税の申告漏れなどの防止を目的に2013年より国外に5000万円を超える財産がある人は「小規模企業共済等掛金控除」と同じく重要な法定調書である「国外財産調書」というものの申告が義務付けられています。

未提出や虚偽の申告に関しては罰則も設けられているため、海外資産を一定以上持つ方は注意が必要です。

今回は海外資産の申告義務と国外財産調書制度の内容、それと一般の個人投資家に対する影響についてまとめます。

国外財産調書提出の対象となる人は?

各年末(12月31日)時点で海外に5000万円を超える国外財産を持つ個人(日本の居住者)が対象です。非永住者(日本国籍がなく、過去20年以内に日本国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年以下である個人)は対象外となります。

個人が対象なので、法人で所有する場合は対象外です。

制度は2013年に始まっていますが、国税庁の発表によると最新の統計データである2024年分(令和6年分)の提出件数は1万4,544件、財産総額は8兆1,945億円に達しています。

年分 提出件数 財産総額
2016年分 9,102件 3兆3,015億円
2023年分 1万3,243件 6兆4,897億円
2024年分(最新) 1万4,544件 8兆1,945億円

このように提出件数・財産総額ともに右肩上がりで過去最高を更新し続けており、資産の海外保有に対する税務当局の関心も非常に高まっています。

なお、国外財産調書の提出期限は、その年の翌年6月30日となっています(税制改正により従来の3月15日から変更されました)。

国外財産の定義と評価

国外財産とは、たとえば、不動産(土地建物)、貴金属、海外の銀行口座にある預金、海外の証券口座にある株式や債券等の有価証券、海外で契約した保険、海外の金融機関等に信託している信託財産などを指します。

評価は「時価」で行います。取得価格ではない点に注意して下さい。たとえば4000万円で買った海外の不動産が値上がりして年末時点で時価評価で5000万円を超えていれば調書提出の義務が生じます。

国外財産調書の未提出や虚偽申告には罰則もある

国外財産調書に虚偽の記載をして提出した場合や、正当な理由なく期限内(翌年6月30日)に提出をしなかった場合、1年以下の懲役、または50万円以下の罰金という刑事罰が科されることがあります。

また、調書を提出せず、確定申告で国外財産に関する収入を申告していない場合には、過少申告加算税や無申告加算税が5%加重されるペナルティ(加算税の加重措置)もあります。

逆に、国外財産調書を適切に提出していた場合には、万が一その財産について申告漏れが発覚しても加算税が5%軽減されるというインセンティブ措置も用意されています。

国外財産調書で海外資産による脱税がしにくくなる

国外財産調書を提出させる目的は海外資産の把握とそれによる収入の捕捉をより強化することと言われています。

たとえば、海外に株式投資の有価証券を保有している記録があるのに、それから得られているはずの配当金などの収入が申告されていない場合のように整合性をチェックすることができるようになります。このような形での申告漏れなどを調査することができるようになります。

国際的な監視網(CRS)と今後の強化について
現在、日本を含む100か国以上が参加する「CRS(Common Reporting Standard:共通報告基準)」という非居住者の金融口座情報を税務当局間で自動交換する仕組みが本格稼働しています。そのため、「海外口座の情報は日本の税務署に分からない」ということは実質的にありません。
さらに、2026年の税制改正により、暗号資産(仮想通貨)を含む取引情報もCRSの自動交換対象に拡大されることとなり、2027年には新制度に基づく初回の情報交換が実施される予定です。これにより、海外の資産隠しに対する監視の目はより一層厳しくなっています。

一般の投資家にはどう影響する?

国外財産を5000万円以上保有している人が対象となるわけです。

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代表的なところでは有価証券(株や債券、投資信託)などが挙げられます。たとえば、外国企業の株式や海外籍のファンド(ETFや外貨MMFなど)がどうなるかが気になりますよね?

簡単にまとめます。

国内金融機関で管理されている有価証券は国内・国外を問わず制度の対象外となります。たとえば、楽天証券で管理している海外ETFは外国籍ですが、国外財産には当たりません

一方の海外金融機関で管理されている有価証券は国内外を問わず制度の対象となります。海外のプライベートバンク(金融機関)で買ったトヨタの株式は国外財産に当たるわけですね。このように、海外口座で管理しているものは、たとえ日本企業の株式(国内有価証券)であっても国外財産として判定されます。

こうした有価証券については12月31日の最終価格(時価)で評価を行います。

暗号資産(仮想通貨)の取り扱いについて
近年保有者が増えている暗号資産(仮想通貨)については、財産の「所在地」が保有者の住所地(日本国内)で判定されます。そのため、バイナンス(Binance)などの海外取引所に預けている暗号資産であっても、国外財産調書への記載は不要(国内財産扱い)となります。ただし、総資産額によっては後述する別の調書制度の対象になる場合があります。

「財産債務調書」との違いを理解しておこう

国外財産調書と混同されやすい制度として「財産債務調書」があります。一定以上の資産を持つ富裕層の方は、双方の提出義務が発生する可能性があるため違いを整理しておきましょう。

比較軸 国外財産調書 財産債務調書
対象者 年末時点で国外財産が5,000万円を超える居住者 その年の所得が2,000万円超かつ総財産が3億円以上(または有価証券等の合計が1億円以上)の居住者
提出期限 翌年6月30日 翌年6月30日
対象財産 国外財産のみ 国内外のすべての財産(負債も含む)

その他の財産についてもまとめますが、基本的には税理士などの専門家を入れることをお勧めします。結構面倒です。

  • 不動産:公的機関による表示価格
  • 美術品・その他動産:専門家による見積もり価格あるいは時価
  • 償却資産:専門家による計算・査定

国外財産調書制度における最大に面倒なポイントは時価査定を行わなければならずその費用は当然に納税者持ちという点です。

調書制度の対象になりそうな方はなるべく早めの手続きや専門家に助力を仰ぐようにすることをお勧めします。

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ふかちゃん
マネーライフハック編集長。証券会社で個人向け金融サービスに従事した経験をもとに、2004年より金融・投資・クレジットカード・節約・ポイント活用に関する情報を発信しています。2011年からMoneyLifehackを運営し、2018年3月には月間200万PVを達成。金融サービスの提供側ではなく、利用者目線で実際に使って検証した一次情報をもとに、家計改善に役立つ情報を分かりやすくお届けしています。
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