国民年金が払えないときは免除や猶予の申請をしよう
20歳以上の方で自営業の方やフリーランスの方、あるいは失業中の方が加入している国民年金。国民年金の保険料は年々値上がりしており、2026年度(令和8年度)は月額17,920円となっています。仕事がある方は別として、失業中の方や収入が減少している方などにとって、毎月この保険料を負担しなければならないのはきつく、未納(滞納)しているという方も少なくないかもしれません。
しかし、支払えないからといって消極的手段として滞納を続けるのは得策ではありません。そのまま放置せず、現在の状況を役所や年金事務所に相談してみましょう。国民年金には、経済的な理由で納付が困難な人のために、免除や猶予といった柔軟な対応をしてもらえる制度がしっかりと用意されています。
国民年金には免除や猶予の制度がある
国民年金は収入の減少、失業などによって経済的に国民年金保険料を支払うことが難しい人に対して、免除や納付猶予といった制度を設けています。これらの制度を利用することで、将来の年金受給権を守りながら、現在の経済的負担を軽減することができます。
国民年金保険料免除制度
前年の所得等が一定額以下の場合や、失業した場合などは、本人が申請書を提出して承認されると保険料の納付が「全額」「4分の3」「半額」「4分の1」の割合で免除されます。原則として7月から翌年6月までの保険料が対象となり、1月〜6月に申請する場合は前々年の所得、7月〜12月に申請する場合は前年の所得が審査対象になります。ただし、本人が失業等で無職となった場合は「退職特例」が利用できます。
雇用保険の離職票や雇用保険受給資格者証などのコピーを添付して申請すれば、本人の所得をゼロとして扱ってもらうことができます。そのため、配偶者が主婦(主夫)で世帯全体の所得が基準を満たしていれば、免除はほぼ認められるはずです。
免除の承認基準は下記の通りですが、結婚している方や両親が世帯主などの場合は、配偶者や世帯主の所得も併せて審査対象となります(世帯単位の所得が審査対象です)。つまり、本人は無職であっても、同居する父親に一定以上の所得があったり、配偶者に所得があったりすると対象外となるケースがあります。ちなみに審査は世帯全員の所得を合算するのではなく、それぞれの所得が基準を満たしているか個別に確認されます。
子供の分も払えといわれる親御さんは大変ですが、親御さんが代わりに年金を支払うと、親の所得税や住民税から全額を社会保険料控除として差し引くことができます。詳しくは「収入がない子供の国民年金保険料は親が払うことで所得税・住民税が安くなる」もご覧ください。
免除された部分は保険料を納める必要はありません。経済的に余裕が出た場合は、10年以内であれば将来「追納」して年金額を満額に近づけることが可能です。
・全額免除
前年所得が(扶養親族等の数+1)× 35万円 + 32万円以下。
単身世帯(扶養親族なし)なら67万円以下です。扶養親族1名なら102万円です。
・3/4免除
88万円 + 扶養親族等控除額 + 社会保険料控除額等
・半額免除
128万円 + 扶養親族等控除額 + 社会保険料控除額等
・1/4免除
168万円 + 扶養親族等控除額 + 社会保険料控除額等
所得というのはお給料などの受け取ったお金の額面(収入)から各種控除(給与所得控除など)を差し引いたものです。ちなみに、収入が給与のみ(パートやアルバイト含む)であれば、年収が給与所得控除55万円を足した122万円以下の場合に、全額免除基準の所得67万円以下となります。詳しくは「収入(年収・給与)と所得の違いを理解しよう」もご覧ください。
基準式にある社会保険料控除額等というのは「国民健康保険料」や「国民年金保険料」のうち、前年に実際に払った金額の合計です。3/4免除以下の免除を受けたいという場合は、前年にしっかりとこうした保険料を払っていた方ほど、社会保険料控除によって所得が低く抑えられるため審査に通りやすくなるという側面があります。
保険料全額免除でも半分は払ったことになる
実は国民年金の保険料拠出は、その2分の1(1/2)が国庫負担(税金)となっています。月額約18,000円の年金を支払っている場合、国も同額の負担をしてくれているイメージです。
そのため、申請して全額免除が認められた人でも将来もらえる年金額の50%(1/2)は保障されます。同様に、3/4免除の方は62.5%(5/8)、半額免除の方は75%(6/8)、1/4免除の方は87.5%(7/8)分の年金を支払ったものとして将来の年金額が計算されます。これは非常に大きなメリットですよね。
※一部免除(3/4、半額、1/4)の承認を受けた場合は、免除されなかった残りの保険料を期日までにしっかりと支払うことが年金額に反映される前提条件となります。
知っておきたい産前産後免除と法定免除
申請によって所得審査が行われる免除のほかにも、以下のような免除制度があります。
・産前産後期間の保険料免除
出産予定日または出産日が属する月の前月から4ヶ月間(多胎妊娠の場合は3ヶ月前から6ヶ月間)、国民年金保険料が免除されます。この制度の最大の特徴は、免除期間中であっても「保険料を満額納付したもの」として将来の年金額に100%反映される点です。所得制限はなく、自営業やフリーランスの方も届出によって利用できます。
・法定免除
障害基礎年金(1級または2級)を受給している方や、生活保護法による生活扶助を受けている方などは、法律に基づき当然に保険料が免除されます。役所や年金事務所へ届出書を提出することで適用され、全額免除と同様に将来の年金額には2分の1相当が反映されます。
国民年金保険料納付猶予制度
納付猶予は、免除とは異なりあくまでも支払いを「猶予(先送り)」する制度で、将来的に追納して支払うことを前提としています。ただし、未承認の「滞納」と決定的に違うのは、保険料をリアルタイムで払い込まなかったとしても「年金受給資格期間(10年)に含まれる」という点にあります(その後追納しなかったとしても未納扱いにはなりません)。
国民年金(公的年金)は老後の生活資金(老齢年金)だけでなく、加入者が死亡したときの遺族補償(遺族年金)や、病気やケガで障害を負ったときの補償(障害年金)といった、万が一のセーフティネットとしての極めて重要な役割もあります。こうした不測の事態に、未納が原因で「受給資格なし」となって補償が受けられなくなるリスクを防ぐためにも、どうしても払えないのであれば必ず納付猶予の手続きを行うべきです。
また、当然のことですが、猶予制度が承認されている期間中に督促や催告が行われることはありません。近年は未納(滞納)に対する国や日本年金機構の対応が非常に厳しくなってきています。詳しくは「年金(国民年金)を滞納するとどうなる?延滞金、差し押さえ、払えない時の対策」でも説明していますが、最終的には給与や預金口座の差し押さえといった強制執行に動く可能性もあります。要件を満たしているなら、放置せずにしっかりと猶予の申告を行いましょう。
納付猶予に関する制度には、大きく分けて以下の2種類があります。
1) 学生の納付特例
大学や専門学校などに通う学生が利用できる納付猶予制度です。学生本人の前年所得が「128万円 + 扶養親族等の数 × 38万円 + 社会保険料控除等」以下であれば利用することができます。収入がアルバイトなどの給与のみであれば、年収に換算して193万円以下が目安となります。20歳を迎えた学生の方は、自分で保険料を納めるのが難しい場合、必ずこの手続きを済ませておきましょう。
2) 納付猶予制度(50歳未満)
50歳未満の方が利用できる制度です(法改正により令和12年(2030年)6月までの期限付き措置として延長されています)。所得の基準は全額免除・一部免除と同様ですが、通常の免除申請と異なり、審査対象となるのは「本人」と「配偶者」の所得のみとなります。世帯主(同居の父親や母親など)に多くの所得があっても、本人と配偶者の所得が基準以下であれば承認されるため、実家暮らしのフリーランスの方などにとって利用しやすい設計になっています。
なお、免除制度とは異なり、猶予制度(学生納付特例を含む)の期間分は将来の年金額に国庫負担分(1/2)が反映されません。つまり、猶予されたまま放置すると将来もらえる年金額はその分少なくなってしまいます。そのため、就職したり経済的なゆとりが生まれたりした際には、速やかに追納することをお勧めします。
ちなみに国民年金の追納や後納のルール、その必要性については「国民年金の免除や猶予、未納における納付・後納・追納と必要性」でも詳しくまとめています。
【2026年最新】知っておきたい新制度と便利な申請方法
フリーランスに朗報!2026年10月開始の「育児免除制度」
2026年10月より、国民年金の第1号被保険者(自営業者、フリーランス、無職など)を対象とした新しい免除制度「育児免除制度」がスタートします。
これは、子どもが1歳になるまでの最大12ヶ月間、所得の多寡に関わらず国民年金保険料が全額免除される画期的な制度です。さらに、この免除期間は「保険料を満額支払ったもの」として将来の年金額の計算に100%反映されます(会社員が育児休業中に厚生年金保険料を免除されるのと同様の扱いとなります)。実父母だけでなく養父母も対象となりますので、該当する方は産前産後免除と併せて最大13ヶ月間の強力なサポートを受けることができます。
スマホで完結!マイナポータルからのオンライン申請
わざわざ役所の窓口に行ったり、書類を郵送したりしなくても、現在は「マイナポータル」を利用したオンライン申請に対応しています。スマートフォンとマイナンバーカードがあれば、自宅にいながら「国民年金保険料の免除・納付猶予申請」や「学生納付特例申請」の手続きを数分で完了させることができます。申請後の審査結果や承認状況についてもマイナポータル上で確認できるため、払い忘れや手続き漏れを防ぐためにもぜひ活用してみてください。
支払えるようになったら検討したい「前納」による割引
経済状況が好転し、保険料を問題なく支払えるようになった場合は、保険料をまとめて前払いする「前納(ぜんのう)」制度を利用するとお得になります。国民年金保険料は、6ヶ月分、1年分、2年分といった単位で前納することができ、期間が長いほど割引額が大きくなります。特に「2年前納(口座振替)」を選択すると、年間でまとまった額の割引を受けることができます。少しでも支払うコストを下げたい場合は、日本年金機構の公式情報を確認のうえ、手続きを検討してみると良いでしょう。
以上、資産形成や生活設計、万が一の備えとして知っておきたい国民年金の免除・猶予制度の仕組みについてご紹介しました。払えない時はそのままにせず、まずは自分に合う制度を申請して家計の安全を守ることから始めてみてください。
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