会社から解雇、クビを通告されたような場合、私たち労働者はどのような対応、対処をするべきなのでしょうか?そもそも解雇、クビというのは会社が労働者との労働契約を一方的に解除することです。

解雇には「懲戒解雇」「整理解雇」「普通解雇」の3種類があり、それぞれに違いがあります。会社を解雇されそうだ、退職を促されているというような場合は、正しい知識をもって対処するようにしましょう。泣き寝入りをする必要はありません。

基本的に社員の解雇は簡単にはできない

まず、会社から解雇を言い渡された場合、期間の定めがある場合での期間満了のケースを除き、会社が簡単に従業員を解雇することはできません。

労働契約法第16条において、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当でない解雇は、権利を濫用したものとして、無効とする」と明確に定められており、この強力な法的保護は2026年現在でも変わりません。

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近年では企業が終身雇用の維持は難しいというような発言をしていますが、現在の法体系や過去の判例から考えると、法改正などのルール変更なしに企業側が勝手な判断で従業員を解雇することはできないのです。

解雇の3種類とは?

解雇と一口に言っても、法的には大きく3つに分類することができます。それぞれの定義を正しく理解しておくことが重要です。

懲戒解雇

労働者が刑法に抵触するような非行を行った場合のように、著しい非がある場合に行われる解雇です。長期無断欠勤、横領、不正、飲酒運転などの重大事故、故意や重過失で業務に損害を与えた場合、犯罪行為を行った場合などが挙げられます。

就業規則や労働契約書などに要件が具体的に書かれている必要があります。また、社会通念上、相当ではない場合は規則等で懲戒解雇を定めていても解雇権の乱用として認められないことがあります。

整理解雇

企業業績が著しく悪化するなどの要因で、人員を減らすことでしか会社を存続できないような場合に行われるのが整理解雇です。ただ、業績が悪いからといって自由に行えるわけではなく、過去の判例から以下の4要件(判断基準)を満たす必要があるとされています。

  • 人員削減の必要性
  • 解雇回避努力義務の履行
  • 被解雇者選定の合理性
  • 手続の妥当性

一般的には、企業業績が悪化した場合などにリストラ(事業整理)を行う際に実施されることが多いです。大きな会社の場合は、出向や配置転換、希望退職者募集などを行いながら、それでも必要な場合に最終手段として行われることが多いです。

整理解雇においても、前述の4要件を満たしていない場合は不当解雇とされる可能性が高くなります。

普通解雇

懲戒解雇(懲罰的な解雇)、整理解雇(業績悪化による人員整理)といったものではなく、使用者(会社)が一方的に行う解雇を指します。

特に、中小企業の場合は使用者による主観で行われることも多く、トラブルとなりやすいのはこの解雇です。

理由とされることが多いのが「勤務成績の著しい不良」「勤務態度」「健康上の理由で復職が見込まれない」といったものです。

解雇、クビを言い渡されたら

解雇するというのは企業にとっては厳しいリスクを伴うものです。なぜなら、会社都合で解雇をすると会社の評判が悪くなる恐れがあるだけでなく、国からの労働関係の助成金などが受け取れなくなるケースがあるからです。

そのため、会社はあの手この手を使って「自己都合による退職」を促すようにするケースが多い実態があります。

自己都合退職すると失業保険はどうなるの?

会社にとって会社都合での退職が問題となるように、労働者にとっても自己都合退職は不利になる部分があります。たとえば、会社都合の退職(解雇)なら特定受給資格者となり、「失業保険がすぐにもらえる」「失業保険の給付期間が長くなりやすい」といったメリットがあります。

一方で自己都合退職の場合は、給付制限期間が設けられます。なお、2025年4月1日の雇用保険法改正により、給付制限期間のルールが以下のように変更されています。

条件 給付制限期間(2025年4月以降)
原則(自己都合退職) 1ヶ月(※改正前は2ヶ月)
5年以内に3回以上自己都合退職 3ヶ月(変更なし)
教育訓練受講の場合 給付制限ゼロ(即受給可)

改正によって期間は短縮されたものの、会社都合退職と比較すると依然として不利になります。失業保険については「失業保険の基礎知識。給付条件や給付額、失業中のアルバイトや再就職手当」でもっと詳しくまとめていますのでこちらもご覧ください。

退職勧奨とは?

退職勧奨というのは会社が労働者に対して強制するわけではないが、自発的に退職するように働きかけをすることを言います。いわゆる「肩たたき」などと呼ばれることもあります。

これに応じた場合は会社都合による退職(解雇)ではなく、あくまでも労働者の同意に基づく退職となります。前述のように失業保険上の制限が生じる可能性があります。

ただ、大手企業の退職勧奨においては再就職支援サービスの提供や退職金の大幅な割増といった労働者側にとってのメリットが示されるケースもありますので、一概にダメとは言えません。

「退職勧奨」と「退職強要」の違いに注意

退職勧奨はあくまで任意ですが、これがエスカレートすると違法な「退職強要」となります。

労働者が退職を明確に拒否しているにもかかわらず執拗に退職を迫る行為や、長時間の面談による心理的圧力、「自己都合退職しないと解雇するぞ」といった脅迫的な言動は違法とみなされます。

このような不法行為に対しては、慰謝料(数十万円〜100万円程度)を請求できる可能性があります。また、強要に屈して提出してしまった退職届は、後から意思表示の取り消しを主張することができます。

安易に自己都合退職を選択しない

中には小さなミスなどを示し、「自己都合退職しなければ懲戒解雇として退職金を支払わない」などと脅してくるようなケースもあるかもしれません。場合によっては懲戒解雇に当たるようなケースもありますが、実際に懲戒解雇が認められるようなケースはかなり少ないです。

ちょっとした仕事のミスや成果が上がらないなどを理由に懲戒解雇にはできません。労働者が争う姿勢をとれば会社側が負ける可能性も大きいです。どうしても会社がそう主張するのであれば弁護士などの専門家に相談しましょう。

いきなり弁護士に相談するのはお金もかかるし不安という方は、法テラスなどを利用すれば無料で法律相談に乗ってもらうこともできます。各都道府県の労働局に相談するのも有効な方法です。

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不当解雇を争う「時効」について

不当解雇を争う上で、時間的な制約(時効)があることも知っておく必要があります。

  • 解雇無効の主張(地位確認請求):時効はありません。何年経っても従業員としての地位を主張することは可能です。
  • 未払い賃金の請求:解雇期間中(無効な解雇により働けなかった期間)の賃金請求権は3年で時効消滅します(2020年3月以前の離職による権利は2年)。
  • 不法行為による損害賠償請求:違法な退職強要などに対する慰謝料請求も、原則として損害および加害者を知った時から3年で時効となります。

時効を過ぎると金銭的な請求ができなくなるため、不当だと感じたら早めに行動することが大切です。

解雇予告手当を払えば解雇できる?

懲戒解雇ではなく、整理解雇でもない場合は「普通解雇」となります。

労働基準法では、「30日前に予告するか、1ヶ月分の解雇予告手当を支払うこと」が定められていますが、それを払えば無条件に解雇できるというわけではありません。

会社側は「1ヶ月分払えばいいんだろう!」と主張するケースも多いかと思いますが、客観的で合理的な正当な理由が無く解雇をすることはできません。理由が無い場合は解雇権乱用として解雇は認められません。

それでも会社側が解雇を強行するような場合、解決方法は大きく二つあります。

  1. 今後も会社に残りたい(解雇無効を訴え、従業員としての地位確認を求める)
  2. 解決金を受け取って再就職を頑張る(金銭的解決)

いずれを選択する場合でも、まずは労働局によるあっせんを受けるのがお勧めです。

解雇の妥当性や法的な手続きをしっかりと踏んでいるのかなどを第三者に検討してもらいます。その上で会社に残りたいのであれば解雇撤回をあっせんしてもらい、退職を受け入れるのであれば賃金数カ月分程度の解決金を受け取ることをあっせんしてもらうという形になるでしょう。

解決できなければ迅速な「労働審判」へ

労働局のあっせんで解決できなければ、裁判所が行う「労働審判」を利用する形となるでしょう。

労働審判は両者が主張や証拠の立証を行い、労働審判委員会がその事実を認定する手続きを経て、当事者間の問題を解決する手続きを行います。

労働審判のメリット
通常の裁判とは異なり、原則として3回以内の期日で迅速に審理が行われます。解決までの期間も平均して2〜3ヶ月程度が目安となっており、労働者にとって時間的・金銭的な負担が少ない実用的な制度です。

ここで出された審判の結果を両者が受け入れれば和解と同じ扱いとなります。

片方でも拒否した場合には正式な裁判(訴訟)へと移行する形になります。ただし、労働審判の結果は裁判の判決に近く、事実上裁判に持ち込んでも勝ち目は低いため企業側にも受け入れられやすいという状況があります。

【2026年最新動向】解雇の「金銭解決制度」とは?

2026年現在、労働法制の分野で大きな注目を集めているのが「解雇無効時の金銭救済制度」の議論です。

2025年11月に厚生労働省は有識者検討会を2026年に立ち上げることを決定しました。これまでは裁判で「解雇が無効」と判断された場合、法的には「元の職場に復職する」という結果しかありませんでした。しかし、この新制度が導入されれば、労働者側の申立てにより「一定の金銭(補償金)を受け取って労働契約を終了する」という新たな選択肢が追加される可能性があります。

この仕組みは、すでに人間関係がこじれた職場への復帰を望まない労働者にとって現実的な救済策となる一方で、「企業が金銭さえ払えば解雇しやすくなるのではないか」との懸念から労働組合側は反対の姿勢を示しており、今後の制度化の行方が注目されています。

まとめ

会社からの一方的で不法な解雇を黙って受け入れる必要はありません。

解雇が不当であるならば、明確に戦うと言う選択肢もあります。そして、それをサポートしてくれる公的な機関や、労働審判のような迅速な法的手続きも整っています。正しい知識を身につけ、泣き寝入りはやめましょう。

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ふかちゃん
マネーライフハック編集長。証券会社で個人向け金融サービスに従事した経験をもとに、2004年より金融・投資・クレジットカード・節約・ポイント活用に関する情報を発信しています。2011年からMoneyLifehackを運営し、2018年3月には月間200万PVを達成。金融サービスの提供側ではなく、利用者目線で実際に使って検証した一次情報をもとに、家計改善に役立つ情報を分かりやすくお届けしています。
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