生命保険・医療保険は損をする金融商品。保険は本当に必要なのか?
生命保険や医療保険、万が一のために、あるいは家族のために加入されている方も多いかもしれません。また、貯蓄・投資の目的で保険に加入している方もいるでしょう。しかし、保険という商品はその性質上、確率的には損をする仕組みになっている金融商品です。
もちろん、損をするからといって価値がないというわけではありません。ベースとしては損をする金融商品であることを踏まえた上で、私たちの人生設計にどのように組み込んでいくべきかを考える必要があります。
今回は、生命保険や医療保険が確率的に損をする仕組みと、それを踏まえた上で「どのように加入するべきなのか」を具体的に解説していきます。
生命保険や医療保険の保険料のしくみ
まずは、生命保険や医療保険の保険料がどのように使われているのか、その内訳を見ていきましょう。契約者から集めた保険料は、大きく以下の要素に分けられます。
- 保険金を支払うための源泉
- 従業員のお給料や会社維持のためにかかる費用(事業費)
- 会社の儲け・利益
「1」を純保険料、「2」と「3」を合計して付加保険料と呼びます。
保険会社の保険の経費率・原価率はどのくらい?
具体的な数字を見てみましょう。2008年頃に「ライフネット生命」という生命保険会社が、自社の保険の原価に関する情報を公開し話題となりました。
たとえば、死亡保険(定期保険)において、30歳男性が保険金額3,000万円で契約した場合、月々の保険料は3,484円。そのうち、保険会社の運営経費となる「付加保険料」は815円と公表されました。
これを計算すると、純保険料(保険金の原資)が約77%、付加保険料(運営経費)が約23%となります。
加入者全体で見た場合、集めた保険料の一部は確実に経費として差し引かれます。そのため、加入者全体が受け取る「保険金の総額」は、必然的に「支払った保険料の総額」よりも小さくなります。
ライフネット生命の例で言えば、加入者が3,484円の保険料を支払っても、確率的に受け取れる期待値は2,669円となり、約23%にあたる815円分は損をするという計算になります。
「保険会社ってそんなに取るの!」と思われるかもしれませんが、ライフネット生命は当時「他社と比較してうちの運営費は安い」という意味でこのデータを公開しました。大手生命保険会社は詳細な付加保険料率を公開していませんが、同じ条件で比較した場合、大手の総保険料はネット生保の約2倍になるケースも報じられており、大手の経費率はさらに高い可能性があります。
生命保険・医療保険は不要なのか?
「損をする」というのは、あくまで契約者全体で見た場合の確率論です。だからといって、生命保険や医療保険が不要なものだという乱暴な結論にはなりません。保険というシステム自体は大変優れた仕組みです。
保険はそもそも「確率」という不確実なものに対する備えをするためのシステムです。
自分では対応できないとんでもないリスクが身に降りかかってきたとき、保険金という形でリスクをヘッジ(回避)する役割を持っています。
- 世帯主が死亡することで、子どもや遺族が困窮するリスク
- 重病を患い、長期間働けずに生活に困窮するリスクや、仕事を失うリスク
- 交通事故などを起こし、他人に重大な損害を与えてしまうリスク(賠償責任)
最も代表的なものは、世帯主が加入する生命保険(死亡保険)です。世帯主に万が一のことがあれば残された家族の生活が破綻してしまいます。そうした万が一の事態に「保険」によって数千万円の財産を遺族に残せるのは、非常に大きな価値があります。
医療保険や就業不能保険でいえば、重病や重傷を負うことで働けなくなり収入が途絶えてしまう、あるいは高額な治療費の支払いに困ってしまうといったリスクに対応できます。
自動車保険も同様です。億単位の損害賠償責任が生じた場合、個人では到底負いきれません。そうした巨大なリスクは「保険」という仕組みを使って社会全体でカバーするわけです。こうした意味で、保険というのは社会的に確実に必要なものです。
自分でカバーできるリスクなら保険はいらない
保険は、個人では負うことができない巨大なリスクを広くカバーするための仕組みです。言い換えれば、自分でカバーできるレベルのリスクであれば、保険という仕組みに頼る必要はありません。
期待値がマイナスとなる保険をむやみに使うのではなく、事故が起こった時に自分の貯金からお金を出す方が、結果的には損をしません。たとえば、医療保険を考えてみましょう。「90日の入院まで日額1万円を保障してくれる医療保険」があるとします。
しかし、もしあなたが自由に使えるお金として500万円以上の十分な預金をもっている場合、こうした保険に加入する意味は薄れます。なぜなら、その程度の入院費用なら「自分でリスクをカバーできる」からです。
日本人は世界的に見ても非常に多くの保険に加入しています。しかし、「本来ならば自分で対応できるリスク」まで保険でカバーするのは、単に保険会社に利益を提供するだけになってしまいます。無駄な保険には入らないというのは極めて大切な考え方です。
その一方で、繰り返しになりますが保険が完全に不要とは言いません。以下に、生命保険や医療保険等で加入を検討する際の、必要最小限の考え方をまとめました。
普通の人にとって必要な生命保険
「子供が小さいうちはある程度大きめの保障を備え、子供が独立したら最小限に減らす」という考え方が基本です。運用環境を考慮すれば、割安な定期保険(掛け捨て)で十分対応可能です。
保険会社は遺族の生活費から必要な保険金を大きく算出する傾向がありますが、公的な補償を除外して試算しているケースがあります。代表的なものが「遺族年金・遺族厚生年金」です。サラリーマンの遺族であれば、それなりの遺族厚生年金を受け取れる可能性があります。ただし、2025年の制度改正により、子のない30歳未満の妻に対する遺族年金は5年間のみの有期給付となる予定など、公的補償のルールは変化しています。ご自身の世帯の状況を正確に把握して必要額を算出すべきです。
貯蓄目的で終身保険や養老保険などに加入している人も多いですが、この場合は他の投資商品と収益性を比較する必要があります。保険による運用は中抜きされる経費があるため、投資信託などで運用する方がリターンが高くなる傾向があります。
2024年からスタートした新NISA(年間投資枠最大360万円、生涯投資枠1,800万円)や、iDeCoといった税制上の優遇制度を利用したほうが資金効率が良いケースが多いです。ただし、生命保険には生命保険料控除(年間最大12万円まで所得控除)というメリットもあるため、高所得者の方は節税効果も加味して検討すると良いでしょう。
普通の人にとって必要な医療保険
日本では公的な医療保険(国民健康保険や健康保険)によって、医療費の大部分がカバーされています。高額な医療費に関しても「高額療養費制度」でサポートされるため、青天井で自己負担が増えるわけではありません。
注意点として、2026年8月からは高額療養費制度の自己負担限度額が引き上げられる予定です。(例:標準報酬月額28〜50万円の区分で8万100円から変更予定など)。ご自身の貯蓄額と照らし合わせ、負担増に耐えられるかリスク許容度を見直しておく必要があります。
また、働けなくなるリスクについても、サラリーマンであれば健康保険から「傷病手当金」(最長1年6ヶ月)が支給されます。そのため、短期間の入院を補償するようなよくある医療保険は無駄になりがちです。
一方で、自営業やフリーランスの方には傷病手当金がありません。またサラリーマンであっても、1年6ヶ月を超えるような長期療養リスクには対応できません。そのため、加入するのであれば短期の入院保障よりも、長期間働けなくなるリスクをカバーする就業不能保険(所得補償保険)の活用が非常に有効な選択肢となります。
がん保険の必要性
医療保険と同様に、預金がある程度あれば必要度は低くなります。先進医療特約のように健康保険の対象ではない治療を受けたいという方や、がん家系で不安があるという方は、ベースの保障を最小限にして割安に加入すると良いでしょう。
近年のがん治療は入院日数が短縮化しており、通院(外来)治療や免疫療法などの高額な治療が主流になりつつあります。そのため、「入院日額」型の保険よりも、がんと診断された際にまとまったお金が受け取れる「診断一時金」型や、高額な薬代をカバーする「抗がん剤治療特約」型の方が、現在の治療実態に合っています。
介護保険の必要性
公的な介護保険もあるため、私的な保険にどれだけ価値があるかは慎重に判断すべきところです。若い時から保険料を支払うのであれば、その分を預貯金や運用に回しておく方が柔軟性が高いかもしれません。
詳しくは「介護保険とは何か?公的保険と民間保険の違い、民間介護保険の必要性とメリット、デメリット」の記事も御覧ください。
個人年金保険の必要性
こちらもわざわざ保険で対応しなくても、個人型確定拠出年金(iDeCo)や新NISAのような税制面で優遇を受けられる制度がたくさんあります。節税効果や運用益の非課税メリットを考えれば、iDeCoや新NISAを使って運用する方が圧倒的にお得です。
特に個人年金と個人型確定拠出年金(iDeCo)については以下の記事で違いを詳しくまとめています。
学資保険の必要性
こちらも個人年金と同様です。近年は2024年3月のマイナス金利解除に伴い、一部の保険会社で学資保険の予定利率が引き上げられました(例:0.85%から1.00%への引き上げなど)。
しかし、それでも新NISAを利用した長期の積立投資などと比較すると、資金拘束リスク(途中解約による元本割れ)やインフレへの対応力といった面で見劣りするケースが多いのが実情です。自分で資金管理ができる人は、わざわざ学資保険を利用するメリットはそこまで大きくありません。
子供の教育費を貯める上で人気の学資保険ですが「子供のための学資保険の選び方のポイント」や「学資保険の脅威はインフレリスクと途中解約リスク」でも記事にしています。
まとめ。保険は損せず賢く加入しよう
基本的に、保険は必要最小限の加入にとどめるというのが原則だということを説明してきました。
ちなみに、ネット等でFP(ファイナンシャルプランナー)に生命保険等を無料相談できるサービスや、店舗で様々な保険を比較できるサービスなどが存在します。しかし、これらはいずれも「利用者が保険に加入することによって得られる、保険会社からの販売手数料」によって運営されているビジネスです。
このあたりについては「FPへの保険無料相談利用の注意点」や「来店型保険ショップの問題点と利用者が知っておくべき事実と活用方法」の記事でもまとめていますが、「本当に中立なのか?」といわれると構造的に難しい部分があります。
では、どうやって自分にぴったりの保険や保障内容を考えるべきなのか?答えは「自分自身で考える力を身につけること」だと私は思っています。当ブログでも、ご自身で適切なお金の管理ができるよう、今後も役立つ情報を発信していきます。正しい知識を身につけましょう。
パートナーがいる方は解約は慎重に
最後に、ここまで読んで「今の保険は無駄だからすぐに解約しよう!」と思った方へ。パートナーがいる方は、経済合理性だけで勝手に解約を進めるとトラブルになるケースが多いです。
「万が一の安心感」という精神的な価値を重視している場合もあるため、必ず相手の意向も確認し、話し合った上で見直しを行いましょう。世の中、損得の数字だけで回っているわけではないということも忘れないでください。
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