最近では、インターネットを利用してお仕事を受託することも簡単になってきています。そのため、夫の扶養内でパートやアルバイトとして働くのではなく、フリーランスとしてネットでお仕事を受託するという方も増えているようです。
そんな時に気になるのが、フリーランス妻として夫の扶養に入ったままで仕事をすることができるのか?という点です。今回はサラリーマンの夫がいる家庭で妻がフリーランス(個人事業主)として働く場合の税金や健康保険や年金に関する基本を紹介します。
フリーランスでも扶養に入ることはできるのか?
結論からいうと入れます。
制度上の扶養は「税金における扶養」と「社会保険における扶養」の二種類がありますが、どちらのケースでも条件を満たせばフリーランス(個人事業主)であっても扶養に入ることが可能です。
税金上の扶養
税金上は1年間の合計所得が38万円以下である必要があります。
アルバイトやパート(給与所得)の場合は収入から必要経費である「給与所得控除」を差し引くことができます。ここから逆算すると給料が年103万円以下なら扶養として扱われることになります。
個人事業主(フリーランス)妻の場合、「給与所得控除」という自動的に差し引ける経費はありません。あくまでも仕事のために実際にかかった費用を「必要経費」として差し引くことで計算します。
なお、「青色申告事業者」となれば青色申告特別控除として最大65万円が認められています。
これを利用する前提ですと、「103万円+必要経費分」までの収入であれば税金上の扶養に入ることができるわけです。
ただし、青色申告特別控除を受けない場合は「38万円+必要経費分」までが税金上の扶養に入ることができる金額となります。
青色申告特別控除は有利な制度なのでしっかり稼ぐ予定の方は活用すべき
青色申告特別控除は最大65万円の控除が利用できます。所得税・住民税合わせて15%だとしてもこれだけで約10万円の税金を節税できる計算になります。
ただし青色申告特別控除を受けるには「正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)により記帳」や「記帳に基づいて作成した貸借対照表及び損益計算書を確定申告書に添付し、この控除の適用を受ける金額を記載して、法定申告期限内に提出すること」などが求められています。
専門用語がたくさん並んでいるので非常にわかりにくいとは思いますが、最近ではクラウドで利用できる会計システムなどが無料あるいは格安で利用可能です。
簡単にできるMFクラウド確定申告
入力作業などの多くの部分を自動化することができるため、会計知識(簿記の知識)がない方でも比較的簡単に青色申告に必要な複式簿記による会計帳簿や貸借対照表や損益計算書を作成することが可能です。
ほとんど入出金や経費がないという方は無料版(フリープラン)でも対応できるはずです。
それなりの仕訳(取引件数)が多い方は月額800円(年プランなら8800円)で利用できます。
先ほどの通り、青色申告特別控除を利用すれば年10万円ほどの節税につながるのでこれだけのコストを払ってでも青色申告で確定申告をするほうがおすすめです。
夫の会社に家族手当などが用意されている場合は要確認
大きな会社などでは、お給料の手当の一つとして「家族手当」などが支給されているケースもあるはずです。こうした家族手当の支給に関しては上記の「税法上の扶養」を前提としている会社が多いです。
そのような手当てが出ている場合は、夫を通じて会社に支給要件などを確認しておいてもらうとよいでしょう。
社会保険上の扶養
社会保険に加入しているサラリーマン(第2号被保険者)の妻で社会保険上の扶養に当てはまる方は「第3号被保険者」となります。この場合は、健康保険料+国民年金保険料が免除される形になります。
扶養の範囲というのは「年間の収入が130万円未満」というのが基本です。
この社会保険上の扶養から外れた場合、夫の健康保険からは出ることになり、国民健康保険に加入する必要があります。また、第3号被保険者から第1号被保険者となり国民年金の保険料も支払う必要があります。
健康保険の扶養に入るための条件
健康保険の扶養についての扱いは、夫(配偶者)が加入している健康保険組合や協会けんぽによって異なる場合がありますので、最終的には夫が加入している保険者に対して問い合わせるのが確実です。
130万円の壁は昨年の収入というわけではありません。協会けんぽの場合、「給与所得等の収入がある場合、月額108,333円以下。雇用保険等の受給者の場合、日額3,611円以下であること」とされています。
ちなみに、個人事業主(フリーランス)として働いている場合は「総収入金額 – 必要経費」が130万円未満であれば扶養と判断されるようです。先ほどの「見込み」で考えると経費を引いて月10万円以下くらいにしかならないなら扶養になれるということになります。
なお、個人事業主(フリーランス)妻の場合、仮に1月に20万円の利益があったとしてもそれが安定的ではないケースも多いので108334円以上だから扶養から即外すという対応をするケースは少ないと思います。ただし、あとから判断して、1月の時点で扶養から抜けていると判断された場合はさかのぼって、当該期間中の国民健康保険料を支払う必要がある可能性があります。
健康保険の扶養については保険者で扱いが異なる
健康保険における扶養の条件は130万円の壁になりますが、細かい判断は保険者(夫が加入している健康保険組合など)が行います。
たとえば、必要経費については「保険者が認めたもの」に限ります。どういった経費が認められるのかは保険者によっても異なる可能性があります事前に保険者に確認しておきましょう。
また、そもそも個人事業主として開業した時点で被扶養者ではないという厳しい判断をする健康保険組合もあるみたいです(例:JFE健康保険組合)。
このようなケースでは開業届を出したらアウトという可能性もあります。稼げるまでは個人事業主というよりも副業みたいな稼ぎです、と申告したほうが良いかもしれません。
いずれにしても、対応は保険者によって変わる可能性が高いので、前もって夫の勤務先を通じて確認するようにしましょう。
個人事業主(フリーランス)として働くという場合も、最初から仕事が安定するわけではないはずです。そうしたとき出来るだけ出費は抑えたいものです。バリバリ稼げる自信があるなら別ですが、まずは自宅でちょっとした仕事をするという程度なら、夫の扶養からはずれない範囲での働き方で始めてみるのも一つだと思います。
「主婦がパートとして働くときの103万円、130万円(106万円)の壁の存在」でも説明していますが、主婦にとって夫の社会保険上の扶養を外れる、外れないは年間で40~50万円ほどの大きな差になります。
社会保険料というのは税金とほぼ一緒で、ごまかして支払わないのはNGですが、正しいやり方で節税することには何の問題もありません。
フリーランスの場合はある意味で仕事の量をコントロールすることもできるわけですから、そのあたりはうまく調整して、社会保険上の扶養の範囲内で働くようにするというのも一つのやり方だと思います。
以上、フリーランスになっては働くと扶養から外れる?フリーランス妻の税金と社会保険の扶養の関係について説明しました。
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