げられます。

いずれも大手企業であり、経営が傾く少し前までは「まさか倒産するなんて…」と思われていた会社ばかりです。経営環境の変化によってデフォルトしてしまう可能性は常にあるということを、過去の歴史からしっかり学びましょう。

マイカル債

全国に店舗を展開していた大手総合スーパーのマイカルは、2001年に経営破綻しました。破綻前に約3,453億円(うち個人向け社債は約900億円)もの普通社債(SB)等を発行していましたが、これらがすべてデフォルトに陥りました。

発行当時の信用格付けは決して低いものではありませんでしたが、破綻してしまったわけです。破綻後、残った財産の分配が行われましたが、最終的に投資家の手元に戻ったのは額面(元本)の10%程度と、大幅な損失となりました。

【補足】MMFの元本割れ問題
マイカルの経営破綻は、日本の投資信託市場にも大きな影響を与えました。当時、基本的に「元本割れを起こさない安全なファンド」と考えられていたMMF(マネー・マーケット・ファンド)の中にマイカル債を組み入れていたもの(明治ドレスナーAMなど)があり、それらが元本割れを起こしたことで大騒動となりました。

JAL(日本航空)の日航債

記憶に新しい大型倒産というとJAL(日本航空)があります。株が紙くず(電子くず)になるなどして話題になりましたが、同社は個人向けにも社債を発行しており、こちらもデフォルトしております。日の丸航空とも呼ばれ、政府支援を受けている会社の社債がデフォルトしたのはこれが初めてです。

日本航空は2010年1月に事実上の経営破たん(会社更生法申請・受理)となり、発行済みの普通社債やユーロ円建て新株予約権付転換社債(海外で発行された円建て転換社債)など、総額670億円もの社債がデフォルトしました。この規模は2001年に破綻したマイカルに次ぐ規模となりました。

ちなみに、JALの信用格付けの推移(S&P)を見ると、2002年にはBB+という投機的格付けへ格下げされ、その後も2003年にはBB-へ、2009年10月にB+、同月CCC+へ格下げ、そして2010年1月にCCへ格下げとなっております。

武富士

消費者金融大手だった武富士も、2010年9月に会社更生法の適用を受け破綻しました。これにより、発行していた社債およそ926億円がデフォルトすることになりました。過払い金請求等が響いたとはいえ、経営悪化は急速でした。

S&Pによる武富士の格付け推移を見ると、2009年2月はBBB+でしたが、同年8月にBB+の投機的水準へと格下げされ、その後もBB-、B+と下落し続けました。2009年8月に投機的水準に格下げされてから破綻までの期間は、1年と1カ月しかなかったわけです。

エルピーダメモリの転換社債

エルピーダメモリは、NEC日立メモリが前身の大手半導体メーカーで、日本唯一のDRAM専業メーカーでした。DRAMの価格低迷によって2012年2月27日に会社更生法を申請。負債総額は4480億円となりました。

同社では、2005年発行の社債や2010年10月に発行した転換社債(CB)など合計約1,385億円の残高があり、すべてがデフォルト。公募された社債のデフォルト規模はJALを抜いてマイカルに次ぐ第2の規模となりました。

海外事例:エンロン

一つ、海外の事例を挙げてみてもアメリカのエンロン事件があります。

エンロンの社債はBBB-という投資適格の信用格付け(S&P)でしたが、不正会計疑惑により一気にCC・Dまで引き下げられたことを受け、価格が下落。その後は皆様もご存知のように同社は破綻しました。この時、エンロン社債を組み入れていた米国の公社債投信などが元本割れを起こすなどの影響が出ました。

格付け機関の表記の違いにご注意

記事中で紹介した「信用格付け」ですが、代表的な格付け機関である「S&P(スタンダード&プアーズ)」と「Moody’s(ムーディーズ)」でアルファベットの表記方法が異なります。ニュースや証券会社のサイトを見る際は混同しないよう注意しましょう。

安全性 S&P Moody’s
極めて高い AAA Aaa
高い AA Aa
投資適格(ここまで) BBB Baa
投機的(ここから) BB Ba
一部債務不履行 C以下 Caa以下
デフォルト D

個人向け社債に投資をするときの心構え

いかがでしょうか?大手企業だから安心ということはないことが分かっていただけると思います。

また、信用格付けを安心の材料としている方も多いかもしれませんが、経営危機が急速に進んだ場合には、発行当初は投資適格だった社債が、投機的水準にまであっさりと落ち込むといったような可能性もあるわけです。先ほどの武富士の事例なんか投資適格からデフォルトまで1年ちょっとと良い見本かと思います。

こうした事実と、近年の金利上昇環境を踏まえ、社債に投資をするというときは下記のような点に注意するようにしましょう。

  1. リスクと満期までの期間は比例する
    満期が長い債券は今は安心でも将来は分かりません。また、期間が長いほど金利上昇時の価格下落リスクも大きくなります。よっぽど信用できる発行体以外、5年以上の長期債は避け、できれば1〜3年満期のような短期から中期の債券を中心に投資する。
  2. 低格付けの社債や劣後債は高いリスクがあることを理解しておく
    BB格以下の投機的水準の社債はいつ何が起こるか分からないということを理解したうえで買う。BBB格であっても、ネガティブな見通しのものは格下げの可能性があることを理解する。また、利回りが高い「劣後債」は、破綻時の回収率が著しく下がる点を認識しておく。

といったことをしっかりと頭に入れておく必要がありますね。

以上、個人向け社債のリスクと過去の破たん(デフォルト)事例を紹介しました。

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ふかちゃん
マネーライフハック編集長。証券会社で個人向け金融サービスに従事した経験をもとに、2004年より金融・投資・クレジットカード・節約・ポイント活用に関する情報を発信しています。2011年からMoneyLifehackを運営し、2018年3月には月間200万PVを達成。金融サービスの提供側ではなく、利用者目線で実際に使って検証した一次情報をもとに、家計改善に役立つ情報を分かりやすくお届けしています。
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