会社を退職して自営業、フリーランスなどとして生きていく、あるいはしばらく休業したい。こうした時に考えなければならないものの一つに健康保険があります。

病気や怪我をした時の治療費に対する公的な保険で、日本に住む以上は必ず加入する必要があります。会社を辞めた場合には、これまでの会社の健康保険の「任意継続を使用する」か、「国民健康保険に加入し直す」のどちらかを選択するのが基本です。

また、配偶者が働いているのであれば「配偶者が加入する社会保険の被扶養者になる」という選択肢もあります。どの方法が金銭的にお得なのでしょうか?それぞれの制度と、2022年の法改正以降に可能になった切り替えの戦略を比較して解説します。

この記事のポイント

  • 退職後の健康保険は「被扶養者」「任意継続」「国民健康保険」の3択
  • 任意継続と国民健康保険の計算方法の違いとシミュレーション
  • 【重要】法改正で可能になった任意継続の途中脱退と切り替え戦略
  • 会社都合退職の場合の軽減措置と、空白期間の医療費対応

これから収入の見込みがない場合

まず、あなたが退職しその後収入の見通しがなく、配偶者が社会保険に加入しているという場合であれば「被扶養者になる」というのが一番お得です。被扶養者になっても扶養者(配偶者)の支払う健康保険料は変わりません。

ただし、被扶養者になるには所得制限(見込み年収130万円未満)であることに加え、失業給付(失業保険)を受給していないことなどが条件となります。また、2023年以降は社会保険の適用拡大が進み、勤務先の規模等によっては「年収106万円の壁」が適用され、要件が厳格化されているケースもあるため注意が必要です。

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被扶養者になれない場合は、ご自身で「国民健康保険」か「任意継続」の二つのいずれかを選択し、保険料を支払う必要があります。

国民健康保険と任意継続の比較

国民健康保険は、現在「都道府県」が財政運営の主体となり、「市区町村」が窓口となって共同で運営している健康保険です。
一方の任意継続というのは、これまで加入していた「協会けんぽ」や「健康保険組合」に退職後もそのまま加入し続けるというものです。

特別に手続きをしない場合、会社を退職したら自動的に「国民健康保険」に加入することになりますが、退職の翌日から20日以内にこれまで加入していた健康保険窓口で手続きをすることにより「任意継続(任意継続被保険者制度)」を選択することが可能です。

どちらがお得なのでしょうか?それはあなたの年収や家族の有無、退職の理由などによって大きく変わってくるため、一概にどちらがお得とは言えません。ご自身の状況に合わせてシミュレーションを行うことが大切です。

なお、国民健康保険(国保)と健康保険(社保)の違いについては以下の記事でも詳しく説明しているのでこちらもご覧ください。

国保(国民健康保険)と健保・社保(社会保険の健康保険)の違いと、お得さの比較日本は国民皆保険制度が取られており、すべての国民はなんらかの公的医療保険制度に加入しており医療費の自己負担が低く抑えられています。保険証...

社会保険の任意継続の計算

任意継続は、今までの会社の健康保険に最大2年間継続して入ることができる制度です。退職した前日までに2カ月以上の社会保険加入期間があることが前提となります。

在職中の保険料は労使折半(半分会社負担)でしたが、任意継続の場合は会社負担分がなくなり全額自己負担となります。保険料は退職時の「標準報酬月額(月収)」から決められます。

任意継続の保険料上限と組合の違い

任意継続の場合、標準報酬月額には上限が設けられています。協会けんぽの場合は現在「30万円」が上限となっており、在職中の月収がそれ以上であっても、健康保険料は30万円を基準とした額で頭打ちとなります。上限の具体的な金額は毎年改定されるため、最新の保険料率は協会けんぽの公式サイトでご確認ください。

また、企業独自の「健康保険組合」に加入していた場合、独自の付加給付(出産や入院時の手厚い補助)が受けられたり、保険料の上限額や負担率が協会けんぽより低く設定されていたりするケースがあります。退職前にご自身の健康保険組合のルールを確認しておくことをお勧めします。

任意継続の大きなメリットとして、配偶者や子供などの「被扶養者」が何人いても保険料は定額で変わらない点が挙げられます。この点は、後述する国民健康保険とは大きく異なります。

国民健康保険料の計算

国民健康保険料は、世帯の前年の「所得」によって決まります。計算の方法はお住まいの自治体によって異なり、実際に必要な金額も変わってきます。正確な金額を知りたい場合は、お住まいの市区町村の窓口で試算してもらうのが一番確実です。

国民健康保険には「扶養」という概念がなく、世帯単位での加入となります。そのため、所得に応じた「所得割」だけでなく、加入する家族の人数が増えるほど「均等割」が加算され、保険料が増加します。

また、自治体によっては固定資産の所有に応じた「資産割」を採用しているところもあります(近年は減少傾向にありますが、まだ残っている自治体も存在します)。このように、国民健康保険は社会保険と異なり、保険料の割り増し要因が多い構造となっています。

国民健康保険が割高となるケース

  • 扶養するべき家族(妻や子供など)が多い
  • 前年の所得が比較的高かった
  • 資産割を採用している自治体で、多くの固定資産を所有している

国民健康保険が割安となるケース

  • 独身世帯(単身世帯)である
  • 前年の所得が低かった、または大きく減少した
  • 退職理由が会社都合(リストラ・倒産等)であった(後述の特例措置あり)

【シミュレーション目安】任意継続と国民健康保険の比較

実際にどちらがお得になるのか、いくつかのモデルケースでの年間保険料の目安を比較してみましょう(※お住まいの自治体や健康保険組合により金額は変動します)。

モデルケース(退職時) 国民健康保険料(目安) 任意継続保険料(目安)
年収300万円・単身 約20万円 約18万円
年収500万円・扶養家族あり 約45万円 約35万円
年収800万円・扶養家族あり 約80万円 約35万円(※上限到達)

このように、前年収入が高い方や、扶養家族がいる方については、上限額が設定されており扶養の概念がある「任意継続」の方が割安になる傾向にあります。一方、単身で前年所得がそこまで高くない場合は、国民健康保険の方が安くなるケースもあります。

【重要】法改正で可能になった「任意継続からの途中脱退」戦略

以前の制度では、一度任意継続を選択すると「保険料が高いから」という理由で途中で脱退して国民健康保険に切り替えることはできませんでした。しかし、2022年1月の健康保険法改正により、任意のタイミングで任意継続を脱退し、国民健康保険へ切り替えることが可能になりました。

これにより、退職後において最も賢いとされる「切り替え戦略」が取れるようになっています。

おすすめの切り替え戦略
  1. 退職1年目:前年の給与所得が高く国民健康保険料が割高になりやすいため、上限があり扶養も活用できる「任意継続」を選択する。
  2. 退職2年目:退職により前年の所得が大きく下がった状態になるため、国民健康保険料が安くなる可能性が高い。市区町村で試算を行い、国保の方が安ければ「任意継続を脱退し、国民健康保険へ切り替える」

この戦略を取ることで、2年間のトータルでの健康保険料負担を最小限に抑えることができるケースが非常に多くなっています。

会社都合退職の場合は「国保の特例軽減」を必ず確認

会社の倒産やリストラ、解雇といった「会社都合」で退職した方(非自発的失業者)については、国民健康保険料の計算において大きな軽減措置が用意されています。

この特例が適用されると、前年の給与所得を「100分の30」として国民健康保険料を計算してくれます。この制度を利用できれば、任意継続よりも国民健康保険の方が圧倒的に安くなるケースが多いため、ハローワークで雇用保険受給資格者証を受け取ったら、必ず市区町村の窓口で軽減の申し出を行いましょう。

保険証切り替え時の空白期間と医療費の注意点

退職して健康保険が切り替わる際、新しい保険証が手元に届くまでに1〜2週間程度の「空白期間」が生じることがあります。

この期間中に病院へ行く場合、窓口では一旦医療費を全額(10割)自己負担する必要があります。後日、新しい保険証が届いてから、受診した病院の窓口または加入した健康保険の窓口に領収書や申請書を提出することで、保険負担分(7割)が払い戻されます。万が一のために、領収書は必ず大切に保管しておいてください。

実は退職日は超重要(月末か月末1日前か)

なお、配偶者の扶養に入ることができる(寿退社など含む)というのであれば、退職日は「月末の1日前」がお得になるケースがあります。この場合、退職月の社会保険料の負担が必要なくなります。

それ以外の自分で保険料を支払う人は「月末」退職が基本です。月末退職ならその月まで会社の社会保険に入れますが、月末1日前退職だと、その月の社会保険料(健康保険+厚生年金)の支払いが不要になる代わりに、ご自身で国民健康保険料と国民年金保険料を加入して支払う義務が生じます。

※近年は社会保険の適用拡大により、配偶者の勤務先規模等によっては扶養の確認が厳格化されているため、事前に配偶者の会社へ確認しておくことが推奨されます。

詳しくは以下の記事でもまとめています。

会社を辞めるのは月末?月末の1日前?社会保険料負担で考える退職日

以上、会社を退職した後の健康保険の選択肢と、任意継続と国民健康保険の賢い比較・切り替え戦略についてのお話でした。

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ふかちゃん
マネーライフハック編集長。証券会社で個人向け金融サービスに従事した経験をもとに、2004年より金融・投資・クレジットカード・節約・ポイント活用に関する情報を発信しています。2011年からMoneyLifehackを運営し、2018年3月には月間200万PVを達成。金融サービスの提供側ではなく、利用者目線で実際に使って検証した一次情報をもとに、家計改善に役立つ情報を分かりやすくお届けしています。
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