社内預金制度とは?メリット・デメリットと財形貯蓄・iDeCoとの違いを徹底解説
従業員に対する福利厚生の一環として「社内預金」という制度がある会社があります。比較的規模の大きな会社にみられる制度で、新入社員の皆様は諸先輩方から「お得だから利用したほうがいい」と勧められるかもしれません。
今回はそんな社内預金制度の仕組みやメリット、デメリットの他、注意しておくべき点を紹介します。また、社内預金と似た制度でもある「財形貯蓄(ざいけい)」との違いや、最新の金利環境における社内預金の位置づけも併せて解説していきます。
社内預金制度とは?最大のメリットは金利
社内預金制度とは、給料から一定の金額を天引きして会社にお金を預ける任意の制度です。任意の制度であるため、預金する・しないは社員が自由に決めることができます。銀行に預けるわけではなく、直接会社に預ける仕組みです。
【社内預金の利用状況について】
かつては厚生労働省の調査で社内預金制度がある事業者は全国19,000余、利用者数は約50万人とされていました。しかし、労働政策研究・研修機構が2026年3月に公表した「福利厚生に関する労働者調査」などのデータによれば、近年は制度の維持コストや企業側のリスク管理の観点から、制度自体を縮小・廃止する企業も増えており、利用者数は長期的に減少傾向にあります。
社内預金の利率は0.5%以上が確保されている
この社内預金にはもちろん金利が付きます。この金利は厚生労働省令によって下限金利が定められており、2026年現在も下限金利(利率)は0.5%で据え置かれています。0.5%はあくまで下限金利なので、もっと高い金利で社内預金を受け付けている会社もあります。
2024年以降の日銀の利上げ措置等により、銀行の定期預金金利の平均はおよそ0.1878%程度まで上昇してきています。そのため、かつてのように「一般銀行の数百倍の金利」といった圧倒的な差は縮まりつつあります。それでも、社内預金の下限金利である0.5%と比較すると、社内預金の方が2倍以上の金利がつく計算になります。現在の金利環境においても、依然として有利な選択肢の一つであることに変わりはありません。
いつでも出金可能
また、社内預金はいつでも出金可能です。社内預金制度については労働基準法第18条において、従業員から請求された場合は遅滞なく支払うことが義務付けられています。
社内預金と財形の違いと非課税メリット
給料から天引きで貯蓄する制度としては、社内預金制度よりも「財形(財産形成貯蓄制度)」のほうがよく知られていますね。
財形貯蓄と社内預金の違いは、お金の保管先です。社内預金のお金の預け先はあくまでも「会社」です。その一方で財形貯蓄の場合は「通常の金融機関(銀行等)」にお金を預けます。金利についても、それぞれの預け先の金融機関が決めた金利が適用されます。現在の金利状況を見ると、財形貯蓄で社内預金の最低0.5%といった高金利がつくことは難しいでしょう。
しかし、財形貯蓄には固有のメリットがあります。「財形年金貯蓄」と「財形住宅貯蓄」を合わせて元利合計550万円までの利息が非課税になるという税制上の優遇措置です。社内預金の利息には通常通り約20%の税金がかかるため、目的に応じて使い分けることが重要です。
社内預金のリスク・注意点は倒産リスク
社内預金制度の最大のリスクは、「お金を会社に貸している状態」であるということです。
社内預金はあくまでも、労働者(従業員)が会社にお金を預金として貸している状態です。お金を銀行に預ける(預金する)のとは性格が異なります。
実は社内預金について、会社は預金している社員に対して返済する義務はありますが、その資金使途は自由です。預けられた預金は事業の運転資金として利用することも認められています。そのため、会社に万が一のことがあってお金を使い切ってしまっている場合に、社内預金が戻ってこないというリスクも少なからずあるわけです。
一応、保全措置は取られているはず……
社内預金は、毎年3月31日現在の受け入れ預金額の金額について保全措置をとることが求められています。具体的な保全措置は以下の4つの中からいずれかを選択しておく必要があります。
- 金融機関等による保証契約
- 信託会社との信託契約
- 質権又は抵当権の設定
- 預金保全委員会を設置し、貯金管理勘定等の適当な措置を講じる
ただし、こうした保全措置が取られていたとしても、平常時には意味があるかもしれませんが、会社が倒産した場合には手続きが難航し、あまり意味がなくなってしまうケースもあります。
会社が倒産したときの社内預金の返金の優先度は低い
会社が倒産した場合の債務の返済順位として、従業員に対する給料は先取特権が認められているため、他の借金よりも優先して支払いが行われます。
一方で社内預金というのは、あくまでも従業員が会社にお金を貸しているという「一般債権」になるため、返済の優先順位は低いです。会社が倒産したというケースでは、預けたお金が一円も戻ってこないという事態も想定しておく必要があります。
社内預金制度が廃止される場合の対応
近年、企業が制度を見直し、社内預金を廃止するケースも増えています。
制度が廃止される場合、労働基準法上の手続きとして企業は一定期間前に従業員へ通知する義務があります。廃止の際には、預金を引き出して個人の口座に移すほか、要件を満たせば「一般財形貯蓄」などへ預け替え(移換)が可能なケースもあります。会社から制度変更の通知があった場合は、案内に従って速やかに手続きを行いましょう。
まとめ。社内預金は持ち株会同様に会社のリスクがある
社内預金制度は利率も高いため、従業員にとっての有利な資産形成手段となります。その一方で、会社が倒産した場合にはせっかくの預金がゼロになってしまう可能性もある運用方法です。
これは自分の会社の株を有利に買うことができる「従業員持ち株制度」とも同様のリスクがあります。
それは、給料という収入面だけでなく、資産という部分まで特定の会社に依存してしまうということです。収入は会社からのサラリーだけ、さらに資産は社内預金と持ち株会。高度経済成長期のサラリーマンであればそれでまとまった資産を築けたかもしれません。
一方で、大企業と呼ばれた会社でも危機に陥る時代です。収入も資産も一つの会社に大きく依存するのはリスクといえるでしょう。
有利な制度には間違いないけど……
もちろん、社内預金制度は金利の面で比較的高めの水準が保証されているため、有利な制度であることには違いありません。
社内預金は、いつでもすぐに解約(返金)してもらうことができるということになっているので、万が一の経営不安を感じ取った場合は、できるだけ早めに解約の手続きをとることをお勧めします。
ちなみに、社内預金と同様に天引きされる財形貯蓄の場合、従業員から天引きされた資金は従業員名義で金融機関に預けられているので、会社が倒産した場合でも全額が保護されています。
個人型確定拠出年金(iDeCo)も一考
資産形成の手段としては、個人型確定拠出年金(iDeCo)の活用も非常に有効です。iDeCoも手続きをすれば給料からの天引きが可能です。
2026年12月には年金制度改正法が施行され、iDeCoの利便性が大幅に向上します。会社員・公務員の拠出上限額は最大月額55,000円から月額62,000円へ、自営業者等も月額68,000円から月額75,000円へ引き上げられます。さらに加入可能年齢の上限も65歳から70歳へと拡大されます。
利率は運用次第となりますが、掛け金の全額が所得控除の対象となり、所得税や住民税の節税につながるという大きなメリットがあります。iDeCoであれば会社の倒産とはまったく無関係に、自分の資産を税制上有利な方法で作っていくことができます。
以上、社内預金のメリットとデメリットについて解説しました。金利は高いですが会社の倒産リスクもあるため、財形貯蓄やiDeCoなどと違いを理解した上で、バランスよく資産形成を行いましょう。
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