専業投資家として、あるいは兼業投資家として株で利益を出して税金を払っているという方もたくさんいらっしゃるかと思います。そんな株の儲け(利益)で税金(所得税等)を払っているということは、今話題となっているふるさと納税についてもその株の所得を利用して行うことができるのでしょうか?

まず、結論から言うとふるさと納税に利用することができます。ただし、一定の条件もあります。また、人によっては申告をすることでふるさと納税によるメリットよりも扶煙から外れる、国民健康保険料(税)が増えるといったマイナスの影響の方が大きい人もいます。

今回はそんなふるさと納税と「株式投資の利益(所得)」の関係について、2024年以降の重要な税制改正や最新の制度状況を踏まえてまとめていきます。

ふるさと納税とは?

地方自治体に寄付をすることで、寄付金控除が利用できる制度です。寄付をすることでもらえるお礼の品(返礼品)の内容などを考えると、実質的に2,000円の自己負担でお礼の品がもらえるという大変お得な制度になっています。

お肉や魚介類、野菜、米、果物など、地域の魅力的な特産品がお礼としてもらえることで高い人気を集めています。なお、現在のふるさと納税制度では、返礼品は「地場産品」に限定されるなどのルールが厳格化されているため、過去に見られたような地域と関係のない海外製の電子機器類などは原則として受け取れなくなっています。

詳しい制度内容については「ふるさと納税の基本。特産品・特典をもらって得をする仕組み、計算方法」をご覧ください。

確定申告をしていれば、株式投資の利益もふるさと納税の対象にできる

まず、株式投資の利益・所得については特定口座での売買の場合、「証券会社に源泉徴収してもらう(申告不要)」と「証券会社に計算だけしてもらってそれをもとに自分で申告する(申告分離課税)」という方法の二つがあります。

特定口座(源泉徴収あり)のままで申告不要を選択している場合は、株の利益がどれだけあっても住民税の計算には反映されません。しかし、あえて確定申告(申告分離課税)を利用した場合には、その所得分が住民税の所得割額として反映されることになります。

ふるさと納税の寄付金控除上限額は「住民税所得割額」によって決まります。

したがって、株の譲渡益や配当金を確定申告することで住民税所得割額が増加することになり、ふるさと納税の寄付上限額もその分だけ増やすことができる仕組みになっています。

注意!2024年からの税制改正による重要な変更点

ここで重要な注意点があります。2023年までは「所得税では申告するが、住民税では申告不要にする」という裏技(住民税の申告不要制度)を選択することができました。これにより、所得税の還付を受けつつ住民税所得割額を増やさないことで、国民健康保険料への影響を避けるといった立ち回りが可能でした。

しかし、税制改正により2024年1月以降(2023年分以降の確定申告)からはこの制度が廃止され、所得税と住民税の課税方式が完全に一致することになりました。現在は所得税で確定申告をすると、自動的に住民税にもその情報が反映されるため、のちほど解説する国民健康保険料や扶養への影響をより慎重に見極める必要があります。

新NISA口座での利益は対象外

もう一つの注意点として、現在の新NISA(少額投資非課税制度)口座内で得た譲渡益や配当金は、そもそも完全に非課税であり確定申告の対象外です。そのため、NISA口座でどれだけ利益が出たとしても、ふるさと納税の寄付上限額が増加することはありません。上限額が増えるのは、あくまで課税口座(特定口座の源泉あり・なし、一般口座)で出た利益を確定申告した場合のみです。

株の譲渡益や配当金を申告するといくら寄付できるようになる?

ふるさと納税において最低自己負担額(2,000円)で寄付ができる金額は下記の計算式で求めることができます。詳しくは「ふるさと納税の限度額の目安。年収や過去の住民税から計算する方法」もご一読ください。

=住民税所得割額×20%÷(90%-(所得税率×1.021))+2,000円

上記で計算をすることができます。所得税率の所にはそれぞれの課税所得に応じた所得税率を入れてください。10%なら10です。

住民税所得割額がどれだけ増える?

株の利益に対する税金は全体で20.315%ですが、内15.315%は所得税(国税・復興特別所得税込)となり、残りの5%が住民税として課税されています。そのため、確定申告した株の利益(所得)の5%分が、そのまま住民税所得割額の加算分と考えてもらえればいいです。

仮に1年間の株の売買益や配当金が100万円あったという場合は、その5%である50,000円が住民税所得割額に上乗せされることになります。

100万円の株の譲渡益・配当金でどれだけふるさと納税の寄付可能額は増える?

上記の計算式の住民税所得割額に「利益の5%(100万円なら50,000円)」が上乗せされます。

あとは、その人の本業の所得などに応じた所得税率(5~45%)によって、どれくらい上限がアップするかの変数が決まります。それぞれの所得区分ごとに、100万円の株の利益を確定申告した際のざっくりとした寄付可能額の増加目安は以下の通りです。

所得税率 100万円の譲渡益・配当金で生じるふるさと納税限度額UPの目安
5% 約11,779円
10% 約12,533円
20% 約14,372円
23% 約15,034円
33% 約17,760円
40% 約20,342円
45% 約22,699円

このように、株の利益を申告すればふるさと納税で寄付できる枠を広げることができます。正確な上限額を知りたい場合は、総務省のポータルサイトや各ふるさと納税ポータルサイト(さとふる、ふるなび等)が提供している、株の譲渡所得・配当所得の入力に対応した詳細シミュレーターを利用するのが便利です。

専業投資家や自営業、主婦の方は要注意!マイナスの影響が出るケース

この方法の最大の注意点としては、株の儲けを確定申告することで、扶養や国民健康保険料などに大きな影響が出てしまうという点です。

良かれと思ってふるさと納税のために確定申告をした結果、「株式投資の利益に対する税金の申告方法・支払い方法の違い」でも説明したとおり、家族の扶養から外れてしまったり、国民健康保険料が大幅に高くなったりして、ふるさと納税の得を遥かに上回る大損をしてしまう問題が起こる場合があります。

専業投資家・個人事業主の方(国民健康保険加入者)

投資家としての収益だけの方や個人事業主は、法人化していない場合は国民健康保険に加入しているはずです。このときの国民健康保険料(税)は、前年の総所得金額等をもとに算定されます。

特定口座(源泉徴収あり)のままで申告不要にしている場合、いくら利益があっても所得なしとみなされるため、国民健康保険料への影響はありません。しかし、ふるさと納税のために株の儲けを確定申告してしまうと、その利益が丸々「総所得金額等」に加算されることになります。結果として、翌年の国民健康保険料が数万〜数十万円も跳ね上がってしまうケースがあるため、国保加入者は基本的に株の利益を申告しない方が賢明なことが多いです。

主婦(主夫)の方(扶養内に入っている場合)

主婦(主夫)をしていて配偶者が給与所得者(サラリーマン)の場合には、さらに影響が深刻です。こうした場合は配偶者の税法上の扶養(配偶者控除・配偶者特別控除)や、健康保険・年金などの社会保険上の扶養に入っているケースが多いかと思います。

しかし、株の儲けを確定申告してしまうと、その利益が本人の所得としてカウントされます。所得が一定の基準を超えると、税法上の扶養から外れて配偶者の税負担がアップするだけでなく、社会保険上の扶養(年収130万円基準など)からも外れてしまうリスクがあります。社会保険の扶養から外れると、自ら国民健康保険に加入して保険料を納めなければならなくなるほか、国民年金の第3号被保険者から第1号被保険者へ切り替わることで国民年金保険料の自己負担も発生し、世帯全体で大赤字になってしまう可能性があります。

この点については「主婦(主夫)は把握しておきたい株式投資と税金のまとめ」でも詳しくまとめています。

株式投資で儲かっているサラリーマンは申告するとお得な場合が多い

一方で、勤務先の社会保険(健康保険組合や厚生年金)に加入しており、特定口座で株の利益を出しているサラリーマンの方は、確定申告をしてふるさと納税の寄付上限額をアップさせる方法が非常に魅力的な選択肢となります。

なぜなら、サラリーマンが株の利益を確定申告して住民税所得割額が増えたとしても、本人の社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)が上がることはないからです。会社員の社会保険料は、4〜6月の標準報酬月額という給与所得のベースのみで決定されるため、副収入である株の譲渡益や配当金をいくら申告しても影響は一切ありません。

所得が増えた分だけふるさと納税をたくさんすることができるようになるため、純粋に特産品を多く受け取ることができ、資産運用と家計の節約を両立させることができます。

ただし、各種手当や就学支援金の所得制限には注意

サラリーマンであっても、住民税所得割額や総所得金額等を基準とする公的な補助金・助成金、手当などを受けている場合には注意をしてください。

児童手当について
児童手当は法改正(2024年12月施行)により、それまで設けられていた所得制限が完全に撤廃されました。さらに支給対象も高校生(18歳を迎える年度末)まで拡大されています。そのため、現在は株の利益を確定申告して所得が増えたとしても、児童手当の受給額が減額されたり支給停止になったりする心配はなくなりました。

高校卒業まで支給拡大!2026年最新の児童手当の仕組み・金額と知っておくべき手続き児童手当とは、子育て世帯を対象に支給される大変重要な公的手当金制度です。この児童手当について、かつては毎年6月に受給要件を確認するための...

高等学校就学支援金(高校無償化)
いわゆる高校の授業料無償化にともなう支援金についてもかつては所得制限がありましたが、2026年度分より廃止されていますのでこちらも気にする必要はありません。

【2026年最新】高校無償化(就学支援金)が所得制限撤廃!支給額や初期費用の注意点、都道府県の独自支援まで徹底解説2026年4月より、高校の授業料に対する国の支援制度が大きく拡充されました。今年度、高校へ入学されるお子様を持つご家庭にとって、今回の「...

独身の会社員の方などで株の利益が出ている場合は、「源泉徴収あり」の口座であってもあえて申告をすることで、ふるさと納税の枠を賢く広げることができそうです。

なお、株の利益を確定申告する際は、「確定申告をした方はふるさと納税のワンストップ特例制度が使えない。過去の分は「更生」を利用しよう」でも書いたとおり、ワンストップ特例制度を利用することはできなくなります。特定口座の年間取引報告書をもとに株の確定申告書を作る際、ふるさと納税の寄付金控除(寄付受領証明書など)も一緒にまとめて税務署に申告することを忘れないようにしましょう。

まとめ

以上、株式投資の利益でふるさと納税を利用する方法と、それぞれの属性における注意点を紹介しました。

会社員の方はメリットを受けやすい一方で、2024年からの住民税申告不要制度の廃止にともない、国保加入者や扶養内の主婦・主夫層にとってはリスクが大きくなっています。自分のライフスタイルや家族の口座状況に合わせて、慎重に判断してください。

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ふかちゃん
マネーライフハック編集長。証券会社で個人向け金融サービスに従事した経験をもとに、2004年より金融・投資・クレジットカード・節約・ポイント活用に関する情報を発信しています。2011年からMoneyLifehackを運営し、2018年3月には月間200万PVを達成。金融サービスの提供側ではなく、利用者目線で実際に使って検証した一次情報をもとに、家計改善に役立つ情報を分かりやすくお届けしています。
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