海外銀行口座開設のメリット・デメリット。日本居住者の確定申告義務やCRSによる監視強化まで徹底解説
海外の銀行口座、海外の預金を使った投資や資産運用、あるいは節税の話というのは定期的にネタになることが多いですね。日本の低金利の預金と比べて高い金利で預金や日本では販売されていない金融商品の購入、あるいは税制上のメリットから利用する方もいらっしゃるようです。オフショア投資などと呼ばれることもあります。
今回はそんな海外口座・海外預金を利用するメリットやデメリットをまとめていきます。
海外口座(海外銀行口座)とは?
日本国内の金融機関(銀行・証券会社)ではなく、香港など海外で運営をしている銀行(証券会社)に開く口座を海外口座と言います。以前はHSBCなどの国際的な金融機関が日本人にとっても代表的でした。
運用配当金が非課税で日本からのアクセスも良い香港などが選ばれることが多いようです(日本居住者は海外の配当金・預金利息も国内で税務申告が必要)。
海外口座のメリットとデメリット
海外口座の大きなメリットはやはり預金金利が高いことや日本では投資ができないような金融商品(投資商品)が多数あることが大きいです。日本では販売されていないようなファンドや保険などもあり、こうしたことを目的とするツアーなども組まれています。
そんな海外口座についてメリットとデメリットをまとめていきたいと思います。
海外口座は金利が高いって本当?
これは半分正解で半分間違っています。海外口座というよりも日本円の金利が極端に低いだけです。日本でも豪ドルの外貨預金などを利用すれば円よりは高い金利が付きます。
ただし、外貨預金を絶対におすすめできない3つの理由でも挙げているように日本の外貨預金は手数料がボッタクリなので、手数料が安い海外口座の方が結果としてスペックがいいという事になります。
ただ、日本でも最近はFX(外国為替証拠金取引)が普及しており、こちらを外貨預金代わりに利用するのであればわざわざ海外口座を持つ必要性はさほど高くないようにも思います。
FXはハイリスクと思われるかもしれませんが、レバレッジをかけなければリスクは外貨預金と同じです。詳しくはFXは怖いと考えている方へ。FXと外貨預金のリスクの差を比較やFX取引業者を徹底比較。目的別におすすめのFX業者を徹底分析も参考にしてください。
税金がかからないって本当?【CRSにより完全に把握されています】
これは認識が間違っています。たしかに資産運用に対する収益に対する課税がゼロだったり日本よりも税率が低い国はたくさんあります。ただし、そうした場合でも日本国内に居住している人は日本で申告して税金を支払う必要があります。
税務当局の監視体制(CRS)の仕組み
かつてのように「海外口座を持っていれば日本の税務当局には把握されない」という認識は完全に誤りです。現在、OECDが定めた国際基準である「CRS(Common Reporting Standard:共通報告基準)」に基づき、各国税務当局が非居住者の金融口座情報を年1回、自動的に交換する仕組みが稼働しています。日本の国税庁はすでに100か国以上と情報交換を行っており、海外資産の動きは網羅的に把握されています。
さらに、税制改正により資金移動業者や暗号資産関連口座も新たにCRSの報告対象に追加され、新制度による情報交換が開始されます。また、日本の金融機関を介した100万円超の海外送金や海外からの受金履歴も、自動的に税務署へレポートが飛ぶ仕組みになっています。
一方で日本の非居住者であれば、税務上のメリットを大きく享受することができます。なお、どの国の居住者でもない状況を継続することを「パーマネントトラベラー(世界を非居住者とみなされる滞在期間だけ滞在して、税金を払わない人)」と呼びます。
海外には有利な保険もあるけど要注意【国外財産調書の義務】
海外で販売されている保険には魅力的な保険もあるようです。海外終身保険のように相続税対策などを目的とした保険などもあるようです。
ただし、こうした方法は日本国にお住まいの方(居住者)がやると脱税となるケースが多いです。実際、前項の「税金もかからない」ということろでも書いたように税務当局はこうした資産の海外移転を厳しくチェックしています。
強化された海外資産の申告義務、国外財産調書制度の内容でも紹介したように罰則を含めてこうした動きを入念にチェックしています。
また、保険としての機能面にも注意が必要です。保険ですので保険事故(死亡等)の際には保険金請求の手続きが必要になりますが、海外であることなどから国内の生保の手続きとは段違いの煩雑さがあります。
口座開設の手続きや口座管理の手間は国内銀行とは違う
勿論、リスクやデメリットもあります。
まずは海外口座というのは当然ですが、その国の人のための銀行サービスです。外国人向けではありません。口座開設についてはオンライン対応を進める銀行がある一方で、シンガポールやスイスなどの大手金融機関や厳格化された一部地域では依然として現地への訪問が必要となります。当然、窓口やサポートでの会話、手続きの書類等は英語などの外国語です。
何らかのトラブルがあったときは日本のように手厚いサービスを期待することはできません。すべて自分で解決する必要があります。
見落としがちなコスト:口座維持費と凍結リスク
海外の銀行では、口座を維持するだけで「口座維持費(口座管理料)」が発生するケースが一般的です(例:バンク・オブ・アメリカでは月額12ドルなど)。一定額以上の最低残高を維持すれば無料になる銀行が多いですが、それを下回ると毎月手数料が差し引かれ、預金金利が高くてもコストで相殺されてしまうことがあります。
さらに、カンボジアの銀行をはじめ、長期間(一般的に1年以上)入出金や取引がない状態が続くと、口座が一時的に凍結されたり、最悪の場合は自動解約されたりするリスクがあることも忘れてはなりません。
日本のペイオフ(預金保護)制度の対象外
万が一、海外の銀行が経営破綻した場合、日本の預金保険制度(ペイオフ:1,000万円まで保護)は一切適用されません。欧州や米国など独自のデポジット保護制度を持つ国や地域もありますが、保護される金額や条件は国ごとに異なり、そもそも預金保護の制度自体が存在しない国もあるため、国内の銀行よりも一段と高い信用リスクを背負うことになります。
詐欺なども多い
海外口座を使った資産運用、節税対策、相続対策といったようなコンサルティングサービスはたくさんあります。海外口座開設のエージェントサービスなどもネットで検索すればたくさん上がってきます。
こうした情報の中には詐欺やそれに近いようなものもたくさんあるようです。国内の話ならぜったいに信用しないような話でも、海外ならそんな知らないことが多い分、騙されやすくなりがちです。
現在における海外口座の主な選択肢の現状
日本人にとっての定番だったHSBC香港の開設が事実上閉ざされた今、海外口座の選択肢は主に以下のように二極化しています。
| 選択肢 | 特徴と現状 | 注意すべきリスク |
|---|---|---|
| 東南アジア系銀行(カンボジア等) | 日本からオンラインでの開設に対応している代理店もあり、比較的口座開設のハードルが低いことで注目されています。 | 米ドル建てで高い金利が得られるメリットの半面、日本の主要行や欧米の大手行と比較して金融機関そのものの信頼性や、国のカントリーリスク、法制度の安定性には懸念が残ります。 |
| 富裕層向けプライベートバンク(シンガポール・スイス等) | 世界最高峰の資産保全や多様な金融商品へのアクセスが可能であり、現在でも最も有力かつ堅実な選択肢です。 | 最低預け入れ金額が数百万円から数千万円規模、あるいはそれ以上の高額な資金力を求められるため、一般的な個人投資家にとっては利用するまでの参入障壁が非常に高いと言えます。 |
海外口座についてのより詳細な金融機関の比較や選び方については、以下の記事でも詳しくまとめていますので参考にしてください。
海外口座と新NISAのどちらを優先すべきか?
もしあなたが資産形成の手段を探しているのであれば、海外口座を検討する前に、国内の「新NISA(少額投資非課税制度)」を十分に活用できているか確認することをおすすめします。
新NISAであれば、年間360万円(生涯で最大1,800万円)までの投資枠に対する運用益が、国内で完全非課税となります。海外口座のような面倒な現地手続きや外国語での対応、為替手数料、毎年の煩雑な海外資産の確定申告などの手間を一切かけることなく、世界中の株式やファンドに日本にいながら投資が可能です。まずは国内の非課税制度をフルに活用するのが資産運用の定石と言えます。
まとめ
以上でまとめたように海外口座・海外預金・海外投資といったように色々な呼び名はありますが、一長一短があります。
トラブルも多いので、自分自身で専門家並みの知識を身に着けるか、信頼できるアドバイザーを見つける必要があるでしょう。
正直言って生活の拠点が日本国内中心で海外に行くことはほとんどない、将来海外で暮らすという事を人生の選択肢に入れていないという人にとって、海外口座や海外預金はさほどメリットのある投資ではないと私は考えます。
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