最近、一部のネット証券が投資家に対して提供しているサービスに「貸株サービス」というものがあります。これは、簡単に説明すると投資家が所有している株式を、一時的に証券会社に貸すことによって、その間金利収入を得られるという取引になります。
株式投資によるインカムゲインは「配当金」や「株主優待」が中心でしたが、個人向けに「貸株収入」という第3のインカムゲインを提供していることになります。今回はこの貸株サービスというサービスの中身とその魅力、リスクを分析していきます。
貸株サービスとは一体何か?
貸株サービスは先ほど述べたとおり、投資家が所有する株式を一時的に証券会社に「貸す」ことによって手数料を受け取るという取引です。証券会社はその借りた株式を他の機関投資家などに貸したり、空売り用の株として供与することで品貸料を得たりして収入を得ます。
この貸株サービスという取引自体は「ストックレンディング」などという名称で以前から大口投資家に対しては提供されてきたサービスなので、目新しいサービスではありません。しかしながら、小口の投資家に提供されることは今まではありませんでした。
ここにきて、大手のネット証券がたとえ小口であっても多数の口座を持っている点を活用して個人投資家にストックレンディング(貸し株サービス)を提供するようになったというのは非常に素晴らしいことだと思います。
個人投資家も保有する資産をの二重に活用してより高いリターンを得ることができるようになるわけです。
貸株サービスによる収入はどうやって計算されるの?
貸株サービスによる、収入は原則として「時価(株価×株数)」に対して一定の金利をかけたものを受け取ることができます。例えば、1株500円の株を1万株所有しているとします。この時の評価額は500万円です。
仮に貸株サービスによる金利が0.3%に設定されている場合、500万円×0.3%÷365=41円が1日あたりの貸株収入です。こうやって毎日貸株料が計算され、通常は1ヵ月ごとにまとめて支払われます。評価額は毎日株価の変動によって変わるので貸株サービス利用による金利も毎日変わります。
貸株サービス利用中も配当金は受け取れるの?
配当金や株主優待、あるいは株主総会の議決権などの株主としての権利は、その企業が定めている「権利確定日」の株主に対して与えられます。
ただし、貸株利用中は株式の名義人は貸株している証券会社に移りますので、投資家には支払われなくなります。
当然それは納得できる話ではありませんよね?その代償として、貸株サービスを利用している場合、配当金相当額が支払われます。
仮に、1000円の配当金があった場合、通常は20.315%が源泉徴収されて797円が配当金が支払われます。貸株サービス利用中はこの797円が証券会社より貸株料(配当金相当額)として支払われることになります。
株主優待はそのままでは受け取れない
一方で同じように株主に対して一部の企業は株主優待制度を設けています。
この株主優待については、すべての株主に対して一律に提供されているものではありません。そのため、貸株サービスを利用している場合は株主優待は受け取れません。
もちろん、それだと全く魅力がないので、貸株サービスを提供している証券会社は、権利確定日だけ名義を個人名義(自分名義)に戻してくれるサービスを行っており、これを設定しておけば、株主優待も受け取れます。
なお、こうした手続きは大手ネット証券では「自動」で行えるように設定可能ですので手間もかかりません。
貸株サービスの注意点とリスク・デメリット、注意点
このような貸株サービスについてですが、リスクやデメリットはないのでしょうか?
- 証券会社の信用リスク
- 信用取引の担保にできないケース
- 長期保有株主優待制度に注意
- 貸株サービス中は配当金が二重課税されるリスク
この辺りに注意したいところです。
証券会社の信用リスク
「信用リスク」というのは、仮に貸株サービスを使っている証券会社が破綻した場合のリスクです。
通常株式を預けている証券会社が破綻した場合でも投資家が預けている財産(預け金や株式、債券、投資信託などの有価証券)は、証券会社の財産とは別に管理されているので、保護されます。
これを「分別管理」といいます。
しかしながら、貸株サービスを利用した場合、貸し出しをしている株券の名義がサービス利用期間中は証券会社の名義に書き換わってしまうため、この分別管理の対象から外れてしまいます。
そのため、貸株サービスを利用している証券会社が破綻した場合は一部または全部の株券が戻ってこないリスクがあります。
長期保有による株主優待のグレードアップが利用できない場合がある
これは、ごくわずかな事例なのですが、株主優待制度を設けている会社の中には「複数年度の所有で株主優待の内容をグレードアップ」させたり、「そもそも1年以上連続して株を保有していないと優待をあげない」とような会社がふえてきています。
このような会社の場合、一時的とはいえ名義が証券会社に切り替わることによって長期優待が受けられなくなる可能性があります。(長期優遇(グレードアップ)受けられるかどうかについては各企業側の判断によるところもありますので、必ず受け取れないというわけではないので注意してください。)
長期保有によるグレードアップがある銘柄としては「ビックカメラ」などが有名ですね。
なお、設定で特定の株(銘柄)だけを貸し株しないという選択も可能ですので長期保有株主に対する優待強化がある銘柄は貸し株候補から外しておけば安心です。
また、以下の記事で紹介しているような小額投資を活用して貸株サービスを利用しつつ、保有期間も伸ばすという方法も有効です。
信用取引が利用できない場合がある
信用取引はその仕組み上、保有する株式を代用有価証券として担保に入れることになります。
ただし、貸株サービスを利用している場合、その株式は担保とすることができなくなります。また、一部の貸株サービスを提供する証券会社は信用取引との併用ができない場合があります。
貸株料は雑所得として扱われ、二重課税の対象になる
この点はかなり大きな問題です。証券会社から支払われる貸株料は雑所得として扱われます。
たとえば、500万円の投資をしている場合で貸株料が年0.1%とすると年間で5000円の貸株料収入があります。この5000円の収入は「雑所得」という扱いになり、確定申告による申告が必要です。
ただし、サラリーマンの場合は給与以外で20万円以上、主婦や学生の場合は他の所得と合算して38万円(住民税は33万円)以下なら申告は不要になります。
貸株料だけでこれを超えるケースはまれでしょうから、あまり気にする必要はないかもしれません。ただ、注意したいのが「配当金相当額」です。貸株サービスを利用していると配当金はそのまま支払われず「配当金相当額」として支払われます。
この配当金相当額についても所得扱いとなるわけです。この配当金相当額はすでに配当課税相当分が源泉徴収されているにも関わらず、さらに課税所得扱いとなるため、二重課税となる恐れがあります。
仮に500万円の投資で配当利回りが5%の銘柄なら19.9万円(25万円から配当課税の20.315%を差し引いた額)が支払われますが、この19.9万円は雑所得扱いとなるのです。ここは注意したいですね。
なお、配当の権利確定日の時点で、貸し株を一時ストップしておけばこの問題は発生しません。手続きは権利付き最終日までに行う必要があります。
なお、楽天証券とマネックス証券の貸株サービスは配当金を自動取得する機能もありますので、心配な方はこの2社のサービスを利用するようにするとよいでしょう。
貸株サービスの徹底比較
大手ネット証券の「SBI証券」「auカブコム証券」「楽天証券」「マネックス証券」でそれぞれ貸し株サービスを提供しています。以下ではそれぞれのネット証券の貸し株サービスの特徴をまとめます。
重要な要素としては貸し株金利(利回り)はもちろんですが、信用リスクの小ささも大切です。また、信用取引との併用もできるかどうかという点も大切な方がいるかもしれません。
なお格付けについては今回調査対象の証券会社はすべて投資適格と呼ばれる部類に入る格付けとなっております。
楽天証券 貸し株サービスに参戦。
楽天証券も2015年に貸し株サービスに参入しています。特徴としてはSBI証券、auカブコム証券と同様に基本0.1%で需給のひっ迫した銘柄に関しては高いボーナス金利が付与されます。
信用格付けもA-と高めなので比較的安心して貸し株をすることができるという点が魅力です。また、株主優待・配当金自動取得サービスとして株主優待の自動取得だけでなく、配当金の自動取得機能があるのも嬉しいです。
信用取引との併用:〇
株主優待自動取得:〇
配当金自動取得:〇
信用格付:A-(R&I)
SBI証券 最低0.1%~需給ひっ迫銘柄なら20%の利回りも
貸し株サービスの筆頭は、ネット証券の中でも最大の口座数を持つSBI証券です。自社でも一般信用取引による空売りサービスを提供するなどの関係上、貸し株にはかなり力を入れているようです。
最 低金利は0.1%となっており、プレミアム金利適用銘柄なら1%を超える貸し株料が設定されている銘柄もあります。
特にマザーズ市場のような新興銘柄については高い貸し株料が設定されることが多いので新興市場への投資が多い方には特におすすめといえるでしょう。上手に利用すればかなり大きなリターンも期待できます。
信用取引との併用:〇
株主優待自動取得:〇
配当金自動取得:×
信用格付:BBB+(R&I)
auカブコム証券 最大20%の貸し株利回り。信用格付けも高い
auカブコム証券も貸しSBI証券と同様に一般信用取引で空売りが行えるというサービス上貸し株に力を入れているようです。最大金利は20%となっており、新興銘柄中心に貸株料(貸株金利)が高い銘柄も多いです。
前 述のとおり、貸し株サービス利用中に証券会社が倒産するなどした場合、普通はすべての株式は保護預かりの対象なので保護されるのですが、貸し株中の株につ いては名義が証券会社名義となっているので、分別管理の対象外となります。戻ってこないというわけではないのですが、証券会社の経営状況によっては一部が 戻ってこないという可能性があります。
これが貸し株の大きなリスクといえるわけですが、auカブコム証券の格付けはA+と貸し株サービスを提供するネット証券の中では最高水準の信用格付となっています。
信用取引との併用:〇
株主優待自動取得:〇
配当金自動取得:×
信用格付:A+(JCI)
マネックス証券 広く浅く高めの貸し株料が設定
マネックス証券は基本貸し株手数料は0.1%で、ボーナス対象銘柄に関しては0.5%のプレミアムがついています。
SBI 証券のように1%とか10%とかいう高額のプレミアムが付くことはありませんが、SBI証券の0.5%を超える貸し株銘柄数が650銘柄程度なのに対し て、マネックス証券は996銘柄に0.5%の貸し株料がつくので、広く浅く貸し株料が高めに設定されているような印象です。
大きなリターンが見込めない一方で、貸し株料も安定傾向にあるので、成熟企業などに長期投資したいというニーズが強い方にお勧めといえます。
信用取引との併用:〇
株主優待自動取得:〇
配当金自動取得:〇
信用格付:BBB(JCR)
全くゼロリスクというわけではありませんが、貸し株はいつでも停止することができるということも考えると、そこまでネット証券の信用リスクを恐れる必要はないと思います。
一方で貸し株サービスは設定しておけばあとは自動的に貸株が行われて、収益が受け取れるという手間もかからないサービスですので上手に活用したいところです。
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