昔は“土地神話”という言葉があり、土地の値段は必ず上がるものという考えがありました。そんな時代の人たちに、「今では不動産は負動産といって負債扱いのものもあるんですよ」なんて伝えたらどんな反応を示すのでしょうか?
不動産というのは現在でも資産の代表格ではあるものの、中には資産的価値のない、むしろ保有したくない負債的な不動産(いわゆる負動産)とよばれるものもあります。空き家率の上昇、核家族化、人口減少などの影響がジワリジワリと出てきているようです。
今回はそんな負動産とはどのようあな土地・建物なのか?そうした土地の相続や生前整理の方法などを紹介していきます。
なぜ、負動産という言葉が生まれたのか?
もちろん、すべての土地や建物といった不動産が負動産化しているわけではありません。収益性の高い土地は今でも立派な資産です。
一方で、最近では“負動産”という言葉がよくつかわれるようになりましたね。これは、資産的価値のない、あるいは収益性のない不動産を指します。不動産は所有しているだけでも維持費用や税金などのコストがかかります。これを上回る便益を受けられない不動産を負動産というわけです。
最近では以下のようなニュースや報道を見聞きする方も増えているのではないでしょうか。
負動産が増えていく理由は人口減少と新築住宅
バブル崩壊によって土地神話が語られることはなくなりましたが、それでも、不動産は資産という考えを持つ方が多かったはずです。
一方で、近年では冒頭でも書いたように負動産という言葉が多く利用されるようになっています。これは様々な要因が複合的に絡んでいますが、大きくは人口減少と減らない新築住宅です。
人口減少+新築住宅=空き家率の増加
日本の総人口は2004年をピークとして減少しています。需要者が減少するわけですから土地(不動産)を欲しいという人も減り、それが価格下落を引き起こすわけです。
需要の減少とともに住宅供給も減ればバランスは変わらないのですが、住宅の新築件数はリーマンショック後に落ち込みはしたものの、概ね90万戸もの新築住宅が作られています。
需要は減少したのに、供給量は変わらない。するとどうなるかというと当然ですが、家が余ります。結果どうなっているのかというと、社会問題化しつつある“空き家の増加”です。
野村総研によるシミュレーションでは2023年という、そう遠くもない将来において日本の空き家率は21%にもなると想定されています。
負動産とは?負動産の実例・事例
負動産というのは実際にはどのような不動産を指すのでしょうか?一概に○○に該当すれば負動産というわけではありません。
たとえば、田舎で使いようのない土地であっても、自分が住む(利用する)のであれば、それは負動産ではありません。一方で、利用する予定もなく、賃貸利用もできなければそれは負動産です。
- 自分が住む予定もない郊外、田舎の実家(相続)
- ぼろぼろに荒廃している空き家・小屋
- 何にも使われていない固まっている土地
- 収益性が維持コストを下回る賃貸住宅
- 老朽化し、管理組合が機能していないマンション
- ほとんど行かないリゾートマンション、別荘
などが負動産としてイメージしやすいですね。
不動産は所有しているだけでも維持コストがかかります。
たとえば、固定資産税や都市計画税は税金としての維持費用になります。
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マンションはもちろんですが、一戸建て、土地だけという場合でも固定資産税は必要になります。むしろ、土地だけの場合は建物が建っているよりも、固定資産税の軽減措置が受けられない分、税金は高くなります。
この軽減措置によって、だれも住めないようなボロボロの建物(戸建て)でも、建物を残すほうが税金が安くなるケースがあります。空き家の増加はこうした税制上の問題もあるとされています。
一方で、このぼろぼろの空き家は周辺環境にも悪影響があるということで危険な空き屋は“特定空家等”として固定生産税の優遇がゼロになる制度がスタートしています。
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また、マンションの場合にはマンションの管理費や修繕積立金などの費用拠出も必要となります。
売るに売れない物件・不動産も増加
不動産は資産ですが、売ろうと思っても売れない物件も増えています。
前述の実例に挙げたような負動産は不動産会社(仲介業者)も高く売れる者でないから、あまり扱いたくないというのが本音です。そのため、売りやすくするために相場よりも安く売らざるを得ないケースも少なくありません。
また、維持コストが高い物件などは、売却ではなく、逆に“お金を払って引き取ってもらう”というケースも少なくないようです。リゾートマンションなどはその傾向が強いですね。
不動産は基本的に“捨てる”ことはできません。行政(自治体)などに土地を引き取ってもらうことも原則的にはできません。売るに売れない土地を取得・相続したら大変です。
負動産の相続対策
不動産の相続対策というと主に“相続税”を意識する方のほうが多いかもしれません。中には、相続税対策として不動産投資(アパート建築)などを通じて税負担を圧縮することを考えている方もいらっしゃいます。
もちろん、賃貸住宅として需要が見込めるエリアや立地であれば否定はしませんが、立ててみれば空室ばかりとなり、まさに“不動産を子どもに遺す”ことにもなりかねないリスクを考えておくべきです。
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相続前に負動産を生前整理することを考えるのもひとつ
最近では『生前整理』という言葉が使われることも増えてきました。終活の一環として自分の身の回りを自分が生存しているうちに済ませてしまうというものですね。
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自分たちの死後に子どもたちが実家に住む可能性がないというのであれば、自分が生きているうちに整理してしまうのも手です。土地建物はもちろんですが、自分たちが大切だと思っているものも、そのままにしていたら“遺品”になってしまいます。
自分たちが元気なうちに、不動産を含めて生前整理しておくことは大切です。折を見て、相続人(子どもたち)と一度話し合っておくと良いかもしれませんね。
土地・建物のある程度の価格を調べておくとスムーズかもしれません。
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負動産が圧倒的に大きいなら相続放棄も手段
タダでも売れないような不動産、圧倒的に厳しい経済状況の負動産を保有している場合は“相続しない”という最終手段があります。
通常、不動産は捨てることはできませんが、例外があります。それは財産の相続をしないことです。相続放棄といいますね。ただし、相続放棄はすべての財産の相続を放棄することになります。不動産だけを相続しないという選択はありません。
現預金などは生前贈与するなどの事前対策が重要になってきます。
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ちなみに、一度相続してしまった場合は、後から相続放棄することはできません。
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