期日一括返済併用型住宅ローンは危険?リバースモーゲージとの違い

期日一括返済併用型住宅ローンは、毎月元金を減らすローンと、元金を最後まで残して利息だけ払うローンを組み合わせる商品です。
「通常の住宅ローンにリバースモーゲージを足したようなもの」と感じるのは、元金の返済を後へ回す部分が似ているためでしょう。
ただし、返済期限と、売っても借金が残った場合の扱いは同じではありません。
毎月の返済が軽くなっても、その家を無理なく買えるとは限りません。
このローンでなければ月々の家計が回らず、最後の元金も値上がりや借り換え頼みになるなら、物件予算を見直す理由になります。
既に返済資金を持ち、手元に資金を残すために使う場合とは分けて考えましょう。
対象は、ドコモSMTBネット銀行(旧住信SBIネット銀行)が2026年6月に始めた商品です。
正式名称は「期日一括返済併用型住宅ローン」です。
以下は2026年9月12日時点の公表条件を基に、二つの返済部分の仕組みと家計への影響を整理しています。
二階建て住宅ローンで残る借金
この商品では、担保評価額の50%に相当する元金を最終返済日に一括返済し、残りを元利均等返済または元金均等返済で返します。
据え置く部分にも、借入期間中は毎月利息がかかります。
「二階建て」は二つの返済部分を表す説明であり、別々の銀行から借りるという意味ではありません。
たとえば、借入額と銀行の担保評価額がともに1億円なら、5,000万円を毎月返済し、残り5,000万円の元金を最終回に返す形です。
ここでの50%は、購入価格や借入額の50%と常に一致するわけではありません。
売買価格と担保評価額が異なれば、二つのローンの割合も変わります。
1億円を借り、担保評価額も1億円だった場合
元金と利息を支払う。
返済するほど元金が減り、予定どおりなら満期に完済。
途中は利息だけを支払う。
繰上返済をしなければ、元金5,000万円が最終回まで残る。
途中で家を売る場合も、返すのは二つのローンの残高の合計です。
対象は高額マンションで、審査が緩くなる商品ではない
公表条件では、東京23区、横浜市、川崎市、大阪市の担保評価額1億円以上の新築または中古マンションが対象です。
前年年収は1,000万円以上が条件で、ペアローンの場合も、どちらか一方がこの年収条件を満たす必要があります。
借入時は満18歳以上満65歳以下、完済時は満80歳未満で、期間は最長35年です。
銀行の審査と指定の団体信用生命保険への加入が必要になります。
銀行も、この商品の利用によって審査基準を緩和するものではないと説明しています。
通常の住宅ローン金利には年0.35ポイントが上乗せされ、借入時の事務手数料は融資額の2.20%(税込)です。
融資額1億円なら、手数料だけで220万円になります。
申込みは銀行代理業者や提携不動産会社を通じて行い、通常のネット申込みとは窓口が異なります。
リバースモーゲージとの共通点と違い
リバースモーゲージも住宅を担保に借り、元金返済を後へ回す仕組みですが、資金使途や利息の払い方は商品によって違います。
比較する対象を、毎月利息を払い、契約者の死亡時に元金を返す「リ・バース60」に絞ると、今回のローンとの違いがはっきりします。
| 比較点 | 期日一括返済 併用型 |
リ・バース60 |
|---|---|---|
| 月々の 支払い |
通常返済分の元金と利息+据置分の利息 | 原則として利息のみ |
| 元金返済の時期 | 契約で決めた最終返済日 | 契約者の死亡時。連帯債務では双方の死亡時 |
| 売却代金の不足 | 自己資金などで不足額を返す必要がある | ノンリコース型では、死亡後の売却で残った債務を相続人が返す必要はない |
| 団信 | 毎月返済分と期日一括分の両方に付帯 | 団体信用生命保険への加入不要 |
最大の違いは、生きている間にも、契約した返済日が来ることです。
40歳で35年のローンを組めば、75歳に最終返済を迎えます。
「亡くなった後に家を売ればよい」という前提では組めません。
リ・バース60のノンリコース型にも注意が必要です。
死亡後に担保物件を売って残った債務について相続人の返済を不要とする扱いであり、生存中の利息滞納などによる一括返済まで免除するものではありません。
リバースモーゲージなら誰でも値下がりの心配がなくなる、という比較も不正確です。
今回のローンでは、団信の保険金支払条件を満たす死亡などの際には、対象の債務残高が保険で弁済されます。
一方、健康なまま満期を迎えたときの返済や、物件価格の下落を補う保険ではありません。
月々の負担と総支払額を1億円の例で比べる
通常の住宅ローンを年1.00%、期日一括返済併用型を年1.35%と仮定します。
どちらも借入額1億円、35年、ボーナス返済なしとし、通常返済部分は元利均等返済で計算しました。
併用型は、担保評価額も1億円として5,000万円ずつに分けています。
これは返済構造を比べる仮定の試算です。
年1.00%と年1.35%は実際の募集金利ではなく、35年間変わらないと仮定しています。
融資手数料、税金、登記費用、住宅の維持費は下表に含めていません。
実際の返済額は適用金利と端数処理などで異なります。
| 項目 | 通常ローン | 併用型 |
|---|---|---|
| 仮定する年率 | 1.00% | 1.35% |
| 月々の支払い | 約28.23万円 | 約20.57万円 |
| 最終回の 追加元金 |
なし | 5,000万円 |
| 35年間の 利息合計 |
約1,856万円 | 約3,639万円 |
| 元金を含む 支払総額 |
約1億 1,856万円 |
約1億 3,639万円 |
併用型の月額は約7.66万円少なくなる一方、この条件では支払利息が約1,783万円増えます。
最後に5,000万円を返す前提を外して、月々の支払いだけで「安い」と判断すると、比較する金額が足りなくなります。
計算は、月利をr、返済回数をnとして、元利均等返済額=借入元金×r÷{1−(1+r)の−n乗}です。
併用型には、据置元金5,000万円×年1.35%÷12=月56,250円の利息を加えました。
総支払額は月額の丸め前の値から計算しています。
住み続けるための積立を含めるとどうなるか
最後の5,000万円を売却に頼らず、これから35年間で準備するなら、運用益を見込まない単純計算で月約11.90万円の積立が必要です。
5,000万円÷420か月で求められます。
毎月のローン約20.57万円と合わせると、資金を確保するための月額は約32.47万円です。
積立は消えてなくなる費用ではありませんが、家計から取り分ける必要はあります。
通常ローンの約28.23万円を払えないから併用型を選ぶ場合、この積立まで続けられるかが判断の分かれ目です。
通常ローンとの差額約7.66万円を35年間すべて貯めても、運用益なしでは約3,217万円です。
据置元金5,000万円には届きません。
既に別の返済資産がある場合と、これから積み立てる場合を同じ資金計画にしないようにしましょう。
15年後に売るときは二つの残債を返す
銀行が挙げる利用例には、10~15年後の住み替えがあります。
しかし、15年後なら返すのは据置元金5,000万円だけ、という理解では不足します。
毎月返済している側の元金も残っているからです。
先ほどと同じ条件で15年間返した直後に、8,000万円で売れると仮定します。
売却関連費用を便宜上4%と置くと、ローン返済へ回せる売却代金は7,680万円です。
4%は仲介手数料などの法定額や相場を示すものではなく、価格と費用を分けるための仮定です。
| 15年後の比較 | 通常ローン | 併用型 |
|---|---|---|
| ローン残高の 合計 |
約6,138万円 | 約8,142万円 |
| 費用を引いた 売却代金 |
7,680万円 | 7,680万円 |
| 返済後の残金 または不足額 |
約1,542万円 残る |
約462万円 不足 |
併用型の残高約8,142万円は、通常返済分の約3,142万円と据置分5,000万円の合計です。
売却価格が据置元金を上回っていても、両方の借入れを完済できるとは限りません。
ただし、上表は住宅の売却代金と残債だけの比較です。
併用型で浮いた月額を15年間すべて残していれば、運用益なしでも約1,379万円になり、この例の不足に充てられます。
その差額を生活費に使い切る設計では、この備えが残りません。
不足を払った後の引越し費用と次の住居費も必要です。
8,000万円という売却価格は将来予測ではありません。
売却額が下がる場合の耐久力を確かめる例です。
申込み前には、売値を購入価格の8割などに落としたケースも作り、全残債と売却費用を引いて不足額を出します。
「残クレ」なら家を返せば終わるのか
元金の一部を最後に残す点から、車の残価設定型クレジットと似て見えるかもしれません。
しかし、今回のローンには、将来の住宅価格を保証する仕組みはありません。
銀行も、売却代金だけで完済できなければ自己資金などが必要になると明記しています。
担保評価額の50%は、将来その金額で買い取ってもらえる約束ではありません。
家を明け渡せば残債が帳消しになる、一定の年齢になればリバースモーゲージへ自動で切り替わる、と考えないでください。
この商品の最終回は一括返済であり、別の商品への借り換えを将来の保証として組み込む設計ではありません。
借り換えを使う計画には、その時点の年齢、収入、健康状態、物件評価、金融機関の商品条件という不確定要素が加わります。
借り換えができなかった場合の自己資金または売却による返済方法も、購入時に用意する必要があります。
金利上昇と退職後の家計を別に点検する
据置元金は残り続けるため、変動金利を選ぶと、その金額に対する利息の増加が家計へ効きます。
5,000万円の据置部分で金利が年1ポイント上がると、利息は単純計算で年50万円、月約4.17万円増えます。
これに、通常返済部分の金利変動の影響も加わります。
5年ルールや125%ルールは、借金や支払利息に上限を付けるものではありません。
据置部分の利息だけの支払いと、通常返済部分の返済額見直しを分けて確認しましょう。
二つの部分で異なる金利タイプを選べる商品なので、両方の返済予定表をそろえる必要があります。
定年後まで借入れが続くなら、現役時代の年収ではなく、退職後の手取り収入で月々の利息を払えるかを確認します。
退職金を一括返済に使う計画では、その後の生活費や医療費に使う分と二重計上しないことも必要です。
このローンでなければ買えないときの確認順
- 二つの借入額、適用金利、毎月支払額、最終返済日と一括返済額を並べる。
- 据置元金に使う資産を特定し、教育費と老後資金を除いても足りるか確認する。
- 10年後、15年後、満期の全残債を出し、売却価格が下がった場合の不足を計算する。
- 金利上昇と収入減少を同時に置き、管理費、修繕積立金、固定資産税も加える。
- 通常ローンで買える価格帯と比べ、立地や広さの希望に追加負担を払う理由を確認する。
この商品を選ぶ理由が、保有資産をすぐに取り崩さず資金の使い方を調整することなら、金利上乗せと資金管理の負担を比較できます。
住み替えが前提でも、相場が悪いときの売却損を別の資産で埋められるなら、選択肢になります。
一方、月額を下げてようやく生活費が足りる、値上がりしないと完済できない、退職金を全額使っても足りない、といった計画では、住宅の価格を家計に合わせ直す方が先です。
投資収益を返済の必須条件にする場合も、損失が出ても住居を維持できる資金があるかを確かめます。
商品自体を一律に危険と決めつける必要はありません。
それでも、「月々なら払える」と「最後まで返せる」を分けて判断する必要があるローンです。
希望の家に届くかより、予定が外れたときにも生活を続けられるかを購入予算の基準にしましょう。
主な確認先:ドコモSMTBネット銀行の商品案内、住宅金融支援機構のリ・バース60。
商品概要説明書と返済条件も合わせて参照しています。
商品条件の基準日は2026年9月12日です。
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