本業はフルタイムで働きながら、夜間や土日などの空いた時間に別の職場でアルバイトをするというダブルワークをしている方も少なくないかと思います。そんなダブルワークをするときの所得税や住民税、社会保険や雇用保険といった手続きの基本と働く時間などをどのように調整するべきなのかをわかりやすくまとめていきます。
ダブルワークにおける税金・社会保険・雇用保険の問題
会社に勤めて働くというとき、給料からは税金が源泉徴収されます。また、勤務状況によっては社会保険(健康保険+厚生年金)や雇用保険(失業保険・労災保険)などにも加入することになります。
ただ、これが2か所以上で働いたときはどうなるのでしょうか?
簡単にまとめると下記のようになります。
税金(所得税・住民税) | 従たる給与先(一般に副業先)では所得税が乙欄課税(源泉徴収)されます。最終的には主たる給与先の収入と合わせて確定申告が必要になります。 住民税は主たる給与から翌年特別徴収されるのが一般的です。 |
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社会保険(健保+年金) | 副業先で社会保険の加入要件を満たせば両方で加入することになります。 社会保険の加入要件を満たさない場合は加入しません。保険料や給与などの扱いは1社勤務の場合と同様です。 |
雇用保険 | 雇用保険に関しては1か所でしか加入できません。生計を維持するに必要な 主たる賃金を受ける一つの事業主において雇用保険に加入することになります。 |
もう少し詳しく、個別にみていきましょう。
ダブルワーク時の所得税や住民税の取り扱い
まず、メインで働いている勤務先からの給与が「主たる給与」そして、ダブルワーク先(アルバイト先)からの給与が「従たる給与」となります。この決め方は自由で、扶養親族申告書を提出した先が主たる給与を受け取っている先となります。
所得税の計算と申告、納付
従たる給料からは所得税がやや高めの税率で源泉徴収されます(乙欄課税)。最終的には主たる勤務先からの源泉徴収票とダブルワーク先の源泉徴収票を使って翌年2月16日から3月15日の1カ月間の間に最寄りの税務署で確定申告をして税額を最終決定し納付します。
なお、主たる給与以外の収入が年20万円以下の場合には所得税の申告不要制度があります。
ただし、他の理由で確定申告をする場合には確定申告が必要です。なお、この申告不要制度についてはあくまでも所得税のみが対象で住民税については規定がありません。そのため、住民税分については申告が必要となります。住民税のみの申告は市役所で行います。
2017年1月~のアルバイト(労働)についてはマイナンバーの提出が義務化されているうえ、勤務先(ダブルワーク先)からも給与支払報告書が市町村に提出されているため、ばれないということはないです。
住民税の計算と申告、納付
住民税の申告は税務署で確定申告を行った場合は不要で、20万円以下申告不要などで申告をしなかった場合は市役所で行います。ダブルワークのように主たる給与を受け取っている先がある場合は、前年分の所得に対する住民税が、主たる給与先の給料から特別徴収(源泉徴収)されます。
なお、申告時に一般徴収を希望するにチェックを入れておけば、副業分の住民税は個人の住所に請求が行くことになりますが、これは確実ではありません。原則としては給与所得がある場合は特別徴収となります。市区町村によっては特別対応として一般徴収としてくれる場合もあるそうです。
副業バレを気にする人はご注意ください。
ダブルワーク時の社会保険
ダブルワークをするときの社会保険(健康保険+厚生年金)の取り扱いについて説明していきます。まず、社会保険に対しては下記の加入要件があります。
1)正社員の3/4以上の勤務時間、勤務日数を働いている人
こちらです。たとえば月20日、160時間勤務が基本の会社の場合、月15日以上、120時間以上を勤務する場合は社会保険の加入予見を満たします。また、2016年10月以降は従業員501名以上の会社においては下記の条件となっています。
1)週の労働時間が20時間以上
2)賃金月額が月8.8万円(年106万円以上)
3)1年以上の使用されることが見込まれる
この条件を満たす場合は社会保険に加入、満たさない場合は加入となりません。
メインのみで満たしている | メインのみの社会保険に加入します。保険料や給付はダブルワークをしても変わりありません。 |
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両方で満たしている | 両方の会社で社会保険の加入条件を満たしている場合、標準報酬月額を両社の合計金額で計算したうえで、両方の会社で保険料を按分することになります。 |
両方とも満たしていない | 社会保険には加入できず、国民健康保険と国民年金に加入することになります。両方の会社の合計なら加入条件を満たしたとしても社会保険には加入できません。 |
副業的にアルバイトをする場合は、社会保険料が高くならないというのはいいかもしれませんね。
ダブルワーク時の雇用保険・労災保険
労働保険(雇用保険・労災保険)についてはどうなるでしょうか?
まず、労災保険については全員加入かつ労働者の負担はありませんので、メイン先、アルバイト先でも加入することになります。一方の雇用保険については1か所でしか加入できない決まりになっています。
雇用保険の加入資格、要件は下記のとおりです。
1)一週間の所定労働時間が20時間以上
2)31日以上継続して雇用される見込みである
3)雇用保険の適用事業所に雇用されている
メインのみで満たしている | メインの勤務先で雇用保険に加入することになります。 |
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両方で満たしている | 生計を維持するに必要な 主たる賃金を受ける一つの事業主において雇用保険に加入することになります。 |
両方とも満たしていない | 雇用保険には加入できません。 |
ダブルワーク希望者を雇用する場合の注意点(事業主向け)
最後に、労働者側ではなく、雇用者側である事業主向けにダブルワーク希望者の雇用の注意点です。
特にフルタイム勤務者の+αのダブルワークの場合、法的には「残業」に該当することになります。1日8時間以上の労働に対しては副業であっても残業代として割増賃金が適用されることになります。
労働基準法第38条によると「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」と定められています。つまり、8時間労働の仕事終わりのサラリーマンを雇用する場合は、アルバイトの時間はすべて割増賃金が適用されることになってしまいます(25%増)
言い換えれば、労働者としてはダブルワークとして雇われた場合には雇用主に対して残業代を支払うように請求する権利があるということになります。まぁ、確実に関係は悪化するでしょうが。
以上、ダブルワークや副業などで2か所以上から給料をもらうときの税金や社会保険、雇用保険などの申告や加入の義務などについてまとめてみました。
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